こんにちは、G7伊勢志摩サミットに行ってきました、エネルギーチームリーダーの高田です。会場にはたくさんの報道関係者とともに、市民団体(NGO)も詰め掛けました。グリーンピースも、海外のスタッフ、日本のスタッフのチームで、サミット初日の26日から現地に駆けつけました。現地の様子を報告します。

 

グリーンピースが参加した目的は?

G7のような世界各地で行われる国際会議、国連の総合協議資格ももつグリーンピースはたびたび参加しています。そこで政策を話し合うのは政府関係者。では、グリーンピースのような市民団体(NGO)は何のために参加するかというと・・・?

それは、その専門性を生かして政府関係者に働きかけ、政策決定がより市民の立場にそったものになるようにすることです。ただし、そのためにはずっと前からの準備が必要なうえ、国の政策決定に影響を及ぼすことは簡単ではありません。

そこでもう一つの重要な目的は、政策や首脳宣言が発表されるときに、そのニュースを伝える記者に、記事が完成する前にタイムリーにNGOとしての見解を伝えること。そうすることで、政府側の意見だけでなく、市民の立場からの意見も合わせて記事になります。すると、政府が強調しないけれど私たちにとっては大切な視点を読者や視聴者に考えてもらう機会ができます。

G7伊勢志摩サミットの首脳宣言、ここに注目

 

2日間の日程を終えて、G7サミットは今日閉幕。議長の安倍首相から、今回のサミットのまとめ文書「首脳宣言」が発表されました。31ページにわたるこの首脳宣言には、世界経済、貿易、保健、外交などと並んで、「気候変動・エネルギー・環境」という項目があります。

もちろん、グリーンピースが注目するのはここ。昨年ドイツで開かれたサミットでは、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)利用の段階的廃止を目指すことに合意するなど、重点が置かれていました。ところが日本が議長国となった今年のサミットでは、会議全体のなかで「気候変動・エネルギー・環境」の位置付けはとても低いものに…。

昨年、地球の表面温度は歴史上最も高温を記録しました。地球温暖化の進行が引き起こす危機的な気候変動は、世界中で頻発する台風や熱波などの形ですでにあらわれ始めています。 

伊勢志摩サミットでは、昨年のサミットよりも踏み込んだG7諸国からのリーダーシップが期待されたのですが、残念ながら首脳宣言は、気候変動の緊急性を反映していないものとなりました。 

原発は解決策になりません

また、もう一つ残念なのは、原発が温室効果ガス削減に大きく貢献するという記述が首脳宣言に加わったことです。こうした記述は昨年のドイツでのサミットではありませんでした。

原発は気候変動の危機を救う答えにはなりません。それどころか、気候変動対策にとって大いなる時間と資源の浪費となるばかりか、重大な事故リスクを伴います。グリーンピースは、今回の記述は、日本政府と他の原発推進国が自国の思惑のために含めたものだと考えています。安倍首相は、気候変動の危機を口実に利用し、時代遅れで危険な技術を推し進めようとしているのではないでしょうか。

首脳宣言について、グリーンピースの見解はこちら。日本語・英語版を首脳宣言発表の直後に世界中の記者に配信し、仲間のNGOと共に、サミットのメディアセンターに併設されたNGOスペースで記者会見を行いました。

いまの日本の温室効果ガス削減目標は、他の先進国に比べて低いものですが、その目標すらこのままでは達成できないとグリーンピースは心配しています。というのも、日本の削減目標のベースになっているのが、2030年に原発で電力の20%をまかなう、という非現実的なエネルギーミックスだからです。

こちらにまとめたグリーンピースの分析では、2030年の電力に原発が占めるのは多く見積もっても8%、少なければ2%になります。そして政府目標との差である12〜18%は、実際には、温室効果ガスをたくさん出す化石燃料による火力発電で埋め合わせられることになるのでしょう。政府が「原発頼み」の夢を諦めるよう、NGOとして、思いを同じくする皆さんと、引き続き働きかけていきます。 

ドイツ政府代表団に、グリーンピースが正式参加

伊勢志摩サミットに先駆けて、5月には多くの大臣会合が全国各地でありました。その中の環境大臣会合のためのドイツ政府代表団に、私がいつも一緒に仕事をしているグリーンピース・ドイツの同僚が正式メンバーとして招かれて来日しました。ドイツでグリーンピースは、スタッフ数200人、56万人の国民に支援され、メルケル首相とも会談する機会をもっています。

ドイツ大使の招きで、私もドイツ大使館でドイツ環境大臣に、日本の気候変動とエネルギーの現状について直接お話しする機会をいただきました。グリーンピースの日本事務所はまだまだ小規模ですが、経験豊富な他の国の同僚と一緒に力を合わせて活動できることが、グリーンピースの強みです。

伊勢志摩サミット NGOへの扱い改善必要

そんな海外でのNGOの力強い姿を知っていると、今回の伊勢志摩サミットで、日本政府によるNGOの扱いは改善してほしかったなぁと思いました。というのも、全世界のあらゆるNGO(環境、人権、難民支援などなど)に与えられた立ち入り許可証は合計100人分。一方でメディアは6000人分と言われています。

また、メディアセンター(上の写真)とNGOスペース(とってもこじんまり…)は別の建物になっていて、入る情報も設備にも大きな差が…。ヨーロッパの同僚が「これってあんまりだよねぇ」と言っていましたが、国際的に見ても、日本のNGOの立場の弱さがあらわれていると感じました。もっともっと成果を出して、多くの人と活動できるように頑張らねば!と思います。

おまけ

メディアセンターにはカップ麺やお菓子の食べ放題コーナーが(もちろん、NGOスペースにはありません…)

メディアセンター内では、水素自動車の試乗会、ロボットのペッパーも登場、忍者パフォーマンスに旅行案内など、たくさんの催し物あり。味噌汁をプロモーションする「みそガール」も(頭のお椀に注目!)。

今回のサミット開催には、多方面からさぞやたくさんの方々の尽力があったことと思います。関係者のみなさま、どうもありがとうございました。  

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