こんにちは。食と農業担当の石原です。

先日、ヨーロッパのグリーンピーススタッフと遺伝子組み換え(以下GM)食品に関して話す機会がありました。

日本では食品中に含まれるGMは、5%以下の混入率であれば表示する義務がありません。そのことに同僚は「それは高すぎだ」と非常に驚いていました。なぜならヨーロッパでは0.9%以下だからです。

chizu

GM作物を耕作している28カ国(2014年)


遺伝子組み換え作物は2014年の時点で28カ国に展開しており、栽培ポリシーや表示制度はそれぞれの国・地域によって異なります。

そこで、いろいろ複雑な遺伝子組み換え作物の各国における状況を、栽培と表示義務の2つの点から国・地域別にまとめました[1]。

 

まずは耕地面積トップ4

1. アメリカ

栽培
世界最大のGM栽培国で、7310万haと他国を大きく凌ぐ耕地面積で8種類の作物を栽培しています。

表示
遺伝子組換えに関する表示義務はなし。 

表示義務を求める運動は大きくなってきていて、いくつかの州で住民投票が実施され、2014年にバーモント州で表示を義務する法案が可決されました(2016年7月から施行予定)。

しかし、地域レベルで可決しても連邦裁判所によって法的拘束力が失われる場合もあり[2]、栽培・表示規制を実現することは非常に困難です。

2. ブラジル

gmo

栽培
ブラジルは、アメリカについで世界第2位の遺伝子組換え作物の栽培面積を有する国です(4220万ha)。栽培されているのは大豆、トウモロコシ、ワタになります。

表示
食品に1%以上のGM作物が含まれる場合は、加工品やGM飼料を食べた家畜の肉でも表示しなければいけません。表示にはこのようなマークを使用します。

gmo


3. アルゼンチン

gmo

栽培
アルゼンチンはアメリカ、ブラジルに次ぐGM生産で世界3位の国です(2430万ha)。

ブラジルと同じく、遺伝子組換えのダイズ、トウモロコシ、ワタが栽培されています。

表示
遺伝子組換え食品に関する表示義務はありません。

4. インド

gmo

栽培
インドは世界4位のGM栽培国で、ワタの商業栽培を行っています。国内で生産されるワタの95%が遺伝子組換えで占められています[3]。

表示
表示義務については2006年から議論されていますが、最終的な決定には至っていません[4]。

 

「世界の遺伝子組み換え」ここからは地域別!

・ EU

gmo

栽培
遺伝子組み換え作物の栽培は各加盟国が決めることができる。スペイン、ポルトガル、チェコ、スロバキア、ルーマニアが商業栽培をしている 。

EUでの遺伝子組み換え作物の栽培はスペインに集中していて、EUのGM作物の90%を占めている 。

表示
EUにはGM食品に対して共通の表示制度があり、以下のとおり。

1)すべてのGM食品に表示・トレーサビリティ(食品がいつどこで作られているか等を明確にすること)の義務がある。DNAやタンパク質の有無にかかわらず、使用したすべてのGM原料を表示しなければいけない。
2)GM飼料も表示・トレーサビリティの対象
3)表示・トレーサビリティが免除されるGMO 混入率は 0.9%未満

オセアニア 

GMO

栽培
オーストラリアではGMワタやGMナタネを生産していて、GMワタは、国内のワタ生産の99%以上を占めています 。

ニュージーランドでは商業目的でのGM作物の栽培は行われていません。

表示
GM食品には表示が課せられるが以下の場合は免除です。

・加工の過程で、DNAやタンパク質が完全に取り除かれている(植物油 など)
・GM作物を飼料として食べた家畜の肉
・最終食品での濃度が0.1%以下の香料
・意図しないGM製品の混入が、1%以下の食品

・アフリカ

GMO

 

栽培
アフリカでは、南アフリカ、ブルキナファソ、スーダンが遺伝子組み換え作物の商業栽培を行っています。ブルキナファソ、スーダンはワタのみの栽培ですが、南アフリカでは大豆とトウモロコシも栽培されています。

表示
南アフリカの場合は、「アレルゲンやヒト・動物タンパク質が含まれている場合や遺伝子組換え食品が非遺伝子組換え食品と大きく変わる場合などの特別な場合」は表示義務があります。

GM食品の「栄養強化表示(より栄養価が高いなど)」も義務付けられています[5]。

GMお

 

このようにGM作物をめぐる栽培・表示のポリシーは国・地域によって異なります。

でも、GM作物って何が悪いかよくわからない・・・という方もいますよね。 
GM作物がもたらした現実についてもっと知りたい方におすすめなのが、グリーンピースレポート「20年の失敗」

今回、アジア太平洋資料センターさんのご協力により、今話題のドキュメンタリー映画「遺伝子組み換えルーレット」の映像協力を頂きました!

 

20年の失敗に書かれている「7つの神話」に合わせて、それぞれの証言を抜粋して載せています。

このレポート・ビデオのコラボを通して、遺伝子組み換えの現実を一緒に伝えていきませんか?レポートのダウンロードはこちらから

ドキュメンタリー映画、「遺伝子組み換えルーレット 私たちの生命のギャンブル」のウェブサイトはこちら

 

グリーンピースの活動は、政府や企業からの支援ではなく、個人の皆さまの寄付によって支えられています。ぜひ、あなたの寄付で私たちの活動をサポートしてください。

寄付する

 

 【注】

1. ブログのデータは国際アグリバイオ事業団による2014年のレポートを使用しています
http://isaaa.org/resources/publications/briefs/49/executivesummary/default.asp

2.    ハワイ州マウイ郡はGM作物の栽培を禁止したが、連邦裁判所はその法的拘束力を失わせる決定をした。

3.  バイテク情報普及会、インド.
http://www.cbijapan.com/wldgenetic/legislation/india

4. 同上

5.   日本貿易振興機構(JETRO) ヨハネスブルク・センター. 南アフリカ共和国における原産地規則・表示に関する調査, 2010 年 11 月.
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000411/southafrica_ruleorigin.pdf