自然エネルギー現場紀行 風力 in 静岡編 | 国際環境NGOグリーンピース
  • 自然エネルギー現場紀行 風力 in 静岡編

    投稿日 - 2013-07-13 8:47

    こんにちは、グリーンピース・ジャパンのインターン、寺倉です。


    「自然エネルギー現場紀行」は、自然エネルギーの現場を実際に訪ね、そのしくみや成果、課題を直接うかがうために実施しています。

    「自然エネルギー現場紀行」これまでのレポート:

    今回は昨年秋に訪れた静岡県東伊豆町での風力発電の事例をご紹介します。
    東伊豆町には、町営の風力発電が3基稼働中のほか、民間企業が運営する別の風車が10基あり、さらに町境の尾根に新たに21基を建設する計画が進もうとしています。

    風力発電を推進する方と、懸念をもっている方、両方のご意見を現地で伺いました。

     

    ■ 町営の風車3基、売電収入は年4700万円

    静岡県東伊豆町の町営風力発電所を訪ねて、東伊豆町役場企画調整課の太田さんに現場をご案内いただきながら、お話しを伺いました。

    東伊豆町は人口14,000人、主な産業は観光業。金目鯛やニューサマーオレンジが特産の海に面した美しい町です。
    町は自然/地球/里山のそれぞれの環境を守りながらの「エコリゾートタウン」を目指しており、風力発電についても運転実績や発電事業の収支などを情報公開している自治体です。

    急な坂を上り発電所に着くと、眼下に広い海が広がる尾根の上に600kwの風車3基が回っていました。
    高さ約60m、羽が回転する円の直径は45m、下から見上げる風車は迫力がありました。回転する羽の先端部分は高回転の時には時速200kmもの速さになるそうです。

    風車は三菱重工製で3m/秒以上の風が吹くと回転を始め、風速に合わせて回転スピードを切り替えたり、風向きに合わせて羽の角度を自動に変えます。
    一定の速度で回転するのですが、風速25m/秒以上になるとストップしたり、最も効率良く発電できるように自動運転しています。

    この風車は2003年12月、CO2の削減、売電収入、観光資源化を目的に建設されました。
    総工事費約5億円の内訳は45%がNEDO補助金。特殊工法を採用したため、大型クレーンが使用できない立地条件でも風車建設が可能であることの実例となりました。

    (写真: 東伊豆町の町営風車。あいにくの曇り空の中、元気に回っていました。右奥の山肌に小さく見える白い柱は、後述の熱川の風車)

    では実際にどのぐらいの発電がされているのでしょうか?

    例を挙げると、年間発電量は400万kwh。
    1100世帯分の電力に相当し、1,672tのCO2削減効果になります。

    発電した電気は東京電力(株)に売電し、売却した電気はすべて東伊豆町内で消費されます。
    年間約4700万円の売電収入は町の太陽光発電パネルの購入の補助金や、環境教育、夏休み風車見学会などに充てられています。

    常に動いている風車はメンテナンスが必要で、故障も付きものです。
    過去には落雷で風車の電気設備が壊れたり、発電機が故障することもありました。
    それらにかかる修理やメンテナンスの費用は少ない年では800万円、多い年だと2000万円にもなりました。
    現状では風車の点検は遠方から技術者が派遣されて行っていますが、いずれは地元の業者さんが担当して、費用面でも雇用面でも地域に恩恵がある体制にしたいとおっしゃっていました。

    (写真: 町営風車の管理を担当する町役場の太田さん。丁寧に質問に答えてくださいました)

    また、日常的に運転に不具合があって停止することも多々あります。
    トラブル発生はパソコンに送信され確認できますが、パソコンでリセットできない場合には、風車の下にあるコントロールパネルを手動で操作して解除しないと運転再開できません。
    勤務時間外に不具合が起きる場合もあり、太田さんは夜中に風車まで車で来てリセットボタンを押すこともあるそうです。
    運転が停止すると、売電収入が損なわれてしまうので、太田さんのそのような地道な努力が東伊豆町の発電を支えているのだなあ、と感じました。


    町営風車の見学は大歓迎とのこと。ご希望の方は下記までお問い合わせください。

    静岡県 東伊豆町役場 企画調整課
    TEL:0557-95-6202(直通) ウェブサイトはこちら

     

    ■ 町営風車の収益が一般家庭の太陽光発電設備の補助金に

    2011年9月に新築をオール電化にするにあたり、補助金を使用して太陽光パネルを設置した鈴木さんにお話しを聞きました。
    4人家族で、延床面積は38坪のお宅です。

    町の補助金は1kwあたり5万円。
    鈴木さんのお宅は3kwの設備で15万円の補助がありました。
    別に県からの補助金もあり、夜間電力を使用してお湯を作るエコキュートもセットで導入しました。


    (写真: 町の補助金を利用して太陽光パネルを自宅につけた鈴木さん)

    参考までに売電収支をうかがったところ、9月の使用電力は7000円、売電収入は9000円。
    使用電力は夏場で1万円、冬場は6-7000円とのことですので季節によって収支にも変動があります。

    太陽光パネルの設置費用は値引きがあったため約100万円。
    特にメンテナンスの費用はかからないので、将来的には設置費用が回収できる予定です。

    設置した感想を伺ったところ、フォトフレームのような小さな画面で発電や電力使用状況がわかるので、電力の使用について気にするようになったとのこと。
    さらに、町役場の入り口にある3基の風力発電設備の運転状況がわかるパネルがあるのですが、風車の発電量についても以前より気になるようになったそうです。

    また、万が一、停電が起きた場合でも、自家発電の電力を非常用のコンセントからとって使えるそうなので、安心だともおっしゃっていました。


    ■「風車問題を考える住民の会」の方を訪問

    東伊豆町には町営の風車3基(各600kw)のほかに、CEF伊豆熱川ウィンドファーム(株)による10基(各1500kw)の風車があります。
    また、三筋山に新たな風車の建設が予定されています。

    そこで、風車に関連する問題点を指摘し、活動を行っている市民団体の方々にお話しを伺いました。

     

    1. 熱川の風車

    ▲ 風車建設による環境破壊

    東伊豆町熱川の風車は2007年12月に建設されました。

    建設中の現場の写真を見せていただいたのですが、まず、大きな風車を運ぶトレーラーが通るための広い搬送路や、風車を組み立てるための平地のスペースを作るために木が伐採されます。
    土砂が海に流こんで、漁業にも影響がでたそうです。

    風力発電も、建設時の配慮を怠ると、深刻な環境破壊が引き起こされます。

    また、住民に十分な説明がないまま、ある日いきなり現場に看板がたって、山が切り開かれていったそうです。
    伊豆は海から急峻に立ち上がっている土地なので、山が開発されることによる土砂災害は、地域住民にとっては切実な問題です。


    ▲ 地域住民への影響

    建設された場所は谷を挟んで800mの距離に別荘や住居があり、低周波や日光がさえぎられるシャドウフリッカーなどにより体調不良を訴える方もいて、4軒が引っ越したそうです。

    不動産の下落も問題ですが、健康被害を訴える方のお話しを聞き切実な問題だと感じました。
    朝起きると平衡感覚がなくなっている感じがする、夜よく眠れないとおっしゃっていました。
    今まで4人の方が亡くなっているのだが、風車との関連もあるのではとのお話も。

    現在、熱川の風車は8、9、10号機を夜間は運転停止するなど、調整運転を行っているそうです。


    ▲ 風車の破損事故

    風車の破損事故も心配されます。
    2008年4月には4号機、5号機が落雷と強風によりブレード落下、2009年5月には風速12メートルでブレードが折れて落下しました。
    この事故の後、ブレードを総取り替えしたということです。
    会の方が拾った落下したブレードの破片を見せていただいたのですが、あの巨大な風車のブレードが折れて飛んできたら、大事故に繋がりかねないと、周辺の住民の方々の不安な気持ちをお察ししました。


    (写真: 破損した風車の破片。住民の会の方のお宅で見せていただきました)


    2. 三筋山に建設予定の風車

    東伊豆町と河津町との境に位置する三筋山の総事業面積は71万平米。
    うち国有、民有保安林約12万平米を事業者が解除を申請して県や国が同意して解除されました。
    保安林の種類は水源涵養保安林のため、広大な森林伐採で水源枯渇や土砂崩れの可能性、動植物への影響、海洋汚染、観光資源となっている自然景観を損なう恐れが指摘されています。

    平成26年には1670kwの風車が21基稼働する計画です。

    現場を視察したのですが、すすきが広がる細野高原の、その上にそびえる尾根が建設予定地でした。
    尾根の近くには県の遊歩道があり、海や周囲が一望できるそうです。
    この美しい景色の中に風車が林立するとなると、ずいぶんと印象が変わります。
    景観も観光資源の一部ですので、風車の建設地については地域住民の方々との話し合いを経て決定されるべきです。


    (写真: 風車建設が計画されている細野高原と三筋山)


    まとめ:

    東伊豆町では職員の方の努力のもと、風力でクリーンなエネルギーを地産地消していました。
    売電利益の活用、視察の受け入れによる啓蒙活動という利点も感じられました。
    まだまだ運営には課題もありますが、しっかりと情報開示をしながら未来へ向かって前進している印象を受けました。

    一方で、現状では風車建設に関して、現状のガイドラインはあいまいで住宅と風車の距離が近すぎる、建設に伴う自然環境の破壊や景観への配慮が十分議論されていない、地域住民との合意形成が行われていないなどの問題点があることも分かりました。

    風力発電は環境への悪影響が少ない発電方法ですが、さまざまな問題に配慮して、総合的に検討して導入していく必要があると感じました。

    -----

    【自然エネルギー現場紀行シリーズのブログはこちら】

    自然エネルギー現場紀行 小水力 in 山梨編

    自然エネルギー現場紀行 風力 in 静岡編 

    自然エネルギー現場紀行 小水力発電機 in 長野編 

    自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 長野編 

    自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 鹿児島編