こんにちは。海洋生態系担当の花岡和佳男です。

サモアで開催されている第11回WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)年次会合に参加しています。今日は3日目。

 

WCPFCって?

WCPFCは名前の通り、中西部太平洋おけるマグロ類等の国際的な資源管理をする機関。その年次会合は一言で表せば、遠くから漁場にやってきて魚を獲る国(日本、韓国、中国、台湾など、いわゆる「遠洋漁業国」)の政府代表団と、漁場を排他的経済水域(EEZ)内に持つ国(島しょ国等)の政府代表団が、一同に顔を合わせマグロ類等の資源管理を話し合う、年に一度の場です。

加盟国のコンセンサスを得るために長い時間がかかりすぎて、「獲りすぎ」による魚の激減のペースに資源管理の枠組み作りが全然追いつけていない実態は変わらぬままですが、ここ数年は、「遠洋漁業国」間の関係やそれぞれの方向性に、少しずつ変化が見られるようになってきました。

 

日本:

WCPFCでは数年前まで、日本、韓国、中国、台湾の遠洋漁業国/政府4代表団は「乱獲グループ」(=遠くからやってきて島しょ国のマグロ資源を一網打尽にして奪い去る悪者)に位置づけられ、日本はその中でもリーダー的立場にありました。

しかし今は、日本政府代表団から「資源管理しなくては」「漁業規制強化しなくては」「予防原則が大事」なんて、私がグリーンピースに入った7年前には聞くことのできなかったような言葉が、少しずつ会場に響くようになってきました。

例えばカツオの目標管理基準値に関する日本が今年出した提案は、複数の国から出ている提案の中で最も予防原則性の高いもの。巻き網が使うFADs(人工集魚装置)の使用禁止期間の延長にも積極的です。

漁業の持続性確保へ向けた動きの中心国となるには大きくもう一歩踏み出す必要がありますが、残念ながらまだまだ国内の業界に足を引っ張られている印象を持ちます。

 

韓国:

ほんの少し前まで一方的な主張が強すぎて各国を困らせ呆れさせていた韓国。資源管理への考え方は定かではありませんが、少なくとも外交面での意識は、ここ2年くらいで大きく変わり、今は日本、アメリカ、EUそれぞれの動きを見て身の振りを考えている、という感じです。

バランスをとろうとしすぎるせいかブレも大きく、「どっちだよ!」と突っ込みたくなることも。韓国の3大水産企業もこの会合に参加していますが、議題によっては「うちの政府がどうしたいのかわからん…グリーンピースさん逆に教えて」と困惑気味。少し迷走している感じも見受けられます。

 

台湾:

かつては「乱獲グループ」の筆頭だった日韓が徐々に資源管理や規制強化へと舵を切る中、その動きについていけずに取り残され困っている様に見えます。

台湾船籍が獲る刺身用マグロのほとんどは日本で消費されているため、台湾を資源管理や規制強化の方向にシフトさせることは、日本のマグロ消費者にとってはとても大切なことです。

 

中国:

会場での発言も少なく目立った動きのない中国ですが、その存在感は年々増してきています。

 

グリーンピース:

中西部太平洋のマグロ類等を環境負荷の少ない漁法で持続的に漁獲し消費し続けることができるように、私達グリーンピースは毎年このWCPFCに代表団を派遣しています。今年は日本、韓国、台湾、中国それぞれにあるグリーンピース事務所から担当者が集まり、各国政府代表へのロビーイングや政府代表団間の調整等をしています。

なかなか噛み合わず進展しない議論も多く、フラストレーションのたまる日々ですが、残り2.5日で、どこまで詰め進めることができるのか、注目です。

 

 このブログを読まれたみなさん:

日本は刺身用マグロの一大消費国。消費者の声が大きくなれば市場が変わります。市場が変われば行政が変わり、未来の子どもたちにもマグロを残すことができます。

オンライン署名「おさかな貯金」に参加してください!「貯金」とありますが寄付をお願いするものではありません。「魚を無駄遣いせず子どもたちのために海に計画的に貯めていこう」という思いを、おなじみのスーパーマーケットに届けるオンライン署名です。

もう署名に参加してくださった方は、ぜひお友達に拡散してください!