2017/03/30 グリーンピース、国連人権理事会へ訴えーー政府による福島原発事故被害者の帰還政策は人権侵害

プレスリリース - 2017-03-30
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは本日30日、日本政府による東京電力福島第一原発事故被害者への帰還政策が人権侵害にあたるとし、国連人権理事会の全般的な人権状況審査「普遍的定期審査(UPR)」に意見書を提出しました(注1)。いまだ深刻な放射能汚染が続いているにもかかわらず、東電福島原発事故による避難指示が明日、浪江町と飯舘村、川俣町山木屋地区、4月1日に富岡町で、一部を除き解除されます。

グリーンピース・ジャパン シニア・グローバル・エネルギー担当ケンドラ・ウルリッチは「日本政府が進めるいわゆる『復興』政策は、日本の原発産業の維持のために計算し尽くされたものです。避難指示解除区域の中には、人が安全に暮らすには、あまりにも放射能汚染度が高い場所が多くあるにもかかわらず、政府は放射能のリスクや除染の進捗に関して、意図的に誤った情報を与えています。さらに、避難指示解除の1年後の賠償打ち切り、避難指示区域外のいわゆる自主避難者への住宅支援の打ち切りなど、政府は経済的な圧力により事故被害者を汚染地域へ帰還させようとしています。これは、人々の自由意志による帰還の選択ではありません」と非難しました。

グリーンピース・ジャパンから国連人権委員会UPRへの意見書の要旨】

  • 原発事故からこれまで6年間の日本政府の対応が、数多くの人権侵害を引き起こし、特に社会的弱者であり、かつ放射能の影響をより強く受ける女性と子どもに、深刻な社会的、経済的、心理的、身体的被害を及ぼしている。(注2)
  • 正確で包括的な情報の入手についての女性と子どもの権利は、事故以降、繰り返し侵害されてきた。日本が批准した数々の国際人権条約上の規定をないがしろにしている。(注2)
  • グリーンピースが昨年11月に行った福島県飯舘村の7軒の民家での放射線調査では、政府の長期除染目標を超える放射線量が多くの場所で測定された。いま飯舘村に帰還した場合の、生涯(70年間)の推定被ばく量は、最大183ミリシーベルトで、非常に高いケースもあり、国際的な放射線基準を超えるこうした地域への帰還政策は人権侵害である。(注3)

グリーンピースが、2月14日より開始した「3.11原発事故 被害者の人権をまもる国際署名(3月末締め切り)は、現時点で15,036筆を集めました。近日、安倍首相宛の署名を政府に提出し、日本政府に賠償の継続や、住宅支援などの保障、帰還政策の意思決定への住民参加を求めます。

Ms Suzuki and her daughter Shiori. Her daughter goes to the Soramame nursery. The family lives in Watari, a district in Fukushima City which has been contaminated by the nuclear accident at Daiichi nuclear powerplant.

注1)普遍的定期審査(UPR)は国連人権理事会が、全ての国連加盟国の人権状況を4年に一度、普遍的に審査する制度。NGOなど市民団体も意見を寄せることができる。

注2)グリーンピース報告書『格差ある被害: 原発事故と女性・子ども』

注3)グリーンピース報告書『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』

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