2017/09/29 NGOなど8団体、IUU漁業の廃絶及びIUU水産物の国内市場における流通防止に向けた共同提言を日本政府へ提出

プレスリリース - 2017-09-29
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、本日9月29日、一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局、オーシャン・アウトカムズ、株式会社シーフードレガシー、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー、トラフィック、GR Japan株式会社の7団体とともに、日本政府​に対し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業に関して、政府・企業・漁業関係者・消費者によるIUU水産物の日本国内における流通防止に向けた取組みを求める下記の共同提言を提出しました。


農林水産大臣 齋藤 健 殿
外務大臣 河野 太郎 殿
経済産業大臣 世耕 弘成 殿
内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、消費者及び食品安全、海洋政策) 江﨑 鐵磨 殿

IUU漁業の廃絶及びIUU水産物の国内市場における流通防止に向けた共同提言

 世界の水産物需要が高まり続ける中で、現在、世界の水産資源の約9割が過剰利用または満限利用の状況にあります。日本周辺でも、多国間による資源管理体制が十分でない中で、新興国による漁獲圧力の増加によりマサバ、スルメイカを始めとする多くの魚種で資源量の低下が懸念されているなど、水産資源の持続可能な利用の重要性が一層高まっています。

 こうした中、本年7月に海洋政策学術誌「マリン・ポリシー」で発表された研究結果では、2015年に日本へ輸入された天然水産物のうち24〜36%が違法又は無報告漁業に由来するとの推計が行われました[1]。更に、今月WWFジャパンが発表した研究結果では、日本で流通する水産物について違法・無報告・無規制(IUU)漁業のリスクが高いものが多くあることが示され、日本市場もこうしたIUU水産物の受け入れ先となっていることが指摘されました[2]。これらの輸入水産物のリスクに加えて、日本国内や日本の排他的経済水域及びその周辺においても、違法操業や無報告漁業が確認されています。

 国際条約や国家により定められた法的な保全管理措置に反して行われるIUU漁業は、水産資源の持続可能な利用に深刻な影響をもたらす脅威として、国際的に撲滅が求められている大きな課題です。更にIUU水産物の流通は、合法的な漁業活動を行っている国内外の漁業者を不公平な競争にさらすものとして懸念されています。

 これらの状況を踏まえ、私たちは、IUU漁業の廃絶及びIUU水産物の国内市場における流通防止に向けて、政府、水産物を取り扱う企業、漁業関係者及び消費者が以下の取組みを行うことを求めます。また、私たちは、IUU漁業対策の強化を契機として日本の水産業の持続可能な発展を実現することを目指し、政府、企業、漁業関係者及び消費者の取組みを支援する活動を行ってまいります。

(政府による取組み)

  • 違法・無報告漁業に対する取締りを強化すること
  • 日本におけるIUU水産物の流通の現状やリスク、対応策について、関係諸機関と協力しながら、更なる調査・研究を進めること
  • IUU漁業のリスクが高い魚種について水産物の漁獲情報や流通の履歴の記録・報告を求めるなど、不正に漁獲された水産物が国内市場において流通することを防止するために実効性のある制度を導入すること
  • 二国間及び多国間の交渉を通して国際的なIUU漁業対策の取組みを推進・強化すること
  • 発展途上国における漁業管理制度の適切な運用が可能になるよう、人員育成を含めた支援を行うこと

(企業による取組み)

  • IUU水産物及び水産加工品を取り扱わない旨の調達基準を定めて公表・実施すること
  • IUU水産物及び水産加工品を取り扱わないために、サプライチェーン全体のトレーサビリティを確保すること
  • 水産物の消費者や購入者がトレーサビリティの確保された水産物を識別できるように十分な情報を提供すること

(漁業関係者による取組み)

  • 法令を遵守した漁業を営むとともに、水産物の漁獲情報の適切な記録・保存に努めること

(消費者による取組み)

  • 購入する水産物の履歴について関心を持ち、可能な場合には、合法かつ持続可能な漁業に由来する水産物の購入を選択すること

 

共同提言賛同団体:
一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局
オーシャン・アウトカムズ
株式会社シーフードレガシー
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
ザ・ネイチャー・コンサーバンシー
トラフィック
GR Japan株式会社


[1] Ganapathiraju Pramoda. Tony J.Pitcher, Gopikrishna Mantha “Estimates of illegal and unreported seafood imports to Japan” Marine Policy 84 (2017) 42-51. 

[2] WWFジャパン レポート「日本の水産物市場における、IUU漁業リスク」研究委託先:MRAG Ltd/2017/英語 

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

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