2018/03/09 「国連人権理の福島原発事故関連勧告、政府勧告受け入れを歓迎。今すぐ実行を」グリーンピース、避難者、人権弁護士らが訴え

プレスリリース - 2018-03-09
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、国際女性デーの昨日8日、福島県からの避難者の女性や人権弁護士らと開催した東京都内での勉強会で、国連の対日人権審査で出された東電福島第一原発事故関連の勧告について、日本政府が受け入れを表明したことを歓迎するとともに、勧告を受け入れるからには、ただちに実行するよう求めました。グリーンピースらは、この決定は数万人の避難者や市民社会にとって一つの勝利であるとの認識を示した一方、政府が、被害者に必要な支援をしているなど実情と異なる説明をしていることを非難し、今後、表面的な対応をとるのではなく、すみやかに政策を転換すべきと訴えました。

昨年11月、国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)作業部会で、複数の国連加盟国が日本政府に、区域外避難者を含む被害者への住宅面、経済面、健康面等の支援の継続、許容放射線量を年間1ミリシーベルトに戻すこと、帰還に関する意思決定プロセスへの住民参加の促進等を勧告しました。特に女性や子どもの権利の尊重の必要性が強調されています。日本政府は5日、これらの4つの勧告の受け入れとコメントを公表しました(注1)。

グリーンピース 森松さん 福島
写真:原発事故避難者の人権を訴える森松明希子さん

8日にグリーンピースらが参議院議員会館で開催した「国連人権理事会 普遍的・定期的レビュー(UPR)福島原発事故関連の勧告の意義とは?」と題した勉強会で、5人の登壇者は以下のように語りました。

松本徳子氏: 避難の協同センター代表世話人、福島県郡山市から神奈川県に避難中「福島県は、区域外避難者への唯一の支援策である福島県民健康調査を縮小しようとしています。子を持つ親として、適切な健康モニタリングを継続してほしいと切に願います。また、山形県での避難者の追い出し訴訟のようなことが、関東やほかの地域でも起こらないか、避難者たちは非常に不安に感じています(注2)」

伊藤和子氏: 弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
「いま世界では、声を上げた女性の声を聞いていこうという潮流がありますが、避難している女性やこどもの苦難、苦しみながら福島県で子育てをいているお母さんたちの声は、残念ながら政治に反映されていません。事故後政府は、複数の国連勧告を受けてきたにもかかわらず、無視し続けています。表面的な態度表明にならないよう、これからが重要です」

海渡雄一氏: 弁護士、日弁連UPRワーキング委員、多くの福島原発訴訟を手がける「日本政府が国連の勧告を受け入れることを慎重に歓迎します。 政府は勧告を受け入れさえすれば十分だと思っているのかもしれませんが、それは誤りです。4カ国が日本政府に求めている変革を、政府が適切に実行していくのかどうか、私たちは注視していきます」 

ヤン・ヴァンダ・プッタ: グリーンピース・ベルギー 放射線防護スペシャリスト 「日本政府は、許容放射線量を年間 1ミリシーベルト以下に戻すという勧告を受け入れました。政府は、『長期目標』としてきた年間1ミリシーベルトの達成期限を、これまで明らかにしてきませんでした。しかし、原発事故からすでに7年が経過しているいまがその時です。もし、1 ミリシーベルトを遵守するなら、いまだ放射線レベルが国際基準の数倍を超えるような飯舘村や浪江町の避難指示は解除はできないはずです」

森松明希子氏: 東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表、原発賠償関西訴訟原告団代表、原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表、福島県郡山市から大阪府に母子避難中
「過去7年間、私たちはさまざまな人権侵害を経験しました。 私たちが受けている人権侵害や差別は、政府の私たちに対する態度をそのまま反映しています。それでも、私たちは放射線から逃れる権利を行使してきました。政府が今回、国連の勧告を受け入れたことが、社会が変わっていく出発点になると信じたいです」

日本政府は3月16日に、UPR作業部会で出された217の人権是正勧告に対し国連欧州本部(スイス・ジュネーブ)で、正式に態度表明します。グリーンピースは、森松明希子さんとともに、現地で政府の態度表明を見守ります。

(注1)UPR第3回日本政府審査・勧告に対する我が国対応(英文)(外務省ホームページ)

(注2)避難者退去求め訴訟も=住宅無償提供打ち切り-山形・東日本大震災7年(時事通信報道、2018年3月3日)

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