2018/11/2 南極の海を保護する責任を怠るーーグリーンピース、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会を強く批判

プレスリリース - 2018-11-02
【オーストラリア・タスマニア州ホバート、11月2日(現地時間)】国際環境NGOグリーンピース・インターナショナル(本部)は、ホバートで行われた「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)」の会議で、広大な南極海保護区設立の合意に至らず、同委員会がその責任を怠っていることを強く批判しました。CCAMLRに参加する24の加盟国とヨーロッパ連合(EU)のうち、22の代表団と世界中の約300万人の市民が、南極海保護区設立に賛同していました(注1)。

グリーンピースの南極保護キャンペーン担当、フリーダ・ベングツォンは、「今回の会議は、南極における野生生物の保護、気候変動への取り組み、そして地球規模で海の健康を保つことを可能にする、地球最大の保護区を作る歴史的な機会でした。22の代表団は誠実に交渉をするために参加しましたが、急を要する海洋保護のために行われた重要な科学的提案は、科学をほとんど伴わない介入により頓挫しました。

中国とロシアなどの代表団は、科学的な根拠に基づいた抗議ではなく、提案を妨げる修正案や議事妨害をするなど議論の進行を遅らせ、南極海の保護についての実質的な議論をする時間はほとんどありませんでした。唯一の成果として、最近のグリーンピースの南極探査によって確認された、脆弱な海洋生態系の保護が承認されたことです」と述べました。

中国、ノルウェー、ロシアの代表団は、同提案を阻止する役割を果たしました。グリーンピースの南極アドバイザーであるローラ・メラー博士は、ホバートでの会議について次のようにコメントしました。

中国について「中国の指導者による、環境を保護し、人類共通の未来のための共同体を追求するという約束は、同国の代表団には引き継がれなかったようです。同代表団は、世界最大の海洋保護区を設立するための、あらゆる機会と協力を妨げました。」

ノルウェーについて「ノルウェー代表団は、利用可能な最高峰の科学を含めた南極海保護区の提案に同意したにもかかわらず、その区域を二つに分けるという独自の提案を押し進めることを決めました。CCAMLRの全会一致という精神のもと、私たちは同代表団に対し、委員会の大規模な海洋保護区ネットワークを緊急に設立するという義務に対し、独自の提案がどのように貢献するかについて、期間を明示した行動計画をことを求めます。」

ロシアでは、「CCAMLRは2016年、世界的に報道されたロス海の保護を、ロシアの議長の下で合意しました。しかし、ロシアはそれ以降、特定の漁業権益を追求するのみで誠実な行動に失敗し、CCAMLRが南極海保護ネットワークを構築する責任を果たすことを妨げています。」

グリーンピースのベングツォンは「私たちには時間がありません。野生生物を保護し、数十億人の食料安全保障を確保し、気候変動に取り組むためには、2030年までに少なくとも海洋の30%を保護区にする必要があることを科学者は明らかにしています。2009年にCCAMLRは、海洋保護区のネットワークを構築する責任に合意しましたが、その後の外交努力は、保護よりも漁業の拡大により関心があるようです。CCAMLRのような機関が海洋保護の責任を怠り続けることは、達成すべき目的に合っておらず、解決策の一部にはなれません。私たちは代わりに、公海に関する条約の制定に向け、国連で行われている歴史的な交渉に目を向けなくてはいけません」と続けました。

今年9月に各国政府は国連で、国境を越えてすべての海を網羅する、公海に関する条約の制定に向けて交渉を開始しました。この交渉は過去10年にわたるプロセスの結果であり、早ければ2020年に結論に達する可能性があります。この条約は、科学者らが野生生物を保護し、気候変動に取り組むのために絶対必要であると指摘する、2030年までに世界の海の30%にまたがる海洋保護区ネットワークの枠組みを提供するものです。


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注1)CCAMLRは24の加盟国とヨーロッパ連合(EU)で構成されています。270万人の市民が、グリーンピースの『南極にサンクチュアリを』キャンペーンを支持しています。CCAMLRは非公開の会議であり、決定には全会一致を必要とします。会議終了に伴い、内容が公開されました。議論の詳細に関しては、非公開に留まります。

グリーンピースは、180万平方キロメートルに及ぶ地球最大の南極海保護区(ウェッデル海保護区)の設立を求めてキャンペーンを行ってきました。同保護区の設立は、EUが提案し、ドイツの国土5倍に当たります。

2018年1月以来、グリーンピースの『南極にサンクチュアリを』キャンペーンは、
・3カ月にわたる南極探査を実施。
・世界で200万人以上が署名に参加。
・南極の海底に新しい脆弱な海洋生態系を発見。
・南極の水および雪に含まれるプラスチック汚染と有害化学物質の存在が明らかに。
・ペンギンの集団繁殖地のような繊細な生態系での漁業を自主規制、南極における海洋保護区ネットワークの呼びかけを支持。
・オスカー賞受賞俳優のハビエル・バルデムが研究用潜水艦の南極海底に同行したほか、俳優アリソン・スドルとデヴィッド・ハーバーや南極探検家ワン・ユハンが南極に同行。

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