放射能汚染されていない安心な外食を目指して
-- 飲食セーフティーネットワークとは?
写真提供:飲食セーフティネットワーク
3.11後に立ち上げた、放射能汚染されていない安心な外食を目指して、放射能対策を実施し、安心・安全な外食を提供するための、飲食店、生産者そして流通業者のためのネットワークです。
特に放射能の汚染に対する、みんなの意識を上げていこうということで立ち上げ、私がイタリア料理店「エリオ・ロカンダ・イタリアーナ」のレセプションを兼任しながら、飲食セーフティーネットワークの代表をしています。
-- レストランのオーナーさんが集まって、放射能汚染のない食材を提供しようとするネットワークでしょうか?
はい。政府の放射能検査はきちんとできていないと感じているので、私たちが知らないうちに加害者になってしまわないようにと、活動をしています。
放射能汚染からお客様を守っていこうと意識されているレストランのオーナーさんたち以外にも、第1次産業の農家さんや漁師さんとも連携や協力をしています。
-- 気にしないで食べられるって大切ですよね。
写真提供:飲食セーフティネットワーク
そうですね。3.11以降、お母さんたちと関わる機会が増えて、子どもを守ろうと必死なお母さんたちが放射能汚染を気にするあまり、本来ストレス発散の場であるべき外食がストレスになっているのを知りました。
だからこそ、飲食店には、リラックスして楽しむ空間が必要なんだと思います。
そしてそこに安心安全がある。これが大切なんです。
-- ネットワークに加盟している店舗数は?
7店舗からスタートしました。
最初は同じ意識を持った方を見つけるのが本当に大変でしたね。
でもいまは、北は北海道から南は沖縄まで30店舗くらい参加しています。
政府が示す基準値は安全性を約束するものではありません。
基準値というのは、どれだけ我慢できるかの我慢値だと思いますし、少しでもあればリスクは上がると思います。
そして、皆さん一人ひとり考える自分の基準値は様々だと思うのです。
なので、私たちは情報を公開して、自分の基準値にあった店舗を選択できるようにしています。
-- 原発事故前から原発について問題意識を持っていたのですか?
お恥ずかしい話、震災前は原発について意識した事がなかったです。
原発がどこにあるのかさえ知りませんでしたし、CO2を出さないエコな物だとさえ思っていました。
でも、震災を経験して、いろんなことを知るきっかけになりました。
遺伝子組み換えとか、幅広い面で食の安全について考えるようになりました。
-- 震災後に'飲食セーフティーネットワーク'のシンポジウム第1回目を開いて、今は5回目ですね?
このシンポジウムでは、知識のある方から情報を共有していただくこともですが、同じ意識を持った仲間と出会っていただくことも目的にしています。
同じ意識を持った仲間がいないと、続けていくのが大変ですから。
また、放射能汚染は一生続く事ですし、最初の数年気をつけても、その後疲れて止めてしまっては意味がないですからね。
-- ネットワークとしての他の活動は?
写真提供:飲食セーフティネットワーク
定期的に飲食店の方にお会いしてお話を伺ったり、北海道や京都、熊本などへ行って農家さんなどにお話を伺い、どんな取り組みをなさっているのとか、これから取り組みをなさりたい店舗さんに、方法や農家さんをご紹介するコーディネートをしたりと、放射能問題以外にも、無農薬、無添加などいろいろな取り組みをしています。
-- コーディネートは大変じゃないですか?
休みがないので大変です。(笑)
でも、生産者の方にお話を聞けるのはとても勉強になります。
たとえば漁師さんと話して、お魚の乱獲などの話も聞いて、日本の第一次産業は日本の誇りですので衰退は避けていきたいと思いました。
農家さんの健康の為にも、汚染された土地で農業したりすることも避けられるようにしたいですね。
-- 具体的にはどのようにすればいいと思いますか?
一番大切なのは放射能検査ですね。
どうしても西日本の食材を選びがちですが、やっぱり今後は検査体制をしっかりして、福島周辺のものでも大丈夫なものは大丈夫であることを明確にすることが必要だと思います。
そう言う意味でも、グリーンピースさんのスーパーマーケットに対する取組は素晴らしいと思います。
-- グリーンピースと一緒に活動する前のイメージは?
震災の前までは、やっぱりクジラですかね。
実は、あまり良いイメージは持っていませんでした。
でも、グリーンピースの事務局長の佐藤さんと話して、スタッフの皆さんの姿勢を拝見して、イメージが180度変わりました。
私は昔から海が大好きなので、何か一緒に海を守れることをしたかったですね。
-- 海釣りがお好きなんですよね?
写真提供:飲食セーフティネットワーク
レストラン(エリオ・ロカンダ・イタリアーナ)マネージャーの味方(みかた)が毎週通っていたので、よくついて行ってました。
でも震災以降は行かなくなりましたね。
震災後一度だけ釣りに行った時に、亡くなった大人の方にはお酒を、子どもたちにはオレンジジュースを捧げたんです。
震災後しばらくは、辛くて海に行けなかったので…。
でも気持ちが落ち着いて、海へ挨拶に行ったのを良く覚えています。
今後、自分が釣ってきたお魚をお客様がおいしいと言ってくださる喜びを、また取り戻したいですね。
こんなにお魚を丁寧に扱うのは、日本だけだと思いますし、日本人はどれだけ海に恩恵を受けてきたのかはかりしれません。
それなのにあんなに汚染水を垂れ流して……。
しばらくは「人間の都合で汚してごめんなさい」という気持ちでいっぱいで、海を見ると涙が止まりませんでした。
だからこそ、母なる海に対しては、常に感謝を伝えて恩返ししていかなければいけないと思うんです。
そういう意味でも、グリーンピースさんの環境保護の活動は無くてはならないものだと思っています。
-- ありがとうございます。グリーンピースは今、スーパーに対しての働きかけを主に行っています。
写真提供:飲食セーフティネットワーク
第1次産業や業者さん、そしてスーパーマーケットなどの流通・飲食店など、すべてを含めて飲食業界だと思っているので、飲食業界が安全な物を提供できるよう、グリーンピースの活動に期待しています。
グリーンピースはスーパーマーケットなどに、「放射能検査をした食品のみを取扱ってほしい」「乱獲された魚は売らないでほしい」などと言った消費者の声を届けるオンライン署名をしていますよね。
消費者の声に飲食業界が敏感なことは、私たちが実証しています。
この記事をご覧のみなさまにも、安心安全な魚介類をご自宅でも食べ続けることができるように、ぜひグリーンピースのオンライン署名に参加していただければと思います。
水産業界の方も言うように、自分の子どもに食べさせられないようなものをお客様には出せないというのは、まさにその通りだと思います。
私たち飲食業界は、お客様の命をおあずかりしているんです。
安全なものをお出しするのは、あたりまえ。みなさん気づいてほしいですね。
-- 政府こそ検査体制を構築して、きちんと情報発信をしてもらいたいですね。
私たちからも検査態勢がきちんとするように働きかけていきたいと思っています。
でも、行政がやってくださるのが1番ですが、なかなか進まないのでまず業者さんから始めるのが良いかなと。
飲食店だけでなく、スーパーなどにも広げて検査態勢を作り、真の意味で、'食べて応援'ができればと思っています。
-- 行政はなかなか動いてくれませんよね。
本当に!原発事故を通じて知らなかったことを知れて、人生でこんなに勉強したのは初めてですね。
教科書に書いてある事、これまで信じてきた事が正しいとは限らないと言う事に気づきました。
そして何より、自分で働きかけないと変わっていかないとわかったんです。
2013年7月25日