去る11月9日、グリーンピース・ジャパンは日本弁護士連合会の人権委員会に「人権侵害救済」を申し立てた。「エッ、なんでグリーンピースが人権救済を求めるの?」と思われるだろう。それは、このところ水産庁の捕鯨官僚による事実無根の「テロリスト」呼ばわりが目にあまるからだ。

2001年の9.11事件以降、「テロ」や「テロリスト」と呼びさえすれば、都合の悪いものはなんでも排除できるという思惑が、米国のブッシュ政権から日本を含む各国に伝染した。最近も、防衛利権の追及を受けた石破防衛大臣が、インド洋の“無料ガソリンスタンド”で給油する艦船用燃料をどこから買っていたのかを質問され、「テロの標的になるから言えない」と国会答弁して笑わせた。

水産庁がグリーンピースを「テロリスト」と呼びたがるのは、南極海で強行する“調査捕鯨”の問題点に注目が集まらないよう、議論をそらすためだ。絶滅危惧種のナガスクジラや危急種のザトウクジラを含む年間1000頭以上のクジラを、国際社会が取り決めた商業捕鯨永久禁止区域である南極海サンクチュアリで殺し、それを「科学調査」と強弁して自滅外交を続ける愚。水産庁→(財)日本鯨類研究所→共同船舶(株)と、すべてを閉鎖的かつ不透明な契約で囲い込んで国民の税金を無駄使いする国営擬似商業捕鯨の実態。“調査副産物”と名づけられた鯨肉の流通にまつわる腐敗。IWC(国際捕鯨委員会)での味方を増やすために、ODA(政府開発援助)に偽装して行われる小国の票買い――。そんな臭い話ばかりの真相がバレては困るから、なんとかその手前で煙幕を張ろうとする。

非暴力を大原則とするグリーンピースが、自分のほうから船をぶつけたり、捕鯨船団の乗組員の生命・身体を傷つけたりするはずがない。それほど怪しい団体に、NGOとしてはもっともレベルの高い国連の総合協議資格が与えられるわけがない。そもそも、捕鯨砲とクジラのあいだにゴムボートを割り込ませるグリーンピース側乗組員の頭越しに、75mm砲から爆発銛を発射するという危険きわまりない行為を許しているのは水産庁ではないか。人間の盾となって砲撃や銃撃の標的を守ろうとする国際ボランティアを、攻撃する側が「テロリスト」呼ばわりするのと等しい暴論だ。

日本では、メディアも税金で働く公僕たちも、非暴力直接行動(平和的な手段で明確な意思表示を行うこと)に対する認識が乏しすぎる。座り込みやデモから、木に抱きついて伐採を阻むチプコ運動まで、非暴力直接行動は民主制度を補完する重要な役割をはたしてきた。ただ見た目が危なそうだから、反対される側にとって迷惑だからといって、市民・国民のもつ有効な意思表示手段の一つを否定するのは民主主義の自殺だ。グリーンピースをテロリスト呼ばわりすることは、日本の公僕たちの、ひいては日本社会全体の民度の低さを公言するような恥さらしなのだ。

しかし、戦後日本の民主主義がそこまで劣化してしまったとは信じたくない。私たちが黙っていれば、これから来年のG8に向かって、日本政府はさまざまな分野の“不都合な真実”を隠すために、「テロ」や「テロリスト」のレッテルを貼ることでNGO市民セクターによる表現の自由とさまざまな市民的権利を押さえ込もうとするだろう。グリーンピース・ジャパンの人権侵害救済申立は、そんな抑圧を許さない歯止めの意味を込めている。

申立書全文(読み物としても力作!)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/

whale/documents/legal

▼別件だが、友人の枝廣淳子さんがおもしろいサイトを立ち上げた
「日刊 温暖化新聞」~情報・考え方、行動・広がりへ!

http://daily-ondanka.com/