グリーンピースは1971年にカナダで創設されて以来(現在、本部はオランダ)、優れた写真や映像を数多く送り出してきた。さまざまな環境問題の現場に立ち会い、そこで目撃した事実を世界に発信することが主な仕事の一つと心得るからだ。ある意味では、自然界のための“行動する広告代理店”のような役割を果たしているのかもしれない。私はつねづねスタッフに、「うちのライバルは電通と博報堂だからね」と冗談半分の檄を飛ばしている。本能的な同業意識からか、広告業界にはグリーンピースの協力者や隠れファンが少なくない。


全世界280万人の浄財に支えられて41ヶ国で展開する活動の実りともいうべき写真や映像は、毎年のように国際的な賞を受けるいっぽう、いくつかの支部がそれぞれ趣向を凝らすカレンダーにもなって人気が高い。グリーンピース・ジャパンが毎年扱う米国グリーンピース制作の2007年版カレンダーは、12月がホッキョクグマの母子のすばらしい瞬間をとらえている。ホッキョクグマにしては珍しく雪に埋まった針葉樹の森で、母親の懐にホッコリと抱かれる子熊のなんとも無垢な表情がたまらない。子熊の安心感と響き合って、母熊の顔にも母性の極みと形容したくなる優しさが宿り、その2頭を極北の木漏れ陽が金色のスポットライトで包む。


どんな聖母子像より神々しいこの写真は、生命の本質、とくに哺乳類の本質を思い起こさせる。親が子どもに寄せる気持ちは、とにかく健やかに育ってほしい、今日よりも明日、自分の代より子や孫の世代が少しでも良い世界に生きてほしいという一心に尽きると思う。果てしなく太古に遡る先祖代々がそんな気持ちで最善を尽くしてくれたからこそ、私たちはいまここにいる。幸運も手伝ったし、ときには悪知恵を働かせたり他者を蹴落としたりして、ようやく生きのびた場合もあっただろう。しかし、人間を含む現存の動植物はすべて、あらゆる事態を生き抜いた超ラッキーな系統樹の最先端で、未来へのバトンを手にしているのだ。


屋久島の深い森に包まれて、私もあの子熊のように安らぎ、くつろいだ経験がある。そこでは時間も止まり、そのまま自然に溶け込んでいけそうだった。ところが、母熊がいつか子熊を突き放すのと似て、自然はやんわり私を押し返す。「人間なら人間らしく、本当に自然界と共生できる人間社会をつくる仕事に戻りなさい」――言葉にしたらそんな感じか。


この12月で事務局長就任3年目に入った。これまでの2年を助走として、ようやく自分らしい働きができそうだ。みなさま、心豊かな年末年始をお迎えください。来年もグリーンピース・ジャパンをよろしくお願いします!