会議の進行は議長によって大きく左右されますが、今年の議長は特に進行がフラフラです。残された時間はわずかしかありませんが、ほとんど何も決まっておらず大きな課題が山積みのままで、このままではすべての議題をこなすことは到底無理なペース。加盟国政府代表からも議長へ向けた「時間がない」「もっとしっかりしろ」の声が飛び交います。



日本政府代表も議長に痺れを切らしています。今回はそんな日本政府のこの会議での言動についていくつかご紹介します。



まずはカツオについて。カツオは赤道付近から日本周辺海域に北上しますが、その日本周辺海域で獲れる量が激減しています。赤道付近で漁業をする国が「もっと獲り続けてもまだ大丈夫でしょ」という態度を示す中、日本はこの問題を深刻視し「Time to act(いま何とかしなくては!)」と訴えました。大西洋では1900年代に大西洋クロマグロが北海から姿を消しましたが、その原因はマグロが北上する前に過剰に漁獲されたことです。日本周辺海域のカツオが北海の大西洋クロマグロのようになってしまわないよう、予防原則を重要視する日本政府の発言をグリーンピースは歓迎します。



サメの保護や混獲の問題にも日本政府がビシバシ切り込みました。保護対象にシュモクザメを含めるなど提案すると、主要サメ漁業国やフカひれ消費国は黙ってしまいました。またIUU(違法・無報告・無規制の略称で、国際的な資源管理の枠組みを逃れて漁船が操業すること)についての議題でも、違法漁業がなされた海域を管轄する国と違法漁船が登録されている国が会議場内で報告される際、日本政府はその違法漁船を所有し運営している国名をあげるよう要請。浮かび上がってくるのは、台湾、台湾、台湾…。



そして太平洋クロマグロ。台湾周辺海域~南西日本海を中心に、まき網が幼魚を物凄い勢いで獲り続けています。日本政府は自国の漁獲量30%減という大きな痛みを伴う、自らが主導してきた太平洋クロマグロの国際漁業規制案を発表しました。この規制案は年次会合に先立ち今年9月に福岡で開かれたWCPFC北小委員会で国際合意に至ったもので、韓国だけが唯一受け入れを保留しています。本会合中に韓国が留保を解除しなければ、2010年度に引き続き2011年度も韓国のEEZ(排他的経済水域)には太平洋クロマグロの漁業規制が適用されないことになります。高度回遊魚の保護には国境を越えた漁業管理が不可欠。グリーンピースは日本政府代表団のリーダーシップの発揮を評価します。



ちなみに、日本政府は韓国の国際協調性の無さを名指しで非難。韓国は「Our fishermen are different to everyone else(韓国の漁師は他の国の漁師とは状況が違うから…)」と、周囲に到底受け入れられない言い訳をするのがやっとでした。しまいには韓国はマグロ捕獲を調査の一環だと言い出す始末。え、「調査」???



もちろん、WCPFC加盟国の中で最も多く太平洋クロマグロを漁獲している日本の漁獲量は2位の韓国の何倍もあるということ、韓国の漁獲量の約90%は日本で消費されていることを忘れてはなりません。CBD議長国、マグロ類の主要漁業国および主要消費国の代表として、太平洋の生物多様性、そして水産業と魚食の持続可能性を守るよう、日本政府代表の活躍を期待しています。