私、佐藤は逮捕されてからはじめて日本を出国しました。

「保釈中の被告人は海外に行けるのか?」という質問の答えは「はい、行けます」です。もちろん起訴されている内容にもよると思いますが、保釈中でも裁判所の許可があれば基本的に海外渡航は可能です。裁判所からの許可を持ってパスポートセンターで特別な書類に記入し申請すると、外務省がパスポートの発行を審査します。外務省からOKがあると、行き先を限定したパスポートが発行されます。私の場合は有効期間8ヶ月のパスポートでした。



(写真:ポルトガルと飛行機の経由地であるフランスへの渡航のみが許可されているパスポート)

今回、私がパスポートを申請した理由は、第61回国際捕鯨委員会(IWC)にオブザーバーとして参加するためです。今年のIWCはポルトガルのマデイラ島で開かれています。このマデイラ島はかつての捕鯨基地ですが、現在はホエールウォッチングなどの観光で栄えている島です。

今年のIWCの焦点としては、日本が「南極海での調査捕鯨」を「沿岸での捕鯨など」と引き換えに中止、もしくは大幅に縮小するという「パッケージ案」に合意するかどうかが注目されています。

 

(IWC総会の行われるマデイラ島、写真の右手白い建物が会議の会場)

会議の1日目は、会場ではこのパッケージ案に関する様々な憶測が流れていました。しかし、この「パッケージ案」について本会議での議論はなく、非公開の代表団会議などで話されているため、実際にはまだ本会議では議論されていません。本会議はこの非公開会議での議論を妨げないように気をつけながら、うわべだけの会話がされているという印象で、とても静かです。結局、1日目の本会議は午後4時前に終了してしまいました。

さて、その静かな本会議の中にも興味深い報告がありました。それは南極海のミンククジラの生息数に関する報告です。

日本の科学者とオーストラリアの科学者の2チームが、同じデータをもとに南極海のミンククジラの生息数を分析しました。日本の科学者がはじき出した生息数は1,287,000頭(1985年~91年の調査データをもとに分析)、688,000 頭(1991年~2001年の調査データをもとに分析)でした。しかし、オーストラリアの科学者はそれぞれ747,000頭(1985年~91年の調査データをもとに分析)、461,000頭(1991年~2001年の調査データをもとに分析)でした。どちらのチームの分析方法も妥当とされており、それぞれの分析になぜこれだけの差があるのかを科学委員会が精査することになりました。

どちらのチームも、より近年のデータを使った場合に、大幅なミンククジラ生息数の減少を示していることに注目したいです。

またさらに、日本とオーストラリアの分析結果の差は、クジラ類の生息数の分析は不確実性が高く、そのため分析の解釈は予防的かつ慎重に行う必要があることを示唆するものとなりました。

IWCはあと4日間続きます。興味深い進展があり次第、またご報告します。