ポルトガルのマデイラ島で開催されていた第61回国際捕鯨委員会(IWC)は、予定より1日早く総会を終了しました。


IWCの日本代表団。手前から中前明代表、林芳正参議院議員、玉沢徳一郎衆議院議員、鶴保庸介参議院議員。

IWCの日本代表団。手前から中前明代表、林芳正参議院議員、玉沢徳一郎衆議院議員、鶴保庸介参議院議員。



この第61回IWC総会を振り返ってみると、実際に決まったことは、新たな議長がチリ代表のクリスチャン・マキエラ氏になったこと、来年の開催地がモロッコのアガディールになったこと、そして日本の調査捕鯨や沿岸捕鯨が問題となっている「妥協案」を含む「IWCの将来」についての議論が来年まで継続されることなどでした。

このように大した成果のなかったと思われる今回の総会ですが、その中でもちょっとした進展がありました。それは、「気候変動とクジラ類」という決議が全会一致で採択されたことです。この決議案は、オバマ政権に変わった米国代表団と捕鯨国であるノルウェー代表団が共同提案した決議でした。

オバマ政権が発足してすでに半年が経ちますが、オバマ政権は前ブッシュ政権時代に任命されたホガース氏が中心となって行っていた「IWCの将来」に関する議論の継続を重視し、今年のIWCまで続投させることに合意していました。ホガース氏を代表とする米国代表団は、このマデイラでのIWC途中からオバマ政権が任命した代表団へと引き継いだことになります。

そうしてオバマ政権の意向を受けた代表団が最初に提案したのが、この「気候変動とクジラ類」の決議だったのです。この決議では気候変動がクジラ類の生態に与える影響も深く考慮して、締約国に気候変動のおよぼす影響を保護・管理計画に反映させることを要請し、さらに締約国に気候変動対策をよりしっかり行うことを求めています。

気候変動対策における前ブッシュ政権との取り組みの差が、ここでも明確になって表われました。これで、IWCの科学委員会でも「気候変動」がクジラ類の生態に与える影響調査が進むことになるでしょう。

「IWCといえば対立」というイメージがすっかり定着したせいか、全会一致で採択されるようなこの決議案はメディアにも取り上げられることなく、ほとんど注目されませんでした。しかし、この決議はクジラをとりまく国際政治的な気候を一変させ、IWCがクジラ類の包括的な保護を担える国際機関に移行する大きな一歩になると思います。このように対立の中でも共通点を探るという作業は、IWCでは今後ますます重要になっていく気がします。