いよいよ今週末は東京都知事選挙だ。

都知事選挙をめぐっては、「原発は国で話すべきものだから」という理由で都知事選の争点としてふさわしくないという声があった。東京電力福島第一原発の事故で日本中の人々、企業、そして自然が甚大な被害をうけたことを考えれば「原発が国だけの問題」とすることは論外だ。

むしろこれからは個人、家庭、企業、自治体レベルでどのような電力を使うのかを考える時代がくる。

その象徴として、先週ソフトバンクが、今春から自然エネルギーによる電力を企業に販売開始し、2016年には家庭向けにも参入を目指すと発表した。また、海外では家具メーカーのIKEA(イケア)が2020年までに自社で使うすべてを自然エネルギーに切り替えると発表している。

このような動きから考えれば、国レベルだけで原発を議論するなど時代遅れも甚だしい。個人、家庭、企業、自治体が電源を選ぶ時代なのだ。そして、この時代を考えるのに必須なのが「電源責任」というキーワードだ。


「原発の電気は安い」は恥ずかしい

「熱帯雨林を伐採してつくった紙を使わない」

「紛争地域で採掘された鉱物を使わない」

「児童労働に関わる工場で製品をつくらない」

これらは企業が実際に取り入れているポリシーだ。この十数年で、企業、自治体、団体はその事業活動に使用する原材料がどこからどのように来ているのかを気にするようになった。

多少のコストがかかったとしても、法令が定めるよりはるかに厳しい基準をもうけて企業や団体の社会的責任として取り組んでいる訳だ。もちろん、環境に優しい、人権に配慮しているといううたい文句はブランドイメージ向上につながる意味合いもある。

しかし、電力という材料については、これまでほとんど無関心だった。つまり事業活動に使う電力は安ければ、どのように発電されていても良いという具合だ。その証拠に、いまだに企業のトップが「原発の電気は安いから良い」と発言している。

ある企業のトップが「児童労働で生産した製品は安いから良い」と発言したらどうだろうか?企業の倫理性を疑われるだろう。甚大な被害を与えた原発も同様ではないか。


IT業界ですすむ「電源責任」

環境にやさしく倫理的な電源を利用するというのが「電源責任」だ。

そして「電源責任」について取り組みが進んでいるのはフェイスブック、アップルなどのIT業界と言える。クラウド・サービスを提供するIT業界は、膨大なデータを扱うためにデータセンターを所有しているが、そのデータセンターは大量の電力を必要とする。

グリーンピースの「電源責任」を求めるキャンペーンに応えたフェイスブックは、2011年2月に今後データセンターの建設予定地を判断する基準として自然エネルギーの利用を加えることや、地元の電力会社や政府に対して自然エネルギーの供給拡大を働きかけることなどをグリーンピースと約束した。

この約束を経て、フェイスブックはアイオワ州アルトゥーナで2015年から稼働させるデータセンターを、100%風力でまかなわうことにした。驚くべきことに、フェイスブックはこのデータセンター建設による自然エネルギー需要の拡大によって、現地電力会社の原発新設計画を停止させることにも成功している

同様に、アップルもデータセンターを含めたあらゆる事業活動に使用する電力を100%自然エネルギーでまかなうという方針で、その進捗状況をWebサイトで公表している。2010年に35%だった自然エネルギー比率が、2013年には75%にまで伸びている。

自然エネルギー100%で事業するという「電源責任」を果たすために先進的な企業はすでに動き始めている。


国内でも「電源責任」が問われ始める

冒頭で述べたが、先週の1月31日、ソフトバンクが自然エネルギーの電力小売りを始めると報道された。今春にも企業向けへの販売を開始し、2016年には家庭向けにも販売するという。

自然エネルギーを中心に販売する電力会社が日本にも誕生することで、企業レベルはもちろん家庭レベルでも「電源責任」の議論が高まることは間違いない。

企業が自然エネルギーを調達して、環境配慮型の車、冷蔵庫、テレビなどを製造することが当たり前になる時代はすぐそこまで来ていると思う。

「原発は国の問題だ」、「原発は安い」、「自然エネルギーは不安定だ」などとのんきな発言を繰り返して、「電源責任」をおろそかにしている企業は、グローバル競争には勝てないだろう。

CSR(企業の社会的責任)担当者で、「電源責任」というキーワードを聞いたことがなかったとしたら恥ずかしい。

自治体レベルでも同じだ。今回の都知事選挙だけではなく、日本中の自治体で原発を含めたエネルギー問題を「電源責任」の観点から争点にすべきだと思う。

「どの自治体、どの企業が一番早く自然エネルギー100%を実現できるか」で競い合う時代はすぐそこに来ている。