調査捕鯨への復興予算無駄遣いにようやく注目が集まり始めた。

実はこの問題、イルカ・クジラ・アクション・ネットワークやグリーンピースが中心となってNGO14団体の連名で昨年の10月に共同声明を発表し、問題視していたものだ。

(参考: 2011/10/27  <NGO 共同声明>「補正予算22.8億円は、ムダな南極海での捕鯨ではなく、地域再生と被災者の支援に」)

それが、NHKスペシャルの復興予算調査報道に取り上げられたことで問題視する声が高くなったというわけだ。 (「シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円」2012年9月9日)

調査捕鯨という事業の怪しさも含めて、この問題が追及されてきたのは評価したい。しかし、いずれの報道も問題の本質まで追及することができていない。

報道では「復興予算」であるはずのお金が「反捕鯨団体対策費」として使われたことが問題視されているが、実は、「反捕鯨団体対策費」ですらなく本質はさらに悪質だ。 

 

日本鯨類研究所の赤字補てんに使われた復興予算


それでは「復興予算」「反捕鯨団体対策」との名目でいったい何に使われたのか?

実は、調査捕鯨事業を請け負っている「財団法人日本鯨類研究所(以下、鯨研)」という数年前まで農水官僚の天下り先だった団体の事実上の赤字補てんに使われたのだ。

鯨研は、鯨肉の販売不振から大量の鯨肉在庫を抱え、経営破たん寸前で運転資金が必要だった。今回、復興予算から補助金をもらう直前には、 54.7 億円あった鯨肉の販売収入が 17.7 億円と激減し、資産として計上された鯨肉在庫が前年度 946 万円から 9.6 億円と急増した。その結果、8.7億円の債務超過に陥っていたのだ。1987年の設立以降初めてのこととなる。(平成22年度事業報告書 財団法人日本鯨類研究所)

「商業捕鯨の再開」を掲げて続ける調査捕鯨では、「鯨肉が売れない」とは言えない。商業捕鯨再開が「絵に描いた餅」であることが明確になってしまうからだ。そこで考え出したのが、「反捕鯨団体対策」という理由。これで「商業捕鯨再開」という組織の存在意義を汚さずに、補助金をもらえる。

鯨研は、債務超過に陥っていたことを隠すかのように、2011年9月末までの財務諸表を、2012年の10月1日になってようやく公表している。

 

被災地に届かない補助金


10月7日、東京新聞は「復興予算届かない 被災地中小の申請 6割却下」と題して、東日本大震災で被災した中小企業の復旧を支援する「第五次中小企業グループ補助事業」をめぐり、復興予算からの補助金交付を求めたグループの約63%が「国の予算が足りない」などといった理由で申請を却下されたことを指摘している。

調査捕鯨のような無駄遣いには復興予算が使われたが、被災地には十分使われていないのだ。

日本国内のすべての元捕鯨会社が南極海での商業捕鯨は実施しないと宣言しているにも関わらず、利権をまもるために続けられる調査捕鯨。

今回は、「石巻の復興」とか「反捕鯨団体対策」と言って、復興予算を使って経営を立て直したわけだ。これでは、「被災地」を「利用した」と言われるのは当たり前だろう。

調査捕鯨に使われた23億円の復興予算は返還されるべきだ。グリーンピースは、イルカ・クジラ・アクション・ネットワークとともに会計検査院へ要請書を提出した。

今週中にも、衆議院の監査委員会で税金の無駄遣いについて調査がされるようだが、しっかりとした調査を望む。


鯨肉在庫についての参考資料: 「23.7g?」 イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク