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2011311日。東日本大地震の発生、海岸沿いの街に大きな被害をもたらした大津波。そのショックの最中に舞いこんだ、東京電力福島第一原発が制御不能になったというニュースーー。震災から6年が経過する本日、犠牲になられた方々に哀悼の意を表します。

忘れないでいること

多くの方の運命が、この日、永遠に変わってしまいました。家族、友達、同僚、知り合いを亡くし、住む場所を失い、土地や仕事や財産を失い、慣れ親しんだ街や地域社会は面影もなく、あるいは帰るあてもないーー。被災された方達にとって、一度失われたものは、同じ形では戻ってきません。 

私は当時カンボジアに住んでいました。震災後の4月に帰国し、仙台で1週間瓦礫の撤去を手伝いました。1日の作業を終え宿舎に戻ると、ボランティアの仲間たちと、自分たちにはこの後何ができるのだろうと議論したものです。私は、東北の復興に直接携わっていけない私たちにできることは、「忘れないでいること」ではないかと話しました。

その頃私が働いていた途上国には、世間から目を向けられることなく、日々貧困とたたかっている人々が多くいました。そうした恒常的な緊急事態に対しては、世の中は無情だと感じていました。大災害が引き起こす緊急事態は一時的に高い注目を集めますが、やがて世間の関心事は他に移り、事件は風化していきます。苦しいたたかいを地道に続ける人々を残して。

今なお続く苦難

東電福島第一原発の周辺地域の方々にとって、原発事故によって引き起こされた危機は終わっていません。3月末に避難解除を迎える飯舘村。グリーンピースの放射線調査の報告会で、調査に協力してくださった飯舘村の方々とお話しする機会がありました。ご自身や家族の健康に対する不安。説明責任を果たさない政府や東電に対するやり場のない憤りと不信感。故郷への思いを胸に、先行きの見えない将来をどう切り開いていくか、難しい問題に向き合っていらっしゃることが分かりました。

 

危機に瀕して大きな影響を受ける女性と子ども

危機的な状況は、社会的に弱い立場の人々に最も重い負担を強いります。特に女性や子どもは、身体的、精神的に放射能汚染の影響をより大きく被るだけでなく、数々の目に見えない差別に耐えてきました。放射線被ばくによる健康への影響を受けやすいのは、女性や子ども、特に妊娠中の女性や胎児です。被災した家族の中でも、母子家庭は貧困になりやすく、避難先の学校で福島から移住したことを理由にいじめや差別を受ける子どもたちがいることも社会問題になっています。放射能汚染を引き起こした原発事故によって、地域社会のあり方や家庭の環境も崩れていき、女性の権利、子どもの権利が侵害されています。

無責任な日本政府

安倍首相は、東京オリンピック誘致の際に国際社会の不安を払拭しようと、福島第一原発からの汚染水の状況は”アンダー・コントロール”だと宣言しました。東電福島第一原発事故を過去に押しやることで、政府は原発政策を堅持し、停止中の原発の再稼働を進めています。 

2012年に、福島第一原発事故以降の被災者の人権状況の調査を行った国連人権理事会の特別報告者は、調査後に重要な勧告をしました。たとえば、日本政府は事故後、非常事態宣言のもと、被ばく線量の限度を20ミリシーベルトまで引き上げました。それに対して、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを下回らない限り、避難者の帰還を奨励するべきではないと勧告しています。 

驚くことに、日本政府は勧告を受け入れない姿勢を示したばかりか、その後の視察の申し入れにも応じていません。非常事態宣言を維持したまま、3月から4月に飯舘村を始めとする地域で避難指示は解除され、その1年後には避難者への賠償も打ち切られます。また、避難区域外から避難している人々の唯一の支援である住宅支援は、今月末にも打ち切ることとしています。経済的な理由から、帰還せざるを得ない住民の方も出てくるかもしれません。 

政府や東電は、不都合な情報を隠蔽し、住民の帰還を急ぎ、十分な償いも怠っています。犠牲を強いられるのは、福島の方々です。東電福島第一原発事故によって侵害された人権は、政府のその後の不透明で不誠実な対応により、二重に侵害されています。

 

痛みを経験した人には、人一倍人の痛みがわかる

しかし、逆境は人を強くします。政府の父権的(パターナリスティック)な姿勢に対して、福島や全国各地で母親や女性たちは、子どもを守るため、次の世代に原発のない未来を残すために脱原発運動の先頭に立ちました。経産省前で座り込みに参加したり、住民の権利を求める原発訴訟を起こしてきました。女性は既存の権力構造に取り込まれていないからこそ、批判的な視点で政府や原発産業に大胆な変革を求めることができるのかもしれません。

自身が痛みを経験した人には、人一倍人の痛みがわかるものです。カンボジア滞在時、トウクトウク運転手から「東北の被災者を思って日本大使館に5ドル寄付した」と聞き、私は心を動かされました。5ドルというお金は、毎日ぎりぎりの生活をしている運転手にとって1日の収入以上だったかもしれません。私自身、「落ち込んでばかりいてはいられない」と思いました。辛い時、苦しい時ほどこそ、人はつながることで、新たな勇気と励ましを得るものです。

 

立ち上がりましょう。福島の女性たちと一緒に。子どもを守る国際署名に参加してください。

「被害者の人権をまもって」今すぐ署名する >

グリーンピースは、政府や企業からお金をもらっていません。独立した立場だからこそできる活動で、私たちの知らないところで進む環境破壊や、その社会への影響を明らかにしています。原発のない未来のために、寄付という形でも一緒にグリーンピースを応援していただけませんか?

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