ツイート
 

こんにちは、食と農業担当の関根です。

前回につづき、院内学習会「ミツバチ・食・生態系を守るために」の様子をお伝えします。

二人目のスピーカーは科学者のマイケル・ノートンさん。ネオニコ系農薬の生態系への影響レポートをまとめた欧州科学アカデミー諮問委員会の一人です。この委員会(以下EASACと略)は、独立の立場でEUの政策決定に科学に基づいた助言をする役割があります。

 

 

ネオニコの影響、論文300本で検証

ネコニコチノイド系農薬は2013年に、ミツバチへの影響を重視してEUで規制が始まりました。

この時、EASACが調査したのは、作物に浸透して作用するネオニコ系農薬が生態系サービスにどんな影響を及ぼすかということ。2年間かけて300本の論文を評価したそうです。

 

 

生態系の力は農業にとても重要

 ”生態系サービス” というのは生物多様性を基盤とする生態系から私たち人間が得られる恵みのこと[1]。たとえば天然の害虫防除システムや、ゆたかな土壌づくり、花粉の媒介などです。

ノートンさんが特に強調したのは、生物多様性の豊かさが、こうした生態系サービスのはたらきを通して、農業に大きく貢献している、ということでした。

野生のハチや、天敵たちはピンチ

EASACのチームは、ミツバチ以外のハチたちや、野生の昆虫たちに注目して研究をすすめました。

すると、ミツバチ以外で花粉を媒介する生物や、害虫の天敵となる虫など自然の生態系サービスに関わる昆虫たちが、近年、すべて大幅に減少していることがわかったのです。

大幅に数の減った生物もいて、農業を支える生態系サービスを維持するにはミツバチの保護だけでは不十分だと結論しました。

 

ネオニコは生態系サービスを損なう

この、生物多様性の損失を招いてきた原因は何なのでしょうか?

原因はとても複雑ですが、考えられる要因の中で、農薬、特にネオニコチノイド系農薬の影響の可能性を詳しく調査されました。

その結果次のようなことがわかりました。

❏ネオニコチノイドが予防的に使用されることで、標的ではない生き物にも、重大な悪影響を及ぼしているという証拠が多くみられた。

❏ネオニコ単独の影響はもちろん、他の要因とかけ合わさったときの影響も検討すべきである。

❏「致死量ではなくても、少ない量で悪影響は出る」というネオニコの影響があきらかになった。(例えば:ウィルスに対する抵抗力が弱くなるなど)

現在のEUの農薬登録手続きの中では、ネオニコチノイドによる、「死亡しないが悪影響を与える」については十分に調査されていない、というのが研究の結論です。

 

こうして、ネオニコ系農薬のリスクが明らかになってきたことを重視し、改めて再評価すべき、とノートンさんは警鐘を鳴らします。そして、この結論はヨーロッパ以外でもあてはまるはず、といいます。

これは、日本でも確かに当てはまることですね。

[トンボの減少とネオニコ系農薬の関連など、日本でも生態系への影響がすこしずつ明らかになってきています。]

 

虫がでる前に農薬を使うのはNG!

ノートンさんは、短期間しか発生しない害虫や「主な標的ではない害虫」に対して、それら発生するまえに、「予防的防除」として大規模に使うことは見直すべきではないか、と指摘します。

斑点米の原因となるカメムシも発生期間は短く、発生前にネオニコなどの農薬を無人ヘリコプターなどでまいています。こした日本の現状も、やはり見直すべきです。

農薬使用を最小限に抑えるためには、化学農薬は最後の手段にするという順序が重要です(これは「IPM(統合的病害虫管理)」と呼ばれ、農林水産省も指針をつくっています)。

でも、最初に散布して、作物にしみこませ、虫の発生を防ぐというネオニコ農薬の使い方は、Iこれを全く逆転させてしまう ものです。

院内集会の最後には、篠原孝衆議院議員の締めくくりのスピーチがありました。篠原議員は、「レイチェル・カーソンが半世紀前に農薬の害を警告した『沈黙の春』のように、こんどは実りを支える生態系を損ない、『沈黙の秋』を招いてしまうことのないよう、早期の対策が必要」と強調しました。

以上で報告は終わりです。

今すぐあなたにできること

ネオニコ農薬を使わなくてもおいしいお米は作れます。もし斑点米が混じっても、今は機械でとりのぞけます。

あなたの使うスーパーでも、ネオニコを使わないお米を積極的においてもらうよう、意見を送りませんか?

 

「有機を増やして!」 いますぐ署名 >

 


 [1] 生物多様性センターのウェブサイトより

グリーンピースは、政府や企業から一切お金をもらっていません。独立した立場だからこそできるこうした活動で、緑豊かで平和な未来を実現するため、ぜひ、ご寄付で今後の活動へのご支援・ご協力をお願いいたします。

寄付する 

ツイート
 

【オススメ記事】

ミツバチは農業の大事なパートナー、真剣に守ってほしい!(院内学習会報告その1)

モンサント模擬法廷---世界の証言者からのメッセージ

小売店からオーガニックのエネルギーが動きだす!

「ルール通りの農薬管理」の落とし穴

“農薬ありき”の農水省が、オーガニックの足を引っ張っている

農家さんの半分以上が「有機にしたい」!

調査結果を発表!「有機食品を増やす予定なし」ってどういうことですか?

「高江においで」音楽と森のマジック

生きものハカセ・アキノ隊員と楽園やんばるを歩く

家族の楽園、やんばるの空にホタルとオスプレイ

「やんばるを守る」未来につながるたたかい

楽園「高江」という場所を知っていますか?

いまから、沖縄にお連れします。

結局のところ、辺野古では何が起きているのか?

日本メーカー部品問題でフランスの原発に停止命令ーー日本は?

熊本地震を踏まえれば、再稼働はありえない。高浜原発1、2号機裁判傍聴記

世界最高じゃないね--IAEAが原子力規制委員会にダメ出し

「関電の計算はブラックボックス」by原子力規制庁--規制庁の規制力を疑う

祝! アマゾンの森の巨大ダムが建設中止に