こんにちは。エネルギー担当の柏木です。

今日は、ところかわって、スペインからお送りします。

なぜスペイン?
フラメンコを鑑賞に?

いやいや、違います。

実はスペイン、自然エネルギーを今後増やしたい!という私たちにとって、様々なことが学べる国なんです。

スペインとドイツの自然エネルギーの現場をめぐる、10日間の視察ツアーに参加する機会をいただいたので、その学びをシリーズブログで、みなさんにもお伝えしたいと思います!

 

電気の43%が自然エネルギーから!

2014年、電力の43%を自然エネルギーでまかなっていたスペイン。一番比率が多いのは、風力の20.3%(グラフの緑色)。自然エネルギーの中でも、ほぼ半分を占めます。日本とは、かなり状況が異なります。


グラフ:http://www.ree.es/sites/default/files/downloadable/the_spanish_electricity_system_2014_0.pdfより

日本では、風力発電は「風任せで不安定」とご意見を頂くこともあります。風の力に頼る風力発電の発電量は、当然、常に変動します。風力発電が進むスペインでは、事前に発電量を予測し、需要と供給のバランスをとることで、前もって準備して必要な電気をしっかり供給しているんです。

 

世界初の「自然エネルギー制御センター」へ

その調整をしているのがRed Electrica de Espana(REE社)。
1985年に設立されたスペイン唯一の送電会社です。(いまは国営)

発電所で発電された電気は、送電線を通って、そのあと各家庭や企業に配電されます。送電会社は、スペイン全土にある発電所から発電量の情報を受け取り、必要な量を必要なところに送る、重要な役割を果たしているのです。

今回は、REE社の自然エネルギー制御センター(CECRE)にお邪魔してきました!

このCECRE、自然エネルギーの制御を行う、世界初の施設!そのため、全世界からひっきりなしに視察が来るそうで、私が訪れた前後にも、視察のグループがいました。出入の管理が非常に厳しく、全員を事前に登録する必要があり、また受付でしか写真撮影もできない、というとても厳格な体制でした。



その受付での貴重な(?)一枚。

 

スペイン発・自然エネルギーの司令塔

制御センターの中に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは巨大な2つのスクリーン。その脇に、合計で4つのスクリーンが並んでいます。

まさに「司令室」という様相。制御はシステム化されていて、スマートにやりくりしている状況が読み取れました。


REE社ウェブサイトより。

上の画像は、REE社の大きなスクリーンのうちの1つ。風力・太陽熱・太陽光発電の発電状況についてグラフや地図で示されています。(REE社ウェブサイトより)

大きなスクリーンには、いくつかのグラフや地図が表示され、数秒おきに数字が入れ替わっています。たとえば、電気の需要と、供給されている電気の量は、それぞれ4秒おきに更新されていました。

すでにご説明した通り、スペインは電力のなかで風力の占める割合が多い国です。REE社では、風力発電を最大限活用するとともに、その変動に対応するために、気象庁や大学など、5カ所から天気予報を入手しています。日々、風力発電の量を予測するとともに、常時、風力発電の発電状況をモニタリング、過不足なく電気が送電線に供給されるよう、コントロールしています。

 

発電は現場で起こっている?!

でも、司令塔から、風力発電の現場までは遠いですよね。
なぜ、事務所にこもっているスタッフが、風力の発電状況を知ることができるのでしょうか?

スペインには33カ所の自然エネルギー地域制御センターがあります。地域ごとの情報は12秒おきに中央センターに伝えられ、最新の状況を把握することができます。

元々、風力による発電の量は予測されていますが、それよりも多すぎたり、少なすぎることがあれば、システム上で指令を出し、発電所からの調整する仕組みになっているのです。

下記の図は、風力発電のリアルタイム発電量(黄)とREE社の風力発電の予測値(緑)を示したもの。かなり、予測値と実際の値が近いことが分かります。2005年から運用し、予測と実際の値のギャップは、年々近づいているとのことでした。


REE社ウェブサイトより。

黄:風力発電の発電量(リアルタイム)
緑:REE社による風力発電の予測値
赤:市場で販売されている風力発電量

また、画面には風力発電だけではなく、太陽熱・太陽光発電の状況や、二酸化炭素の排出状況まで、一目でわかるように地図やグラフで示されていました。


REE社ウェブサイトより。

上のグラフは日々の電気が何で発電されているかを示し、だれでもインターネットで見られるようになっています。興味のある方はこちらから!

スペインでは、43%の自然エネルギー導入を実現しています。また、わたしが訪れた日は、最大で60%の電気が、風力発電から供給されていました(上記グラフの黄緑色の部分)。一方、日本では全発電量に占める自然エネルギーは12%。半分にも達していません。

スペインのように、自然エネルギーを最大限、導入するための制御をしようとすれば、日本でも自然エネルギーの比率を高めることは可能です。やろうとすれば、日本に技術はあります。資金もついてくるでしょう。

足りないのは、技術でも、お金でもなく、自然エネルギーを増やそうという政府の意思ではないか。そう思って次の視察場所に向かいました。


スペイン編、まだ続きます!お楽しみに。

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【ヨーロッパ自然エネルギー現地レポート1】40%を自然エネルギーでまかなうための”制御”の仕組みを学べ!スペイン・REE社

【ヨーロッパ自然エネルギー現地レポート2】自然エネルギーの普及を妨げる、”政治の問題”を乗り越えろ!@スペイン・自然エネルギー財団

【ヨーロッパ自然エネルギー現地レポート3】自然エネルギー100%の電力会社の可能性を探れ!@ドイツ・グリーンピースエナジー社