こんにちは。マモさんこと、エネルギー担当 関口です。

気がつけばもう3月。早いものですね。3月14日はホワイトデー。昨年はどんなだったっけと思い振り返ると、朝日新聞が「川内原発、今夏にも再稼働」なんて報じてたんですね。

夏が秋へ、冬へとずれ込みまた春が巡る・・・このまま動かないでいて欲しいなと思う春。

てなわけで、今日は先週に引き続き、グリーンピース委託レポート『川内原発と火山灰のリスク』(執筆:ジョン・ラージ博士)の気になる内容についてお伝えします!第2回は、「九州電力・川内原発の取り組み、海外と比べてみて、ズバリどうなのっ?」です。(第1回はこちら

( 写真:レポート『川内原発と火山灰のリスク』)

 

グローバルスタンダード未満な評価方法!?

さっそくですが、IAEAってご存知ですか?日本語では「国際原子力機関」。

国連の関連機関の一つで、原子力の平和利用を研究したり、原子力機関の安全基準を設定したりする団体です。簡単に言えば原子力施設にとってのグローバルなご意見番。日本の原子力規制委員会も、基本的にはこのIAEAがオススメする基準に沿って安全審査するという方針でいました。

 ところが、ジョン・ラージ博士によれば、川内原発に対する火山活動の影響を検討する上では、このIAEAが薦める方法が採用されていないというのです。

 

IAEAのオススメとは?

IAEAは、原発に影響を及ぼす可能性のある火山を選んだり、対応策を考えたりする際には、「少ない事例に絞って予測を立てるのではなく、危険な要素をいくつも広く考え合わせた上で、災害発生の可能性をしっかり計算に入れましょう」と強く薦めています。

 

それって、東京電力・福島第一原発の事故を踏まえたら当然!って感じですよね。ところが、原子力規制委員会が採用している方法はそうではないのです。

 

(写真:原子力規制委員会前での抗議行動の様子 (c) Masaya Noda / Greenpeace)

 

川内原発の審査書でのやり方とは?

日本の原子力規制委員会が「審査適合」とした川内原発の場合、桜島薩摩噴火という12,800年前の、たったひとつの歴史的記録を参考に、噴火の規模や影響を想定して対策をまとめています。

・・・これって、上の「危険な要素をいくつも広く考え合わせている」とは言いがたいですよね。

 

また、火山の専門家が使う火山活動の大きさを表す指標のひとつに、「火山爆発指数(VEI)」というものがあります。レベル0の“非爆発的”からレベル8の“メガ巨大規模”まで分類されています。

 川内原発の審査では、「(1)レベル7規模の噴火は予測できる。(2)原発運転期間にはレベル7は起こらない。(3)そして、レベル6以下の噴火は川内原発には影響ない」と、しています。

「いやいや、レベル6以下の噴火は起きる可能性高まりますよ、そしてそれでも十分影響あるレベルになりえますよ!」というのがラージ博士のご指摘です。

 

この表をご覧ください。噴火高度(爆発が起こった時にどれくらいの高さまで噴煙が上がるか)で見てみると、レベル4でも噴煙の高さが海面上10km〜25km!! 標高1,117mの桜島の上に、24倍ほどの高さまで噴煙が上がることを想像してみてください。「影響ない」ってどゆこと!?

 

内閣府発表資料より抜粋

 

(写真:噴煙を上げる桜島。この高さの24倍?)

ちなみに、アメリカ版原子力規制委員会(NRC)では、VEI のレベル3からレベル6までの火山活動も、原発への影響あり!として対応策をいろいろ検討しています。国際ご意見番のオススメに沿って色々と対策をしているアメリカと、「巨大な規模」の噴火でも影響ないとする日本・・・

 

原子力規制委員会の言う「世界最高水準」を再稼働同意の理由に挙げていた鹿児島県伊藤知事は、この現実、どんな風に受け止めるのでしょうか?

日本基準<世界基準。その具体例を、規制機関ごとの違いが一目瞭然となるような表にまとめてみました。

©Greenpeace 

原子力問題に30年近く取り組んできたグリーンピース・ドイツのショーン・バーニーによれば、「IAEAもNRCも、原発推進団体。むしろ原発を稼働させることを前提で基準を設けています。それでも、その基準は日本の原子力規制委員会と比べると高いくらいなのです。この、『世界最高水準』から程遠い日本の審査基準のまま原発を再稼働させることは、許されるべきではありません。」

(写真:記者会見席上のショーン・バーニー)© Masaya Noda / Greenpeace

冒頭のように、昨年3月時点では夏の再稼働を目指していた川内原発ですが、遅れに遅れて当初の見通しから1年が経とうとしています。これは、再稼働を止めたいというたくさんの声と、様々な取り組みの結果以外の何ものでもありません。

 

九州電力の川内原発再稼働の審査は、まだ3分の2も行程が残っています。反対の声を上げれば上げるだけ、再稼働を遅らせることができ、停止期間が長ければ長いほど、将来の廃炉の可能性は広がります。グリーンピースでは継続して「とめよう再稼働」の署名を集めています。あなたの声を鹿児島県知事にも届けます!

グリーンピースでも原発再稼動を止めるべく署名を集めています。

「とめよう再稼動」へはこちら

 

P.S. 原子力規制委員会と川内原発の火山灰対策の甘さに関しては、

なんで今火山灰と原発!? グリーンピースが明らかにした「世界最高水準」の実態

〜マモさんの、はじめてでも分かる川内原発の火山灰問題(その1)〜

をご覧ください!