こんにちは、食と農業問題担当の関根です。
前回に続いて、愛媛県今治市での有機・地産地消の給食と地域づくりについて、今治市玉川支所長、安井さんのインタビューをお送りします。
輸入農産物に負けないためには「有機農業と地域のつながり」が大事という安井さん。詳しく聞いてみましょう。
グリーンピース:日本では7割以上の人が国産は安全だと感じているそうです。ネオニコチノイド系農薬の残留基準はEUと比べると日本がずっと高いですが。安井さん:.国産ならなんでも安全という科学的根拠は残念ながらどこにもありません。外国産の有機農産物が比較的安く輸入されるようになったら、対抗できる国産は有機農産物しかない。有機同士ならば新鮮さの勝負ですから、国産なら絶対に勝てます。外国産は作るまでは有機でも、輸送の間に燻煙剤をかけられてきますから。新鮮で、ポストハーベスト*農薬もなく、しかも、地産地消なら「朝どり野菜」も可能なわけですから、そこで勝負しないと。(*収穫後の農産物に農薬をかけること)
グリーンピース:農協の中でも有機の価値に理解がある場合とそうでない場合があるようですけれど、地域に根差している(農協の)支所は、理解してくれているのでしょうか?安井さん:そうとも限りません。その人(職員)の思いによるところが大きいでしょう。ここは、山間地域ですが、「有機にして生き残ろう」とまで思っている農家は少ない。「今のままの農業を続けながら、先細りでも、5年先10年先のことはいい、跡継ぎもいないし。」と。そういう地域は他でも多いと思いますが。有機にしたら売れるチャンスなのに。農協はここに気づいて農家を、農業を支えないといけない。グリーンピース:有機だったら売れるのに、という同じ声を他の地域でも聞きました。農家さんと消費者のコミュニケーション、つながることが課題ですね。
グリーンピース:学校に行っていない年齢の子どもに対しては何かしていますか?
安井さん:今、市の地元産品の直売所「さいさいきて屋」のお弁当を取っている幼稚園が3つ。有機のバイキング料理の店からお弁当を取っている園が1つ。あと、自校式の調理場を持っていて、有機の食材を使って給食を作っている園が1つあります。
あと、お寺がやっている幼稚園で、園児が作った野菜を中心に給食を出している所が1つあります。園児が野菜も売っています。
子どもが減ってきているから、幼稚園も食に対して魅力のある工夫を凝らすようになっていて、安全な食べ物や、有機農業を売りにしたりもしているんです。
市でも、包丁も持ったことがないような園児を対象に、料理教室をやっていますよ(笑)。小中学生の農業体験はもちろんあります。
グリーンピース:食育基本法とか、有機農業推進法など国の法律がありますが、自治体が有機農業を推進するには役に立っていますか?安井さん:自治体レベルで法の目標を実現するための事業予算がいただけるようになった点で、有機農業推進法は役にたっています。あとは、今まで相手にしてくれなかった県や国が、有機農業推進法があるから、ということで話を聞いてくれるようになりました。県の試験場でも有機の栽培試験がされるようになりましたし。それまでは、頼んでもやってもらえませんでした。食育基本法では、予算が栄養士、保健師、栄養教諭など栄養学に向いていて、自治体が事業を行える予算はありません。基本法ができる時、食は農からできていて、農のもとは土でそれが繋がるという食育、食農教育に近いものを期待していたのですが。バランスよく食べましょうという栄養学中心の食育に重点が置かれています。
食育基本法では自治体で食育計画を作ることが求められているので、今治市は食農教育にしてしまいました。もちろん基本法に基づいて作った基本計画ですが食農教育の視野をもっています。食育基本計画を栄養学中心にするのか、農に根ざした食育にするのか、自治体は、地域の将来を考えながら作っていく必要があると思います。食育推進計画は、愛媛県の動きが鈍かったので、今治市が先に策定して県に示しました。県の反応はしぶしぶでしたが、ひな形として役立ったと思います。ウェブサイトで見られるはずですが、今治市有機農業振興計画、地域農林水産業振興計画、食育推進計画の3つができています。もう1つ地域自給率向上計画も作らなければと思っています。
安井さん:環境保全型農業を担当する役人の中には、「有機農業」という分野を認めたがらない傾向があります。有機農業が環境保全型農業よりも上だと思いたくない。自分達が推進してきた「特別栽培農産物」(農薬の使用回数を減らした農産物)の分野が将来有機にとって代わられたくない、といった上下思考やナワバリ意識があるのでしょう。国は特にそうです。国の有機農業制度班も環境保全型農業推進室の中に置かれています。表彰でも、環境保全型農業コンクール有機の部というのはあるのですが、有機農業コンクールというのはない。国にとっては、化学農薬・化学肥料半減の人もエコファーマー、不使用の人もエコファーマー、有機農家もエコファーマー。でも、有機農業は特別栽培の一部ではありません[キッパリ]。有機と特別栽培はまったく別物で、化学農薬・肥料を使わないのが有機、使ったら特別栽培!環境保全型農業でも、有機を到達点として変わっていけばよいのですが、実際はそうなっていません。国の担当者は、「最初に10回農薬をまいていたのが5回になり、3回に減って0になればいい」と言っていますが、自動的にそうなるものではありません。農薬の回数を3回まで減らした農産物がよく売れたら、そこから0回にする動機は無くなってしまう。
有機をやろうという人は最初から化学農薬に頼らないことを目標で挑んでいます。目標もなく、だんだん減らしていっていつのまにか0になったという人はいない。国や自治体はその違いを見極めて、政策を切り替えないと、有機農業は進みません。
グリーンピース:お話しをうかがっていると有機農業は、地域づくりやネットワーク、食育といった観点から多様な可能性がたくさんあることが伝わってきます。安井さん:技術もそうです。地域で多様な技術が編み出されてきました。単に化学農薬を使わないというだけではなく、地域との繋がりの深い作り方(地域色のある栽培方法)もいろいろな入り口が考えられますし、TPPの波が来ても地域の農業が有機で持続していく道を見いだせる可能性がある。グリーンピース:有機にはそうした可能性の芽がある。この芽を伸ばしていくために、国は農薬ありきの政策を捨て、農薬に頼らない生産者を支援し、都市の消費者と地方がつながる手助けをすべきですね。
農家さんと消費者をつなぐスーパーが、その気持ちに気づいて、有機の取り扱いを増やしてくれれば、日本でももっともっと、有機が増えていきます。
スーパーや生協を変えるには、そこでお買い物をするわたしたち消費者の思いを、届けて、有機を選びたい消費者がこんなにいるよ!ということをアピールすることが一番、効果的です。
みんなで、スーパーに「有機の取り扱いを増やして!」と声をあげましょう。
「有機を増やして!」 いますぐ署名 >
【彩菜写真集】地産地消、有機の推進を支えている機能のひとつが地元の直売所「さいさいきて屋」です。
次回は、<その(3)地域をまるごとプロデュース>です、お楽しみに。
前回 <その(1)有機の給食はこうして始まった>を見る
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