こんにちは、気候変動・エネルギー担当の高田です。

福島のお母さんたちと、俳優の山本太郎さんといっしょに、脱原発と自然エネルギーの今をたずねるドイツの旅も中盤です。

自然エネルギー利用の実例を、北ドイツの農村に訪ねました。

まずは、放射性廃棄物の輸送に30年にわたって抗議をしてきたウェンドラント地方。
ここでは、約1500世帯が使用する電気の100%を自然エネルギーで自給し、あまった電気を売電して収入を得ています。

今回私たちが訪れたのは、4基の風車が並ぶ風力発電所。
1基につき約200人の市民が少しずつ出資してつくられたこれらの市民風車は、近々最新のものに交換されるとのこと。
これまでよりも3倍効率よく発電と収入が得られるようになる予定です。

15年前はたった1%だったこの地域の電気の自給率は、いまや100%以上。
地元市民が中心となって風力やバイオガス、太陽光のミニ発電所がいくつもできています。

さらに、熱と自動車の燃料も、自然エネルギーでの自給を目指しており、熱については、すでに20~30%が「地産地消」に。

50メートルある風車のてっぺんまで登った福島の有機農家・大河原さんは、畑のなかで元気よく風を切って電気を生み出す風車を見上げて「希望がわいてくる」と笑顔に。

次に訪れたのは、同じくウェンドラントの「半農半電」農家。
「半農半電」とは、自然エネルギーの発電ビジネスと農家の兼業のことで、ドイツでは、農家が自然エネルギーの普及にとても重要な役割を果たしています。

私たちがお邪魔した農家は、200ヘクタールの農地でジャガイモや麦をつくり80頭の乳牛を育てる酪農家。
ここでは、牛舎や納屋の屋根に800枚の太陽光パネルを敷き詰めて発電するだけでなく、バイオマスを利用して熱と電気を生み出しています。

トウモロコシと草に牛糞を混ぜたものを醗酵させてできたバイオガスで発電機を回し発電。
その過程でできる熱をトウモロコシの乾燥に利用し、残りの熱はご近所30軒に供給しています。

ビジネスパートナーと2人で融資を元に、太陽光は2004年、バイオガス発電は2006年に導入。
ドイツでは自然エネルギーによる発電は、一定の価格での長期間の買取が決まっているため、こうした分散型の小規模発電ビジネスがいくつも生まれています。
そして、その重要な役割を担っているのは、「農地」とそこに降り注ぐ太陽、通り抜ける風、家畜や農産物から得られるバイオマス(有機物)という「資源」をもっている農家の方たちです。

半農半電は、自然エネルギーの固定価格買取制度によって、比較的安定した発電による収入を10年~20年に渡って得ることができ、農家の経営を安定させる効果があります。

天候や市場によって収量や価格が左右される農家にとって、半農半電は大きな可能性を秘めた新しい農業のひとつとなるはずです。

日本でも、エネルギー転換は可能です。
詳しくは、こちら: レポート『自然エネルギー革命――2012年、すべての原発停止で日本がよみがえる』


(写真:(c) Greenpeace 50メートルの風車をはしごで登りました/ウェンドラントの風車には、羽の付け根の後ろに太陽マークがついています/ 半農半電農家さんと大河原さん/ バイオマスで電気と熱を生み出しています / 牛舎の屋根には800枚のソーラーパネルが発電中  )