こんにちは。食と農業問題チームの関根です。

 野菜やお米に、「エコ農産物」とか「特別栽培」とか「有機JAS」といったマークがついているのを見たことありますか?

いま、土づくりなどの工夫をして化学肥料、農薬の使用を減らした「環境保全型」(注1)の農産物であることを示すマークが、国や都道府県や各地の農協などの取り組みとしてたくさんつくられています(ここではまとめて「エコラベル」と呼んでおきます)。

エコラベルが生産者や栽培方法の情報をきちんと伝えてくれたら、環境を大事に考える消費者と生産者とが今よりつながって、無農薬や有機の農産物が選びやすく、作りやすい方向に進む手助けになるのではないでしょうか?

そんな思いから、エコラベルの実態がどうなっているのか、グリーンピース・ジャパンでは、全国の都道府県にアンケート調査をしました。

 

全国47都道府県への調査(注2)の結果、地域に応じて独自の工夫やさまざまな環境保全の観点を盛り込んだマークやしくみを作っていることがわかってきました(注3)。比較的多かったのは、国がつくった「特別栽培農産物の表示ガイドライン」に準じたマークを作っているところ(31都府県)でした。

 

「環境保全型」なのにネオニコ農薬も空中散布もOKなの!?

環境保全型農業の一つ、「特別栽培」とは、各都道府県で決めている化学合成農薬(注4)を使う回数を50%以下、化学肥料の窒素成分の量を50%以下に減らして栽培したことをさします。特別栽培の場合、化学農薬や化学肥料の使用がゼロから50%まで、幅があります。

グリーンピースで、都道府県で認証する特別栽培の農産物にネオニコチノイド系農薬が使えるかどうか聞いたところ、「使えない」という都道府県はありませんでした。

一方、都道府県ではなかったものの、群馬県の渋川市では、ネオニコ系も有機リン系農薬も使わない農産物の認証マークを運用しており(群馬県の回答より)、また、高知県では「禁止」ではないものの受粉にハチを使い、天敵で「害虫」を防いでいる「エコシステム特別栽培」というマークの農産物では基本的にネオニコ系農薬は使えないそうです(高知県の回答より)。こうした取り組み、応援したいですね。

また、「環境保全型」農産物に農薬の空中散布を認めていない・またはなんらかの規制をもうけている県は5都府県(東京、大阪、神奈川、高知、岡山)だけでした。

ネオニコ系農薬などの浸透性農薬は、国際自然保護連合(IUCN)に助言する科学者グループの報告書(注4)でも、水に溶けやすく、環境に広がりやすいため「土壌と堆積物、地下水と地表水に、(中略)大規模な汚染を引き起こし、蓄積の可能性をもたらす。」と警告されています。

「環境保全型」であることを示すマークなら、ネオニコの使用や、化学農薬の空中散布は認めるべきではありません。

 

無農薬がわかるラベルはどれ?

エコラベルでも、上記のように定義はいろいろ。農薬だけをとってみても農薬の使用の状況がわかる段階的な表示をしている県と、そうでないところがあります。 

今回のアンケート結果を、農薬の使用状況がわかりやすいかどうか、という視点で一覧にまとめてみました。

農産物エコラベル一覧〜全国のエコラベル調べてみました

 

 あなたの住む地域はどうですか?もし無農薬(農薬不使用)であることがはっきり書いてあるものが見つかったら、ぜひ地元のお店で無農薬のものを探してみてください。岩手、千葉、高知以外のほとんどの県では、マークのついた農産物は県内を中心に販売されていて、直売所などで売られていることも多いそうです。

グリーンピースが昨年、有機栽培や無農薬の農家さんを訪問して聞いたお話の中には「無農薬でつくっても、化学農薬使用のものと混ざって出荷されれば消費者にはわかりません」という声がありました。

無農薬、有機栽培の情報が消費者にわかりやすく伝われば、消費者は選ぶことができ、無農薬や有機で栽培する生産者への応援になります。

それは、一人一人の消費者の行動が市場を変えることにつながります。

 

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注1) 環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」です(農林水産省「環境保全型農業の基本的考え方」より)。有機農業、特別栽培農業、エコファーマーによる農業などを含むとされています。

 注2)都道府県アンケート調査・意識調査のまとめ

 注3)たとえば、琵琶湖を守るためのルールを加えた滋賀県とか、国の決めた有機農産物よりも厳しい有機無農薬のラベルのある岡山県とか。市町村でも作っているところがあります。ぜひ、地元の農産物のマークを探してみてください。

注4)有機農業で使ってよいとされている以外の化学合成登録農薬 

注5)浸透性農薬タスクフォースの報告書 メディア説明会資料(日本語)

注6)有機農産物のマークは国の定めた条件を満たすJASの認証をとった農産物に「有機JAS農産物」というマークをつけられるようになっています。

 

 

 

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