こんにちは。核/エネルギー担当の鈴木かずえです。

原子力規制委員会が鹿児島県の九州電力川内原発の再稼働申請に対して、「審査書案」をつくり、その「案」に対しての、意見公募(パブコメ)が募集されています。

(提出方法などはこちらのブログをご覧ください)

今日は、福島から京都に、お子さんと避難されている宇野朗子(さえこ)さんが書かれたパブコメを2通、ご紹介します。

〆切は8月15日(金)。どうぞお早目に。

 「第三弾も書かなくちゃ」とおっしゃる宇野朗子さん。

パブコメの〆切は8月15日(金)。まだであれば、ぜひ、出しましょう。

出した方も、新たに気づいた点があれば、再度、いかがですか?

川内原発の再稼働は今秋以降か?との報道もあります。
川内原発の再稼働を止めているのは、一人ひとりの市民の行動です。

8月9日、長崎市長は平和宣言で核兵器廃絶を求める長崎の高校生の合言葉「ビリョクだけどムリョクじゃない」を紹介し、「一人ひとりの人々の集まりである市民社会こそがもっとも大きな力の源泉だ」とおっしゃいました。

一通一通のパブコメが、川内原発再稼働を止める大きな力の源泉になるはずです。


 

【一通目のパブコメ】

本審査書について、以下のような問題点があります。つきましては、十分な再検討と修正、審査のやり直しをお願いいたします。

1.福島原発事故の検証が不十分

まず第一に、福島原発事故の検証が不十分であることが挙げられます。

現在進行中のこの事故の原因については、未だ分からない事が多く、津波の前に地震により機器が破損した可能性についても指摘されていますが、検証は不十分なままです。  

事故発生当時、福島第一原発一号機で作業をしていた、故・木下聡さん(2013年8月がんで他界)の証言によれば、「配管は昔のアンカーボルトを使っているから、揺すられると隙間ができる。ああ、危ないと思ったら案の定、無数の配管やケーブルのトレーが天井からばさばさ落ちてきた。落ちてくるなんてもんじゃない。当たらなかったのが不思議。」「東電は『全電源喪失と地震の揺れは無関係』と言っているが、そんなのあり得ない。謙虚に検証する姿勢がないと、安全神話が復活する。」と警告をしていました(2013/9/13 神戸新聞)。

福島原発事故を教訓にするというのであれば原因の究明を先に行うべきです。

2.基準地震動は不適切  

日本国は、2008年岩手・宮城内陸沖地震4022ガル、東日本大震災2933ガル、新潟県中越地震2515ガル、阪神・淡路大震災818ガル、という地震を経験しています。

また、1997年5月13日鹿児島県北西部地震では、宮之城町で最大加速度南北902ガルを記録しています。

地殻大変動期に入っている日本列島において、基準地震動は慎重に定めなければなりませんが、川内原発の基準地震動620ガル(従来は540ガル)は、最小の地震モーメントを選んで地震動評価にとって最も重要な応力降下量を最小の値に設定して算出されており、二度と原発震災を起こさないという真摯な姿勢を感じることができません。

また、算出においては、日本の地震の特性を考慮すべきであり、武村式を用いるべきであり、その場合は、少なくとも現状の約2倍の規模のものを想定しなければならないことになります。  

さらに、大飯原発差止訴訟における福井地裁判決において指摘されているように、2005年以降、全国の四つの原発で5回にわたり想定の地震動を超える地震が到来していることを考えれば、川内原発に想定を超える地震が来ないとの科学的な根拠に基づく想定は本来的に不可能であり、その意味で、原発においては、安全余裕は保証されていないと考えるべきです。

だからこそ、基準地震動は、想定しうる最大のものを使うべきです。

3.設備の老朽化が考慮されていない

先述した、福島原発作業員の木下聡さんは、次のような証言もされています。

「そもそも、運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった。重要器具は定期検査で交換するが、周辺の装置はそのままだ。追加、追加でどんどん配管を増やし、耐火構造にするために防火剤を塗りつけるから、重量は半端じゃなかった。設計基準を大幅に超えていたはずだ。建屋のコンクリートも相当劣化していた。インパクトドライバーを当てると分かる。ずぶずぶと刺さって、粉は真っ白。鉄筋をモルタルで塗り固めるときもクレーンで流し込むだけ。本来はバイブレーターを使うが、竹の棒で突っつくだけ。施工はひどいものだった。だから水素爆発で粉々に吹き飛んだ。」

適合性審査が、設備の老朽化を十分に考慮していないという問題は、2010年の福島県における福島第一原発3号機でのプルサーマル運転受け入れの技術連絡会においても存在していましたが、福島原発事故が3年4か月継続している中でなお、川内原発の審査において老朽化の問題を考慮しておらず、新品同様の設備という想定で審査がなされているということは、極めて大きな問題です。

川内原発1号機は、運転開始から30年を経過しており、高経年化技術評価が必要です。

九州電力は昨年12月に評価結果を提出していますが、審査は完了しておらず、新規制基準により再評価が必要とされている状況です。

この再評価結果を待たずに、審査書を確定するべきでないことは極めて当然といえます。  

また、2号機についても来年30年を迎えることから、現段階での技術評価が必要です。  

福島原発では、事故前に、地震や津波による危険性について、市民が警鐘を鳴らしていました。

その訴えを真摯に受け止め、対策をとるということを、東京電力も規制当局も行ってきませんでした。   

福島原発事故発生後初となる本審査において、上記のような過ちを繰り返さないという強い決意のもとに、厳正な審査をするべきであり、軽軽な再稼働の判断を決してしてはならないということを、福島原発事故被災者の1人として、強くお願いいたします。


【二通目のパブコメ】

耐震バックチェックなき審査合格は、ありえません。

今回の川内原発の審査対象のうちのひとつ、「工事計画認可申請」は、そのほとんどが既設の原発が地震に耐えられるかを確認する、耐震バックチェックです。

基準地震動が15%アップしたことによって、九州電力は耐震計算を現在やりなおしている最中であり、九電自身が8月5日に明らかにしたところによれば、再計算し、「工事計画認可申請」を新たに提出するのにはこれからまだ1~2ケ月かかるとのことです。

これに伴い、耐震補強工事も必要になってくるでしょう。

つまり、今回パブリックコメントにかけられている規制委員会の審査案は、この工事認可の再申請を待たずに作成されていることになり、耐震性について全くの見込み審査となっています。

このような段階で、審査書を作り、パブリックコメントを募集するということは、未提出の申請書を、一方的に合格見込みとして、再稼働へ向けて進んでいるということであり、福島原発の過酷事故の最中、厳しい規制を行っていくべき原子力規制庁としてあるまじき姿勢だと思います。

原子力規制委員会のHPには、組織の理念として、次のように書かれています。

「原子力規制委員会は、2011年3月11日に発生した東京電力福島原子力発電所事故の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために、そして、我が国の原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置された」。

その、原子力規制委員会が、このように前のめりの審査とパブコメ募集の手順を踏んでよいのでしょうか?

九州電力が耐震性を確認し申請書を再提出してから、審査およびパブリックコメント募集をやり直すべきです。 


もう一度、〆切は8月15日(金)。どうぞお早目に。

パブコメの〆切は8月15日(金)。まだであれば、ぜひ、出しましょう。

出した方も、福島のお母さんの書いたパブコメをご覧になって、新たに気づいた点があれば、再度、いかがですか?
提出方法などは、こちらのブログをご覧ください。


 

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