こんにちは。

ネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留基準を緩和しないで、と訴える署名12,739筆とメッセージを、今日農林水産省にも提出してきました。

また、この基準緩和に関して厚生労働省が募集し、1657件あつまったパブリックコメントをグリーンピースが情報開示請求を行って入手したところ、ミツバチへの影響を心配する意見も多かったことから、このパブリックコメントの写しも農林水産省に提出しました。

パブコメの内容は、基準緩和への反対が1656、賛成はただ1件でした。

 

写真:グリーンピース・ジャパンの事務局長佐藤潤一が農林水産省の農産安全管理課長朝倉さんに署名と要請書を手渡しました。

 

そもそも、この残留基準の引き上げは、クロチアニジンの製造メーカーである住友化学が、農林水産省に残留基準の緩和の申請したことに始まっています。そして申請を受けて農林水産省が厚生労働省に緩和の依頼を出し、厚生労働省の残留基準の検討が行われているという現状です。農林水産省は農薬の登録・使用全般にも責任を負っています。

このため、今日は残留基準の緩和について農林水産省の手続きや考え方について明確にし、問題を議論するため、グリーンピースは3団体のNGO(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、反農薬東京グループ、ネオニコチノイド系農薬中止を求めるネットワーク)とともに交渉も行いました。

 

交渉の中でわかってきた主な問題をご報告します。

 

★    自作自演

厚生労働省が発表してパブコメ募集をした基準案では、たとえばほうれん草には40ppmという高い残留濃度が提案されています。

こうした数字は、農林水産省から基準緩和の依頼を受けて、残留基準を担当する厚生労働省が案を作ったといわれてきましたが、実は、厚生労働省ではなく、農林水産省がメーカーからの申請を受けて作ったということが、今日の交渉でわかりました。

 

★  ブラックボックス

わたしたちは、どのようなデータに基づいて残留基準が決まるのか、その農薬の毒性その他の性質はどういうものなのかを知るために、農薬の試験データを見せてくださいと事前に依頼していました。しかし、それはメーカーの情報なので見せられない、情報公開請求してもどれくらい公開できるかわからないということでした。また、農薬の登録や使用拡大、残留の引き上げなどの検討をする専門の部会も非公開。

全ての人の食品の安全性に関わる農薬の使用を決めるプロセスの透明性よりも、企業の秘密を守るという農林水産省の姿勢が明らかでした。

 

★  一方通行

農薬メーカーには、農薬の使用の範囲を広げたり残留基準の緩和をしたりするよう申請する手続きについて問題にしています。

では、消費者などが、農薬の使用範囲を小さくしたり、残留基準を減らしたりするためにはどういう手続きがあるのでしょうか?

これを訊いたところ。「ない」というのが回答でした。

さらに、残留農薬に関する専門の部会には消費者や市民団体、消費者団体が入っておらず、食という最も基本的な問題に対して対等な立場できる機会もない。

市民、消費者が歯止めをかける機能がなく、申請から許可まで、極めて一方通行になりやすい仕組み。これが、農薬大国日本を作り出した原因の一つではないでしょうか。

 

★  お店でほうれん草の茎の点々を見て選んだことがありますか..?

そもそも、残留基準の緩和はその必要があるから申請されるのだろうと考えられます。ではその必要性はどう検証されているのでしょうか?

農林水産省は、ほうれん草の残留基準の必要性を「収穫の前日に農薬散布しないとアブラムシがきて茎に黒いぽつぽつができ、商品価値が下がるから」と説明しました。

それでどれくらい商品価値が下がっているのか、確認したところ、そのようなデータは集めたことがなく、検証もしたことがない、という回答でした。必要性をそもそも検証していないのです。

食べる側は残留農薬でリスクがあるわけですから、農薬を使うかどうかは必要性の説明と検証がまずあるべきです。

 

★予防原則

クロチアニジンをはじめ、ネオニコチノイド系農薬では、予想以上にミツバチへの打撃が大きかったり、子どもの脳や神経などの発達への影響が大きいことがわかるなど、使用が広まってから、次々と問題が発覚しています。農薬に限らず化学物質ではこのように対策が後手に回るケースは後を絶ちません。

この反省に立ち、EUでは「予防原則」を重視し、まず暫定的に使用を規制し、その間(2年間)に試験や検討を進め、2年後に規制を続けるか、やめるか、強化するかを改めて判断するという手段をとりました。

こうした考えを農林水産省はどう思うのか、ききました。農林水産省の朝倉課長は、「リスク評価とリスク管理をやっています」というばかりで、予防原則についてどう考えるのかとうとう明確に回答できませんでした。

農林水産省は予防原則に反論する方法を考える前に、予防原則を理解するための勉強が必要です。

 

★  やっぱり市民の声

2月に決定されるといわれていたクロチアニジンの残留基準の発表は、いま、止まっています。

今回、同席してくださった食品安全委員会の方によると、クロチアニジンの残留基準に必要な検討をさらに行うため、近く厚生労働省から食品安全員会へ諮問がある予定とのことでした。

過去、農薬の残留基準がパブコメ募集の段階まできてとまった例はないそうです(今回ご一緒した反農薬東京グループによる)といいます。

1657件のパブコメの意見や、12,739筆の署名やメッセージ。ツイートやフェイスブックのシェアや「いいね」。こうした一人一人の、たくさんの注目や声が力になって、今理不尽な残留基準を止めています。

このまま止め続けるために、そして農薬を使う意味をもう一度、生産者の方と一緒に考えていくために、息長く一緒に活動をつづけましょう。

本日提出した要請書  

厚生労働省から開示された1657件のパブリックコメント

厚生労働省への提出(2月18日)の報告ブログ

 

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