海洋生態系問題担当の花岡です。

グリーンピースが昨日発表した海藻調査の暫定結果が、今朝(5月13日)の朝日新聞に掲載されました。この調査のためのサンプリングは、領海外では調査船「虹の戦士号」を用いて、また沿岸域では陸をベースとしたチームが、宮城県本吉町日門港から千葉県銚子市銚子港までの沿岸(警戒区域を除く)を縦断して、実施したものです。

訪れた漁港や海岸では、漁師さん、サーファー、建設調査ダイバー、趣味で釣りをする方など、海を愛するたくさんの方々にお会いしました。

「もしも高い数値が出たら漁業再開どころではなくなってしまう……」お話をした方々が抱く根強い不安は、皆共通しているものでした。ただ「漁業再開のためにも、風評被害を断ち切るためにも、獲る魚の安全性をはっきりさせなくてはいけない。より詳細な海洋調査は避けて通れない」との理解も、共通していました。

私たちの調査の趣旨を説明すると、多くの方々が、船を海に出してくださったり、冷たい海に膝まで浸かってくださったり、タンクを担いで潜ってくださったり、夜遅くに自宅や仕事場に招待してくださったりして、サンプルを採取して私たちに提供してくださりました。

自分の家も船も失い避難所で生活する55歳の漁師さんは、再三の要求にもかかわらず県や国が十分な海洋調査を行わないことに憤慨していました。知人から漁船を借りて海に出てサンプルを採取してくださりました。

サンプリングにご協力いただいた「震災後初めて海に出る」というサーファーの方々は、変わり果てた地形や海の色に、がっくりと肩を落としていました。「早くまた波に乗りたくてウズウズしている」「これまでぬるま湯につかっていた。ここからは俺たちの世代が何とかしなくては」「この海をもう一度仲間が集まる海にしたい」といった想いをたくさん受け取りました。

「いつまでたっても県は動かないから、明日海に出て、魚を獲って、保健所に送りつけてやろうと思っているんだ。でも代わりにお前たちに渡すから、調べてくれ」と言う小型船のオーナーは、「調査結果はよくても悪くてもどんどん公表してくれ。お前たちみたいなのがどんどん声を発してくれなくては、ここでの漁業の先は見えてこない」と熱く語ってくださりました。

遊漁船に乗っていたお客さんも、船を降りると岸で待つ私に、「これも調べて」と次々とご自身のクーラーボックスから魚をとりだし、譲ってくださりました。

私たちのチームはサンプリングを終え東京に戻った後、ご協力いただいた方々に感謝と近況報告の連絡をしました。驚いたことに、私たちが各地を訪れた後に複数の場所で、「上」からの圧力がかかったことを伺いました。前出の漁師さんも「君たちにサンプルを渡したこと、あの後で上からいろいろ叩かれてね。あのときは来週もあげると言ったけど、もうあげられそうもない。狭い社会だから逆らうこともできなくてね……本当にすまん……」と、気力を失った小さな声。地域の漁協の役員をされている方も、「個人的にはどんどん調査して発表してほしい。個人的にはね……」と、言葉少なげでした。

実際に海に出て生計を立てる漁師さんたちには、多大な被害の中でも踏ん張り、前を向いて、覚悟を決めていらっしゃる方々がたくさんいらっしゃいます。地域の漁業を管轄する都道府県や政府、そして東京電力は、この重い気持ちに向き合っていただきたく思います。私たちのようなNGOによる調査の妨害を中止することはもちろんですが、まずは第一に、政府が海洋調査の強化と漁業者や消費者の安全性の確保、そして漁業者への賠償をしてほしいです。