こんにちは、エネルギー・核問題を担当している鈴木かずえです。


このところ、福島県福島市の大気中の放射線量は、文部科学省の発表でも毎時1.5マイクロシーベルト前後で推移しています。

毎時0.6マイクロシーベルト以上の放射線が計測される場所は、「放射線管理区域」として、みだりに立ち入ってはならない場所です。

また、福島市内のそこここに数十マイクロシーベルト以上の場所が散在することは、以前ブログ「子どもや妊婦は、避難を」でご報告した通りです。

原子力利用を守る立場の国際機関である国際放射線防護委員会(ICRP)は、
「すべての被ばくは、経済的・社会的な要因を考慮しながら、合理的に達成できるかぎり低く(as low as reasonably achievable)保たなければならない」としています。

つまり、原子力を扱うものは、できる限り人に放射能を浴びさせないようにしなくてはいけませんよ、ということです。

その対策にかかるコストや、社会的影響も考えなければならないけれども、と。

そしてICRPは、公衆の被ばく限度を年間1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト=1ミリシーベルト)と定めています。

これが、放射線防護の国際的合意です。

ところが、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーである長崎大学教授の山下俊一氏は、
こうした国際合意とは違う意見をお持ちです。


山下氏は福島第一原発の事故以降、3月21日の福島県内の講演で下記のように述べています。、

「100ミリシーベルトは大丈夫。毎時10マイクロシーベルト以下なら外で遊んでも大丈夫」

「科学的に言うと、環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、全く健康に影響及ぼしません。ですから、もう、5とか、10とか、20とかいうレベルで外に出ていいかどうかということは明確です。」(※上記の100マイクロシーベルト/hについては福島県ホームページ上で「10マイクロシーベルト/h」に訂正されています。)

3月21日、福島市の講演より



5月3日の福島県二本松市での講演では、

「私は、みなさんの基準を作る人間ではありません。みなさんへ基準を提示したのは国です。私は日本国民の一人として国の指針に従う義務があります。科学者としては、100ミリシーベルト以下では発ガンリスクは証明できないが、不安を持って将来を悲観するよりも、今、安心して、安全だと思って活動しなさいととずっと言い続けました。ですから、今でも、100ミリシーベルトの積算線量で、リスクがあるとは思っていません。これは日本の国が決めたことです。」
5月3日、二本松市での講演より


また、山下氏らが監修した福島市の広報誌「ふくしま市政だより」(4月21日発行)では、結婚したばかりの方の出産に問題はないかとの質問に対し、「100ミリグレイを下回る被ばくであれば、生まれてくる赤ちゃんについて心配の必要はありません。※ヨウ素131やセシウム137が放射線【β(ベータ)線、γ(ガンマ)線】の場合、1ミリグレイ=1ミリシーベルトとなります。」としています。
ふくしま市政だより


山下俊一氏の発言については、さまざまな動画がWEB上にアップされています。ぜひ、検索してご覧になってみてください。


グリーンピース・ジャパンでは「福島の子どもを守る署名」を集めています。
署名項目の中に、「3. 低線量被ばくのリスクを軽視する山下俊一・長崎大学教授を、現在の福島県の放射線リスク・アドバイザーおよび県民健康管理調査検討委員会から解任すること。」が入っています。

署名の詳細は「福島の子どもたちを守る署名」第3弾にご協力を」をご覧ください。