シリーズ第1回:海の現状について

シリーズ第2回:漁業現場で起きていること

シリーズ第3回:資源管理

シリーズ第4回:ラベル表示でどこまで分かる?①

シリーズ第5回:ラベル表示でどこまで分かる?②

シリーズ第6回:私たちにできること

 

こんにちは、海洋生態系担当の田中です。

お店で魚を買うときに「この魚はどこでどのように獲られ、どのように店頭に並んだのだろう。」と疑問に思ったことはありますか?このシリーズでは、水産資源がどんどん減っている海の現状と、その大きな原因は獲りすぎであることをお伝えしてきました。

 前回は、私たちが魚を購入するときに、その魚の情報を得る唯一の手段であるラベル表示が私たちにどんな情報を提供してくれているのかについてお伝えしました。今回は、その続きのお話です。

ラベル表示③:養殖

生鮮品の場合、養殖されたものには「養殖」と表示することが義務付けられています。(ここで表示義務があるものは餌を与えるものに限られているため、餌を与えず養殖する貝類などは対象外です。)

養殖は、孵化から次の世代の誕生までのサイクルを一貫して行う完全養殖と、稚魚などの種苗を天然資源から調達して成長させるものに分かれます。たとえば、現在、日本で消費されているウナギの99%以上は養殖ウナギだといわれていますが、ウナギの完全養殖はまだまだ難しいため、天然のシラスウナギ(ウナギの子ども)を獲ってきて、大人になるまで育ててから供給されます。ところが、養殖ものの原産地は「育成期間の最も長い養殖地」のことを指しており、その種苗の産地については表示義務がありません。「国産 ウナギ 養殖」として販売されているものでも、天然のシラスウナギが獲られ、輸入されて日本の養殖地で育てられたものである可能性があるのです。私たちはそれがどこで獲られ、どういった流通経路を辿ったのか知ることができません。

参考)農林水産省:http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/kyodo_no23_shiryo_4.pdf

 

ラベル表示④:加工品

水産品の加工品といえば何が思いつくでしょう。缶詰、かまぼこ、かつおぶし・・私たちにとって水産加工品はとても身近な食材です。

飲食料品の品質表示について定めているJAS法によって指定された一部の加工食品は、主な原材料の原産地を記載することが義務付けられており、天然の水産資源を利用する場合、漁獲水域又は、水揚げした港名か属する都道府県名を表示します。 (この問題点についてはシリーズ第4回をご参照ください。) ただし、生鮮品とは異なり、加工品の場合は「国産」という表示だけで済ませてしまうことも可能です。さらに、輸入品に関しては、原料原産地の表示義務がありません。輸入品に表示が義務付けられている「原産国名」とは、食品が最終的に加工された国の名前を指します。たとえば原産国名がタイであるツナ缶の場合、「どこかで獲ってきたマグロをタイの工場で最終加工して日本に輸入した」という情報しか私たちに与えてくれません。

ところで、一種類のお刺身は「生鮮品」、二種類以上のお刺身を盛り合わせにすると「加工品」になることをご存知でしょうか。切り身やミンチなど、単に切断したものは生鮮品扱いになりますが、2種類以上の異種を混合したものは加工品扱いになります。(ちなみに、たとえばキハダマグロとメバチマグロの盛り合わせは、マグロという大枠で同種混合扱いの生鮮品になります。)

いろいろな味を楽しめるお刺身盛り合わせは、加工品です。加工品は、重量で製品の50%を占める原材料がない場合、原料原産地の表示義務がありません。お刺身盛り合わせはほとんどの場合、表示義務の対象外です。

参考)消費者庁:http://www.caa.go.jp/jas/hyoji/pdf/kijun_02_120611.pdf

       農林水産省:http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/kyodo_no2_shiryo_2.pdf

 

お店で手にとった魚が「どこでどのように獲られ、どうやって店頭に並んだのか」につい知りたいと思っても私たちが知ることができる情報はほんのわずかです。私たち消費者が「持続可能に獲られた魚を買いたい」と思っても、現在の食品ラベル表示のルールでは、選んで買うために十分な情報を得ることが出来ません。次の世代に魚を残してくためには、今、私たちが魚を選んで買うことができるようにシステムを変えていく必要があるのです。

次回は、シリーズ最終回、「トレーサビリティ」のお話です。

 

海の現状と問題は、まだ多くの人に知られていません。手遅れになる前に一人ひとりができることをしていくために、海の問題を周りの方に広めてください。わかりやすく海の現状を説明しているリーフレットを無料でお届けします。

お申し込みはこちらから

 

スーパーマーケットに「魚を選んで買えるように十分な情報を提供してください」という消費者の声を届けてください。オンライン署名はこちら