こんにちは。子どもたちの海と食卓に魚を残すグリーンピースの「SUSTAINABLE SEAFOOD PROJECT」、略して「SU-SEA(スシ)プロジェクト」、リーダーの花岡和佳男です。 

このたび、スーパーマーケット業界最大手のイオンが、グリーンピースとの話し合いの過程で多くの消費者の声を受ける形で、「持続可能な調達原則」を発表しました。完璧とはとても言えないものですが、そのイニシアチブに「いいね!」です。詳しくはこちらをご覧ください

今回のブログは、グリーンピースの企業への働きかけと、イオンの「持続可能な調達原則」が持つ影響力について。

 

大企業シフトが、問題解決への最短ルート

グリーンピースは、環境問題を解決するための大企業の役割を重視しています。それは、より複雑化する環境問題において政府や国際機関が動くことよりも、企業が動くことの方がより早く、実質的な効果をもたらすという理由からです。

放射能汚染問題がいい例です。2011年に政府が企業の顔色を見ながら暫定規制値500Bq/Kgの基準を下げることにもたついている間に、複数の主要スーパーが、グリーンピース等のNGOや多くの消費者の需要を受けて、政府よりも厳しい自主基準を設け、それぞれのサプライチェーンに対応強化を働きかけました。まずは市場が動くことで、その過程で、行政も対応を進めるようになりました(まだまだ不十分ですが)。

乱獲の問題も同じです。現在世界の漁業は持続可能なレベルの2.5倍の規模で行われていると言われています。ウナギやマグロに代表されるように次々と資源量が激減しているにもかかわらず、政府や国際機関による資源管理や漁業規制はあまりに緩く、その強化は遅く、とても自然界から魚が消えるペースに追い付けていません。

世界規模の乱獲は一部の大企業によるもので、それにより大きな被害を受けているのはこれまで小規模に漁業を続けてきた漁師の方々です。このままでは漁業者は獲る魚を失い、スーパーや寿司屋などは売る魚を失い、和食はエッセンスである魚介類を失います。子どもたちの海と食卓に魚を残せなくなってしまいます。

だから、市場を変える。グリーンピースの「SU-SEA(スシ)プロジェクト(SU-SEA = SUSTAINABLE SEAFOOD)」は、和食に欠かせない豊富な魚介類を獲り続け食べ続けることを可能にするために、国内の食卓に並ぶ魚の約7割を薄利多売するスーパーマーケット業界の魚介類調達を、持続可能なものにシフトさせる活動です。

もちろん、1社だけを変えても社会を変える力にはなりません。横並び意識の強い日本のスーパーマーケット業界にとって、最大手が動くかどうかは非常に大きな要素。最大手が動くことにより、ライバル企業や業界団体が動き、さらにはサプライチェーンが動いていきます。

 

イオン「持続可能な調達原則」は、企業間競争の幕開け

イオンがこのたび策定・発表した「持続可能な調達原則」は、まだまだ不十分。それでも、「違法漁業の排除」、「漁業資源枯渇の防止」、「トレーサビリティの確立」等、グリーンピースが求めてきた要素が多く明記されており、スーパー業界が持続可能性の追及へと舵を切る始まりとして、またサプライチェーン全体に影響を与えるものとして、高く評価できます。

海に残っている魚はもう多くありません。今回、スーパー業界の最大手であるイオンがようやく踏み出したこの一歩は、シーフードビジネスに携わるライバル企業、業界団体、そしてサプライチェーン各社が、魚介類を持続可能に調達する手段を探り作る競争の、スタートの合図です。

グリーンピースの「スシ・プロジェクト」が各社に求めているのは、「持続可能な魚介類の調達方針」の策定・公表・実施です。そのために私たちは、直接交渉と並行して、多くの消費者の面前で、主要スーパーが持続可能性確保に向けた取り組みを競争し合う仕組みを構築・展開しています。この度イオンが動いたことは、このプロジェクト展開のマイルストーンのひとつです。

グリーンピースが各社に策定を求める「持続可能な魚介類の調達方針」には、以下三つの要素が含まれています。イオンの調達原則・方針が早くこのスタンダートになるように、また他社もこのレベルの調達方針を策定するように、今後も働きかけを続けていきます。

  • 絶滅危惧種や乱獲された魚の取り扱いを避ける
  • 十分な資源管理がされた魚を積極的に取り扱う
  • サプライチェーンや行政などに働きかけ、十分な資源管理がされた魚の数を増やす

 

消費者パワーで、スーパーが変わる

この度のイオンのシフトも見ても明らかなように、スーパーマーケット業界を育て、子どもたちの海と食卓に魚を残すことができるのは、私たち消費者です。その大きな力を使いましょう。やり方は簡単。効果は、数が集まれば、絶大です。

1.普段食べる魚を「持続可能性」で選ぶ

  • 海洋生態系と一緒に、漁業や魚食も次の世代に残してくことが大切です。解決策は「魚を一切食べないこと」ではなく、正しく選んで消費すること。価格、鮮度、安全性等に加えて、「絶滅危惧種や乱獲された魚は買わない」「十分な資源管理がされた魚を買う」等の項目を、ご自身の魚の選択基準に加えましょう。スーパーで魚を選ぶときに「どの魚ならいま食べても大丈夫?」と悩んだら、日本初の、持続可能性や環境負荷を考慮したお魚選びができる「グリーンお買い物ガイド・お魚編」を使ってお買い物をしてください。もちろん無料でダウンロードいただけます。客が何を求めていて何を求めていないのか、購買によってスーパーに伝えましょう。

2.変わってほしい、応援したいスーパーに、声を届ける

  • 調達原則を公表し消費者に「持続可能性を大切にした調達をしていきます」という約束をしたイオンに対しては、きちんとその約束を果たしているかを確認するために、その他のスーパーには、約束をしてもらうように、みなさんが普段使うスーパーや変わってほしいお店に、客が何を求めていて何を求めていないのかを伝え、企業の成長を応援しましょう。グリーンピースは大手スーパーや業界団体に「持続可能で安全な魚を売ってほしい」という「消費者の声」を届けるプロジェクトを展開中。今回イオンを変えた「消費者の声」の力をもっと大きなものにしていきましょう。ぜひご参加ください!

「お魚スーパーマーケット・ランキング」の続編は、2014年末に作成・発表する予定です。この1年間で各社は消費者の声にどのように応え、どのような取り組み強化をするでしょうか、みなさん、ご注目ください!各社が大きな一歩を踏み出すように、この活動に参加してください!! 一緒に子どもたちの海と食卓に魚を残しましょう。

活動に参加

Blog posted by: 花岡和佳男