こんにちは。
<1>パブコメ募集中
いま、新たなネオニコチノイド系農薬の審査が始まっていて、パブコメが募集されています。締切は6月12日17時です。グリーンピースも出しました(下記<3>をご覧ください)
それはスルホキサフロル、という名前のネオニコ系農薬についてです。
これは、アメリカのダウ・アグロサイエンス社(以下DAS社)が開発した殺虫剤で、DAS社自身による研究でも「ハチに対して毒性が非常に高い」とされています。アメリカでも養蜂家やグリーンピース・アメリカを含む環境保護団体が使用に反対してきました*1。
この農薬が日本でも登録のための審査がすすんでいます(下の図の赤い楕円で囲んだところに来ています)。そしていまパブリックコメントが募集されています。
意見を求められているのは、「スルホキサフロルに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)」という技術的な文書です。これをもとに、スルホキサ フロルというネオニコチノイド系農薬の残留基準が作られ、最終的に農薬登録(新たに使えるようになる)が決まっていくというものです。
グリーンピースは、次のような理由でこの案も、審査のプロセスも進めるべきではないと考えています:
グリーンピースが新たなネオニコチノイド系農薬農薬の登録に反対する5つの理由
1.消費者の保護の立場から審査、検証する場がありません。
今の農薬登録の仕組みの中では、消費者が農薬メーカーと対等に意見を言える場がありません。消費者を守る立場である消費者庁も、農薬の審査に関わっていますが、その役割について「事故がおきたらその情報を厚生労働省に提供するのが仕事です」(消費者庁の5月12日の交渉の際の回答)との認識しかなく、消費者は保護されていないのです。
2.農薬の毒性などの情報が公開されていません。
農薬の登録申請の時にメーカーから農林水産省に提出される情報のすべてが、一般に公開されているわけではありません。毒性試験についても、結果の概要は公開されていても試験のやりかたなどは、公開されているわけではありません。
3.その農薬を使う必要性が全く検証されていません。
この新しい農薬はなぜ必要なのでしょうか?農林水産省は「農薬散布しないと(虫食いなどで見た目が悪くなり)商品価値が下がるから」と説明しています。でお、それによってどれくらい商品価値が下がっているのか、農薬を使うことでどれくらい変わるのかを確認するデータはまったく集めていないそうです。
残留農薬が増えることは、子どもを含む消費者にとってはリスクが高くなることなのですから、どちらをどれくらい優先するのか、消費者の意見を充分聞いて、検証する場が保証されていなければなりません。
4.同じネオニコチノイド系農薬が再審議中です。
ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンの残留基準の緩和案が出されてから、市民からのたくさんのパブコメや署名、そして科学的な新情報やEUの動きがあり、異例の再審議(差し戻し)になっています。先に同じ食品安全委員会が評価した同じ系統の農薬が再審議になっているところなのですから、新しい農薬の登録評価には慎重にし、クロチアニジンの評価の経過を待つべきです。
5.急性毒性からみた摂取限度の目安(ARfD)が検討されていません。
クロチアニジンが再審議になった他の理由の一つは、急性毒性に着目した摂取限度の目安(急性参照用量:ARfD)の検討が必要だと判断されたこと。でも、今回食品安全委員会がパブコメ募集している「食品健康影響評価に関する審議結果(案)」には、このスルホキサフロルのARfD)の検討に相当するものはありません。食品安全委員会によると、ARfDは4月から検討を始めるものが対象で、スルホキサフロルはそれ以前に検討を始めていたので、ない。とのこと。クロチアニジンも、4月より前から検討されていて、ARfDのために食品安全委員会に差し戻しになっているのですから、スルホキサフロルについても検討すべきです。
パブコメの締切は6月12日17時です。
みなさんも、おかしいと感じることがあれば、ひとことでも是非意見を送ってください。
電子メールでの送り先はこちらです。
https://form.cao.go.jp/shokuhin/opinion-0615.html
FAXの場合は03-3584-7391へ
<2> もう一つの道を進もう
つぎつぎに市場出てきて、様々な作物に使われている農薬
見た目がきれいな作物を大量生産するのに最適、というのがその大きな理由の一つでしょう。
でも、その先には何があるのでしょうか。
107年前の今日、生誕したレイチェル・カーソンは、農薬について警鐘を鳴らしてくれた名著「沈黙の春」(1962年)の中で、当時と同じような岐路にたつ私達に、もう一つの道があることを語りかけてくれています。
「私たちは、いま分れ道に立っている。――長いあいだ旅をしてきた道は、超スピードで疾駆できる快適なハイウェイだが、それはまやかしに過 ぎず、行く手には災いが待っている。もう一つの道は、あまり“人の通わぬ”道だけれど、この道を行くときにこそ、私たちの住むこの地球を守る、最後の、唯 一のチャンスがあるのだ」(「沈黙の春」最終章冒頭より)
<3>[追記] グリーンピースのパブコメを提出しました。
冒頭の、新たなネオニコチノイド系農薬のパブコメ募集に、対して6月12日にグリーンピースのパブコメを提出しました。
1)スルホキサフロルの「食品健康影響評価に関する審議結果(案)」では、ARfDが検討されていない。食品安全委員会によると、ARfDは4月から検討を始めるものが対象となっているから、それ以前に検討の始まったスルホキサフロルではARfDは検討していない、と、対象外であるかのような説明だが、同じネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンも、4月より前から検討されていて、ARfDのために食品安全委員会にで再審査しているのであるから、スルホキサフロルについても検討すべきである。
2)農薬登録の申請を受けて農林水産省が基準設定を依頼し、そのプロセスの一環として食品安全委員会の評価書作成と今回のパブリックコメントがあるが、農林水産省から食品安全委員会、厚生労働省までのいずれでも、環境影響やミツバチへ被害の可能性に関してパブリックコメントの機会が設定されていない。最初の農林水産省の段階で、パブリックコメントを経てから食品安全委員会の評価を行うべきである。
3)農薬の登録申請の時にメーカーから農林水産省に提出される情報のすべてが一般に公開されているわけではなく、たとえば毒性試験についても、試験の方法が公開されているわけではない。このように今の農薬登録の仕組みの中では、消費者と農薬メーカーとの間には大きな情報格差があるにもかかわらず、消費者を守る立場である消費者庁はその役割について「事故がおきたらその情報を厚生労働省に提供するのが仕事」との認識しかなく、消費者は保護されていない。情報公開と消費者の保護が確保されていない現状で新たな農薬登録の手続きを進めていくべきではない。
4)新しい農薬はなぜ必要なのか、検証がなされていない。農林水産省は「農薬散布しないと(虫食いなどで見た目が悪くなり)商品価値が下がるから」と説明しているが、具体的に、商品価値がどれくらい下がり、当該農薬を使うことでどれくらい上がり得るかを確認するデータはない。残留農薬が増えることは、子どもを含む消費者にとってはリスクが高くなることであるから、毒性評価だけでなく、効果の検証がなければならない。
*1 アメリカでも昨年5月に農薬登録されてしまいました。
<関連ブログ>
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