みなさんこんにちは。
先日のブログでは、米国がミツバチ保護に向けて動き出したことをお伝えしましたが、一方、いま日本のミツバチたちの被害はどうなっているのでしょう。
■日本のミツバチの現状は?
農林水産省が6月20日、ミツバチ被害の調査の中間報告を発表しました。この調査は今後、ミツバチの減少が日本ではどうなっているか、ネオニコチノイド系農薬をはじめとする毒性の強い農薬との関連はどうか、を検討をするための重要なものです。でも、その調査の手法にも科学者や養蜂家から疑問の声が上がり始めています。
今日はそのことをご紹介しようと思うのですが、その前に一つクイズです。
この地図、何を表しているかわかりますか?(※ ミツバチの減った地域ではありません)
答えは、花粉の媒介による経済的な利益の大きい国。色が濃いほど、授粉のもたらす価値が高いことを意味します。そう、実は日本は、授粉のもたらす経済的価値が高い国の一つなのです。そんな、ミツバチを大切にするべき日本の状況はどうでしょうか。
■農林水産省の中間報告の概要
日本の農林水産省はまだやっと、ミツバチの被害に対する調査を始めたばかり。それでも6月20日に発表された中間報告ではすでに、ネオニコチノイド系農薬を含む農薬被害の可能性が指摘されています。
・2013年の5月30日~2014年の3/31の間に、養蜂家さんから都道府県を通じて農林水産省に集められた被害の情報をまとめたもの。
・69件の被害の事例が報告されており、そのうち90%が7月中旬から9月中旬に発生した。
・巣箱の入り口で1000匹以上のミツバチが死んでいたケースが57件。2000匹以上死んでいたのがこのうち21件、1万匹以上死んでいたケースもある。
・この被害の発生した場所の大半(61件)がお米の栽培されている田んぼだったため、農林水産省は、カメムシを殺すための殺虫剤が原因の可能性が考えられる。
・死んだミツバチから検出された農薬のうち、ネオニコチノイド系農薬3種類(クロチアニジン5件、イミダクロプリド1件、ジノテフラン1件)だったそうです。その他の農薬については農林水産省の中間報告「ミツバチ被害事例調査中間とりまとめ」注1)をご覧ください。
■農水省調査の問題点
でもこの調査には問題がある、と指摘する研究者や養蜂家さんもいます。その理由は
① 農薬が原因と判定しにくいような調査フローになっていること
② 大量死や大量消失でない場合、被害が農薬によるものだとみなされない場合もあること
<農林水産省の蜂蜜被害事例調査フロー(左)とその問題点>
また、ミツバチが繁殖して数が増えていくはずの季節になっても増えない、一度減った数が回復しない、という現象は今回の調査の対象になっていません。でも、こうした現象こそ、ネオニコチノイド系農薬が使われるようになってから起こってきた特徴、と指摘する養蜂家さんもいます。
このまま調査が進んでしまうと、ミツバチの被害が過小評価されたり、農薬が原因であっても農薬だと特定もされない場合がでてくる可能性があるのです。
■農水省がやるべきこと
今の中間報告だけを見ても、農薬の可能性が指摘されており、ネオニコチノイド系農薬も検出されています。
実際、養蜂家さんたちは、巣箱をどこに置くかという年間計画を年の初めに都道府県に提出することが定められていて、提出しているにも関わらず、こうした被害が出ているのです。現在の仕組みでは被害が防げていない証拠といえます。
また、国際自然保護連合(IUCN)が過去5年間に世界中で発表された800本の論文を精査して、ネオニコチノイド系農薬はこれまで予測されていたよりも深刻な影響を環境に与える恐れがある、と警告しています(注2)。
農林水産省の調査は来年いっぱい続く予定とされていますが、調査が終わるまで何もしないのではなく、被害の拡大を防ぎ、今わかっている科学的な根拠と、予防原則に基づいた行動をとるべきときです。
NPO法人民間稲作研究所(注3)代表の稲葉光國さんによると、無農薬・有機栽培を広めていけるだけの技術は確立しているそうです。あと必要なの無農薬・有機に転換したい・始めたい人へのサポートと、情報提供です。農林水産省は、農薬利用を一方的に進めるのではなく、そうしたところにこそ、強力な支援をするべきです。
注1) 農林水産省の中間報告「ミツバチ被害事例調査中間とりまとめ」 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/140620.html
注2)IUCNによる評価書概要(英語)
http://www.tfsp.info/wp-content/uploads/2014/06/WIA-Conclusions-summary.pdf
注3)NPO法人民間稲作研究所
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