こんにちは。海洋生態系を担当している花岡和佳男です。

スーパーマーケットは土用丑の日を間近に控え、ウナギの特設コーナーを設けるなど、今年も販売プロモーションを展開しています。パックされた加工商品のラベルには「うなぎ」としか記載されていないですが、実はウナギは世界に19種類いて、そのうちの「二ホンウナギ」「ヨーロッパウナギ」「アメリカウナギ」「ビカーラウナギ」という4種類が、食用として日本で流通されています。あなたが最近食べたウナギは、何ウナギでしょうか?

どのウナギも乱獲が問題視されていますが、特にヨーロッパウナギは、中国経由で日本に大量に輸入されてきた過程で個体数が激減し、IUCNによって「極めて絶滅の恐れが高い種」に指定されています。ワシントン条約の規制対象種でもあり、輸出に際しては許可証の発行が義務付けられ、輸入時には書類の確認などが必要とされています。

グリーンピースは、ヨーロッパウナギが、別種であるアメリカウナギとして中国から日本に渡り、国内のスーパーマーケットで売られた実態を突き止めました。今回の調査で問題が明らかになったウナギ商品は、DNA検査によりヨーロッパウナギであることが特定されましたが、書類上アメリカウナギとして貿易されたので、ワシントン条約上で必要な手続きを踏んでいないのです(アメリカウナギは現在ワシントン条約の対象種ではない)。

その調査結果を、昨日発表しました(詳しくはこちら)。

不正取引を水際で防ぐ役割を担う税関は、検査体制を「書類または現場で必要があると判断した場合」に抜き取り検査を行う場合があると説明しています。しかしどのような場合に「必要がある」と判断するのか、そのマニュアルは存在しないということでした。今回のヨーロッパウナギは書類上アメリカウナギとして姿を変え、「ざる状態」の税関の検査体制を、にゅるにゅると通り抜けてきたのです。

ワシントン条約は締約国に対し、対象種における貿易実績の同条約事務局への報告を課しているのですが、日本政府はヨーロッパウナギの不正取引を規制しきれておらず、つまり取引の実態把握もできていないのですから、同条約事務局に報告する内容は、実態と大きく異なる可能性があります。

このようなヨーロッパウナギ・ビジネスや不十分なその管理は、絶滅危惧種を保護するという同条約の精神を踏みにじるもの。グリーンピースは昨日、水産庁に対して、実態把握調査や貿易管理体制強化を求める要請書を提出しました。

 

ウナギを子どもたちにも残すために、私たち消費者ができること

土用の丑の日は、国内のウナギ年間消費の約40%が一日で消費される日、今年は7月29日です。二ホンウナギが絶滅危惧種に指定され、ヨーロッパウナギがワシントン条約による規制を潜って日本市場で流通されている実態約が明らかになった今年、みなさんはどのようにこの日を過ごしますか?少しウナギを我慢して、その代わりに、どうやって子どもたちに残していけるかを考えながら、「おさかな貯金」に参加してみませんか?

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