みなさんこんにちは。冬至を過ぎ、学校もお休み入り、年の瀬の雰囲気になってきました。

そんな折、農薬などの残留基準を審議している厚生労働省の部会(注1)では、ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンの食品への残留基準を決める検討が再開されました。グリーンピースの食と農業問題チームも傍聴に行ってきました。

この日(12月24日)の部会で出されたネオニコの残留基準の案には、委員の方からも思わず「ずば抜けて高い」(ほうれん草について)との意見が。

 

 

これまでの経過

このクロチアニジン、厚生労働省や農林水産省が食品への残留基準値を大幅に引き上げようとしていたため、2013年秋、市民から引き上げ反対のパブリックコメントが異例の1656件も出され、グリーンピースも皆さんの署名12,739筆を政府に届けて交渉するなど、問題点を追求してきました。

こうした市民の声を背景に、毒性についての新たな研究結果の検討や、短期間で大量に摂取して健康に影響がでる可能性の検討をするために、3月(2014年)に審議がいったん止まっていました。(注2)

24日の部会では、この審議が再開されたのです。

 

高い残留基準値、「ずば抜けて高い」委員も心配

この日の審議では、厚生労働省から、クロチアニジンの残留基準の引き上げがが明らかになりました。なんと、その案は審議が止まる前と同じ。

厚生労働省は、今回新たに、短期間に食べると推定される量(短期推定摂取量 ESTI)を食品ごと推定し、その量ならば、基準案にあるような濃度で農薬が残留していたとしても、急性の影響が出ないと推定される範囲(急性参照用量 ARfD)に収まるから残留基準の案は高いままでもいい、としました。

でも、この範囲(ARfD)自体、がEUで決めている値と比べて6倍も高いのです。安全側にたっているとはとても言えません。

特に、消費者が不安を感じていた、ほうれん草の40ppmという高い残留農薬基準も同じままでした。

 

 

これに対して、部会の委員の方からも

「ほうれん草の40ppmは、低濃度では効果は出ないものかと、心配」

「ほうれん草だけ高すぎる、ずば抜けて高い。ミツバチが死んでいるという報告もある。」

「効果のあるものに変えていかないといけないのでは」

 

といった意見が出たほどです。

それほど高いこの基準値案、しかし、この数値が変更されることはなく、部会報告書として了承されてしまいました。

 

このクロチアニジンをはじめ、ネオニコチノイド系農薬の使用が拡大すれば、ミツバチへの影響も大きくなります。

EUでは使用規制が始まって一年になるなど、世界はネオニコチノイド系農薬を使わない方向に行っているのに、甚だしい逆行です。

 

私たちが今できること

 

(1)パブコメが始まったら意見を書こう

間もなく、市民の意見を聞く「パブリックコメント」の募集が始まります。募集は、政府のパブリックコメント用サイト(注3)でも発表されますが、パブコメが始まったら、グリーンピースのブログやFacebookでもお知らせします(この基準案の問題も含めて)。

 

(2)今、緊急署名に参加しよう

ただ今、グリーンピースでは、クロチアニジンをはじめ、ネオニコ残留基準を緩和しないで、と求める署名を実施中。

このままでは、残留農薬の規制緩和に歯止めがかかりません。いまいちど、私たち消費者が声をあげる時です。

このバナーをクリックして署名ページへ。30秒でできます。

 

(注1)薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)

(注2)このかん、食品安全委員会で、毒性などの新たな研究結果や急性の影響の現れる量についての検討などが行われていました。

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/73117/blog/49992/

(注3)http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

 

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