こんにちは。エネルギー担当 関口です。昨日、鹿児島から戻って参りました。

鹿児島と言って目に浮かぶのはやはり桜島。私たちの滞在中にも、煙が上がるその姿を臨むことができました。そういえば、2月24日のNHKニュースでも「桜島の火山活動が活発になってきている」とありましたね。

 

(写真:噴煙を上げる桜島)

で なんで、鹿児島に行っていたかといいますと・・・ グリーンピース委託レポート『川内原発と火山灰のリスク』の発表と鹿児島県庁への申し入れのためでありました。レポートは、イギリス原子力規制局からも一目おかれる原子力コンサルタントのジョン・ラージ博士に委託して作成したもので、火山灰という切り口で川内原発の問題を取り上げています。

 

今日は、このレポートの気になる内容について、マモさんこと、わたくし関口が2回にわけて、分かりやすく解説いたします!

(写真:マモさんこと、わたくし関口です)

 

そもそも、火山灰の何が危険なの?

鹿児島では日常的に降っている火山灰。

でも原発に支障ないじゃない?と思われるあなた、実はそうではないのです。原発では電気を作っているものの、発電所で使う電気は敷地の外から送られてきています。いわゆる「外部電源」てやつです。外の送電施設や配電設備に、大量の火山灰が(特に雨と一緒に)降ったりすると、電気を通しやすくなり、ショートしたり電源が落ちやすくなったりする。場合によっては「外部電源喪失」がおこります。

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すると、非常用の発電機を使うことになります。発電所が停電してしまうと、炉心や使用済み核燃料プールを冷やすことができなくなり、原発はコントロール不能になってしまうこともあります。原発施設では、こういった時のため非常用発電機を用意しているのです。ところがっ!ラージ博士の分析では、火山灰のせいでこの非常用発電機が使えなくなる可能性があるというのです。

 (写真:桜島の火山灰)© Masaya Noda / Greenpeace

 

ここまで読んで「あれっ?非常用電源って・・・」と思ったあなた!

するどい。

非常用発電機が使えなくなって大変なことになったのを、私たちは覚えています。

 そう。東京電力・福島第一原発の放射能拡散事故です。あの時も、原子炉自体はなんとか停止できたものの、津波の影響で非常用発電機が使い物にならなくなりました。外部電源も非常用電源も使えなくなった原発はコントロール不能状態、放射能が拡散するという事態を引き起こしました。

 あの、原子炉建屋が吹き飛んだ瞬間の映像・・・忘れもしないあの時の怖い気持ち。私たちは、同じような事故が川内原発で起こりうる可能性を見過ごしていいのでしょうか?

 

なぜ非常用発電機が使えなくなる?

発電機はディーゼルエンジン

→ ディーゼルエンジンは空気を取り入れて燃料を燃やす

→ 空気取り入れ口には、機械が壊れないようフィルターが付けてある

→ そのフィルターが目詰まりを起こすとエンジン壊れる ← この目詰まりを起こすのが大量の火山灰!!  ということなのです。

 ラージ博士が挙げているアメリカの例では、とある火山の火口から220km離れた地点にある原発の非常用発電機に、「フィルター交換は2時間半ごとに1回」という目安を設けているそう。川内原発では、非常用発電機のフィルター交換のタイミング、どれくらい見積もってると思いますか?

 なんとなんと26時間半だそうです。いくら日本製が高性能だって、この見積もりはちょっと甘すぎに思います。

*ワシントン州のセントヘレンズ火山と、コロンビア原発

 

非常用発電機だけじゃない、川内原発の見積もりの甘さ

もうひとつ見積もりについての怖いはなし。

 原子力規制委員会の見方では、過去に桜島が大きく噴火した時の記録から見て、火山灰は多くて15cmくらい積もる程度。この量であれば、原発のいろいろな建物は十分耐えられる構造になっていると。

ところがラージ博士によれば、もし風向きが原発よりだったとしたら、30cmは積もる計算になるのです。「十分耐えられる構造」は「積もるのは15cmまで」が前提ですよね?前提を超えた事態が起こった時に一番ヤバそうな建物、なんだと思います?それは『燃料取扱建屋』です。

 

燃料取扱建屋の不都合な真実

川内原発には、現在使用済み核燃料が890トンも保管されているそうです。(これは、福島第一原発にあった量の2倍だそう)この燃料が入っている建物こそが「燃料取扱建屋」。

 試算では、この建屋の屋根に30cm積もったら、火山灰の重みで崩壊しかねないという数字がでています。安全マージンギリギリアウトなこの感じ、なんとかならんのでしょうか?

 

(写真:平屋根構造が並ぶ川内原発建屋の景観)© Masaya Noda / Greenpeace

 これ以外にも積もった灰除去についての見積もりなど、川内原発の火山灰対応の心配な点がレポートに挙げられています。ラージ博士は、国際原子力機関(IAEA)やアメリカ原子力規制委員会の取り組みと比べてみても、日本の原子力規制委員会や九州電力の対応はかなり不十分だとの結論に達しています。 

日本の原発の規制基準について、「世界最高水準の安全性」と豪語する安倍首相ですが、とんでもない認識の甘さです。これでまた事故が起こった際に「想定外の災害でした」なんていうコメント、私はもう聞きたくないです。 

【2015年8月7日追記】

8月5日の水曜日、原子力規制委員会は、抗議活動を地元の声、そして全国から脱原発を望む声を無視して、九州電力の川内原発再稼働の審査を終了し、11日にも再稼働されると発表されました。

今週末から、わたしも鹿児島入りして、地元の皆さん、全国から集まったみなさんと一緒に抗議活動に参加し、プロのカメラマンとともに情報を世界に発信していきます。あなたも署名の一筆で、地元をバックアップしてください!あなたの声を鹿児島県知事にも届けます!

P.S. ラージ博士が言う「IAEAやアメリカの取り組みと比べても日本はかなり不十分」について詳しくお伝えしている

〜マモさんの、はじめてでも分かる川内原発の火山灰問題(その2)〜

は、こちらから