こんばんは。海洋生態系担当の小松原です。

相も変わらずテーマはマグロですが、今日は日本の近くを離れ、遥か遠く太平洋の南側で起きていることをお伝えします。ナビゲートしてくれるのは、私たちオーシャンチームのシンボルでもあるグリーンピースの船の一隻、虹の戦士号と私の同僚のクルーたち。彼女らは、7月31日にニュージーランドのオークランドを出発し、今この瞬間も太平洋を航行中です!

世界最大かつ最深の海、太平洋は世界最大のマグロ漁場でもあります。今回が6度目となるマグロツアーでは、違法漁業や強制労働など、私たちが美味しくいただくマグロを取り巻く知られざる問題に光をあてることです。

 

あなたのお魚の出身地、知ってますか?

 スーパーなどの野菜コーナーでは、「このニンジンは地元農家の○○さんが作っています」なんてポップを目にしますよね。では魚はどうでしょう?どこの海で、誰にどんな方法で獲られたものか知っていますか?

魚が獲られてから、私たちの手元に届くまでの旅路を分かるようにすることをトレーサビリティと言いますが、私たちの安心のためだけでなく、お魚や遠く離れた国の漁師さん達にとっても非常に大切なものなんです。例えば、ツナ缶などの加工品になれば、その旅路をたどることが果てしなく難しそうなことは、簡単に想像がつきますよね?

太平洋では、毎日3000を超える船が漁をしています。先日、事務局長のクミ・ナイドゥもブログでお伝えしているように、決められた量を超えて獲ったり、お目当のマグロを効率よく獲るために100kmを超える長い縄に針を無数に仕掛け、関係のない魚や絶滅危惧種のサメなどまでを見境なく一緒くたに獲る「違法漁業」、まるで奴隷のように乗組員を過酷な状況で長時間・長期間働かせ続ける「強制労働」などが、監視の目がない遠く離れた洋上では、日々繰り広げられています。

昨日食べたマグロが、遠く離れた海で違法に獲られ、誰かの人生を犠牲にしたものだったとしたら、考えただけでも怖いですよね。でも事実、今のマグロ漁にはこういった問題が隠されています。遠く離れた日本には関係ないとも言い切れません。なぜなら、例えば太平洋で行われるビンナガマグロ漁の多くはアジア諸国の船によるもので、もちろん日本の船もいますし、私たち日本は言わずと知れたマグロの大消費国家ですから。

こういう方法で獲っていては、少しずつ、でも確実に太平洋を空にしてしまいます。実際に、商業的漁業が始まる前と比べて、メバチマグロは18%、キハダマグロは38%、太平洋クロマグロは3.6%までに減ってしまっています。カツオも今のまま獲っていれば、マグロたちの後を追うことになるのは明らか。

それは、漁業そのものが滅びの一途を辿っているということでもあります。ビッグビジネスのマグロ漁は海の生態系だけでなく、太平洋に浮ぶ小さな島国に住む人たちの暮らしをも深刻な状況に追いやっています。私たち遠くの国々の住人が見境なく獲ってしまうことは、彼らの主なタンパク源を、また唯一とも言える職業までを奪ってしまっていることに他ならないのです。 

これが、私たちグリーンピースがマグロにまつわる問題をこんなにも深刻視している理由です。マグロ漁のあり方を、海にも人にも優しいものに変える必要があります。その時は今。

虹の戦士号のクルーたちは、洋上で出遭った船に許可をもらい、何の魚をどういう方法で、どれだけ獲っているのか、船員の労働環境は適切なものか等を調査しています。過去の航行でも、違法漁業の現場を見つけ、当該国政府や管理機関などと連携をして解決に導いてきました。今日までの航行で何を目にしてきたか、また違法漁業や強制労働について、また別の機会に詳しくお伝えします。

このとてつもなく複雑で巨大なマグロ産業に大変革をもたらすには、みなさんの力がどうしても必要です。この問題を知って伝えてほしい。私たち一人一人は誰もが消費者です。海の上での規制だけでなく、私たちがいつも魚を買うお店もエコな魚を選ぶ仕組み、「調達方針」を持つことが必要です。あなたが買う魚がどこから来たか知っていますか?いつものお店に聞いてみましょう。

 

日本の海の太平洋クロマグロもピンチ!

世界各国から来た3000隻以上もの船が争奪戦を繰り広げている広大な太平洋と比べれば、日本の領海は小さなもの。それでも、太平洋クロマグロは息も絶え絶えです。私たち日本のオーシャンチームは、日本の市場に並ぶ全ての魚が、海にも人にも優しいエコな方法で獲られたものになることを目指して活動中です。その第一歩として、日本の海に産卵場を持つ太平洋クロマグロを助けたい。私たちと一緒に、近くのスーパーやデパートに調達方針を考えてもらえるようにメッセージを届けて下さい。