お寿司大好き海洋生態系担当、吉野良子です。

マグロ産業に革命を起こそうと、今日も広大な太平洋を航行している虹の戦士号。今日は虹の戦士号調査報告第3弾、ビンチョウマグロ漁のことをお伝えします。

ついにビンチョウマグロ漁船に調査のメスが!

今回の船旅の目的のひとつが、ビンチョウマグロ漁を調査すること。実は、虹の戦士号の太平洋航行は8回目を数えますが、これまで一度もビンチョウマグロ漁船を調査する機会には恵まれませんでした。

しかし、今回、8回目にして初めて、ビンチョウマグロ漁をするはえ縄漁船に許可を得て乗船することができました! この海域で操業するビンチョウマグロ漁のうち、違法操業の有無等を調べるための独立した第三者機関の調査対象となっているものは、わずか1%。

広い太平洋で目的の調査船と遭遇し乗船許可を得ることの難しさが想像できます。だって、太平洋って本当に広いんですもの。 

見渡す限りの海と空と雲。あるのはただ、水平線だけ。

私たちはこの雄大な地球から、太平洋から、自然の恵みをいただいているんですね。今日は、その貴重な恵みであるビンチョウマグロについて、聞いてください。

 

ビンチョウマグロって?

ビンチョウマグロの名前を初めて聞いた時、私の頭のなかは?がいっぱい。でも、シーチキンやビントロと言われれば、ピンときました。 

 

ビンチョウマグロとは、ビンナガと呼ばれる小型のマグロ。最近では、回転寿司などで「ビントロ」としても親しまれています。いわゆる大トロとして日本人に愛されているミナミマグロが漁獲量のほぼ全てを、クロマグロはその80%超を日本が消費しているのに対し、ビンチョウマグロは、世界中で主に高級ツナ缶用食材として愛用されています。

 

ビンチョウマグロまだまだ大丈夫?

太平洋クロマグロがすでに3.6%まで減少し、絶滅危惧種に指定されたことは、これまでもブログで何度も取り上げていますから、もうご存じの方も多い…はず!?。では、ビンチョウマグロは?

その資源量、残り40%(※1)。

何だ、40%もあるんなら大丈夫じゃない?って声が聞こえてきそうです。でもこれ、決して安心できる数値ではないんです。国連公海漁業協定という国際的な条約(日本も批准)では、資源量がおよそ50%を切ると全面禁漁を含む厳しい漁獲制限をとることが推奨されています。だから、資源量40%とされるビンチョウマグロも、準絶滅危惧種に指定されています。 

乱獲状態にあるとまでは言えないものの、このまま効果的な規制もなく獲り続けてしまえば、いずれビンチョウマグロもクロマグロたちと同じ運命を辿りかねません。今回の船旅がビンチョウマグロ漁の調査を主たる目的としたのには、こうした背景があります。

では、今回虹の戦士号が調査したビンチョウマグロ漁船。いったいどんな魚を獲って、どんな船員たちが、どんな労働環境で働いているのでしょうか?

その調査結果、ちょっとのぞいてみましょう。

 

どんな魚が獲られ、どんな人たちが、どんな環境で働いてる?

ビンチョウマグロ漁船のほとんどが、100km以上に及ぶ長い釣り糸を垂らして漁をする、はえ縄漁船です。獲った魚を冷凍保存する大型冷凍庫を備えています。今回遭遇した船の冷凍庫には、マンボウやカジキ、深海魚であるバラムツ(※2)、そして注目度の高いサメのヒレ(フカヒレ)まで保管されていました。

では、どんな人たちが漁をしているのでしょう。2013年に太平洋で最も多くビンチョウマグロを漁獲したのは中国と台湾船籍の船です。ですが、船籍が中国や台湾だからといって、働いている人が中国系の人とは限りません。

マグロ漁自体が巨大な多国籍ビジネスであり、前々回のブログにもあったとおり、多様な国の若者が奴隷労働のような過酷な条件のなか働いています。

調査したビンチョウマグロ漁船でも、1日18時間労働で、ほとんど休憩なし。通常2年契約。1回出航すると数ヶ月は洋上です。1部屋を8人でシェアするため、乗組員の中にはシャワーを使わせてもらえない人も。

 

しかも今回、虹の戦士号が許可を得て乗船した漁船のほとんどが5年以内に建造された船でした。漁獲量が制限されているにもかかわらず、新しい船を建造しているため、そのコストを回収すべく、劣悪な労働条件で昼夜なく労働者を働かせ、資源が枯渇してしまう前に、獲れるだけ獲ろうとします。

でも、乱獲状態が続けば、獲れる魚はどんどん少なくなります。コストをかけてようやく漁獲した魚は、どんどん小さくなり、コストに反して売上は減っていく。グローバル市場という激しい競争の中で利益を上げるには、漁船や企業は過剰漁業だけでなく、獲ってはいけない魚を違法に獲る海賊行為、マネーロンダリングならぬ魚ロンダリング、果ては、賄賂や人身売買にまで手を染めることも…

これでは持続可能な生態系を守ることはもとより、漁師や漁業者自身に持続可能な利益をもたらすことさえ、ますますできなくなっていきます。

 

あなたが今すぐできること

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今が、この悪循環を断ち切る最後のチャンス!まだマグロたちが私たちとともにあるうちに、この悪循環を断ち切る道を開かなければ、との思いで日々活動しています。しかし、問題の大きさに比べてスタッフの数も資金もまだまだ足りていません。あなたの想いを寄付という形でご支援につなげていただけましたら幸いです。

 

 

参考資料

※1) “Stock assessment for South Pacific albacore tuna, SCIENTIFIC COMMITTEE ELEVENTH REGULAR SESSION, 2015, p. 30,

※2)「自然毒のリスクプロファイル:魚類:異常脂質」厚生労働省

 

関連ブログ

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目を背けてはいけない、太平洋マグロ漁船で働く人々のありえない話。

サメからもSOS!マグロ漁に隠されたサメの受難

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