こんにちは、グリーンピース・インターナショナルのレイエス・ティラドです。
科学者として食と農業部門で研究やキャンペーンの科学的サポートをしながら、南スペインの農場で、娘とロバと一緒に、生態系農業を実践しています。
「生態系農業」。聞きなれないことばかもしれませんね。
でも、私はこの生態系農業が、世界の食の未来を救うものだと確信しています。
あなたの一番好きな食べ物は?
あなたの一番好きな食べもの、頭に思い浮かべてみてください。
何が思い浮かびましたか?
私の場合、ソウルフードであるスペインのパエリヤです。フレッシュな野菜や魚介がたっぷり入った、炊き込みごはんのようなものです。
あなたの頭に浮かんだ、大好きな食べ物。
その材料一つひとつが、どうやってつくられたものか、あなたは知っていますか?100%信頼して口にできるものですか?家族や子どもたちにも安心して食べさせられるものでしょうか?
破綻する世界の食
揺らいでいるのは、わたしたちの食卓の安全だけではありません。
みなさん、今世界中で、何人くらいの人が飢餓に苦しんでいるか知っていますか?
1)1億人
2)8億人
3)10億人
正解は、2)の8億人。日本の人口の6倍以上の人が、充分に食べることができない状態です。その一方、3)の10億人という数字、実は、世界中の肥満の人の数です。
破綻した食システムは、世界でどのような問題を起こしているでしょうか?
十分な食糧を手に入れられない人が、暴動を起こしている。
食肉のための飼料畑をつくるために、森林破壊も起きている。
農薬や化学肥料によって水が汚れ、海や川の公害も起きている。
気候変動によって、大雨、干ばつ、洪水などが起き、多くの農家が影響を受けている。
わたしたちのいのちを支える、暮らしの根本だったはずの農業が、「人」のくらしを置き去りにした巨大な工業的産業になってしまっている。それこそが、”食の破綻”の大きな原因なのです。
そんな工業的な農業と、農薬の大量使用は切り離せない関係にあります。
工業化した農業
以前、日系企業が運営している、タイにあるアスパラガス農場を訪れました。
グリーンピースがここで井戸水の検査を行った結果、私が知っている限り、もっとも高濃度の窒素(硝酸態窒素)が検出されました。WHO(世界保健機関)が定める窒素基準の3倍の値です。農場で使われていた農薬の影響で、地域の住民の飲料水になる水まで、汚染されていたのです。
窒素の濃度が高いと、発がん率が高まり、ブルーベビー症候群(チアノーゼの原因になる)などを引き起こします。地域の農家やその家族の健康にも影響が出ていました。
わたしたちは2009年にこの結果をレポートで発表しました。それをきっかけに、タイ政府がアスパラを輸出している日系企業に、農業方法の改善を申し入れました。その結果、農家の健康も回復していったんです。
いい農業をやれば、農家の健康にもいい。
そしてもちろん、食べる人の健康にもいい。
実際、最近ではオーガニック野菜には抗酸化作用をもつ成分が60%も高く、栄養的にも美容のためにも普通の野菜よりいいという研究結果も出ています。
信頼でつながる「生態系農業」
有機農業や自然栽培*など、化学農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術に頼らず、生態系のちからを活用する農業を私たちは「生態系農業」と呼んでいます。実は、それには理由があるのです。
有機農業というと、「有機認証」の表示があるもの、と考える人が多いでしょう。でも、認証を取っていなくても、有機農業の条件を満たして農業をやっているところはたくさんあります。また、国ごとに有機認証の定義が違うので、国が変われば有機であるかどうかの判断も変わってしまいます。
認証や呼び名にかかわらず、食べものが本当に人や生物多様性を大事にしてつくられている、信頼できる農業を、生態系農業として広めたい。そんな思い込められています。
人との関係が中心となって、信頼で生産者と消費者がつながるようになることが、本当の意味でのオーガニックの広がりのためには必要です。
南スペインの私の農場にも、おいしくて、環境にも配慮してつくられた野菜を求める人たちがやってきます。わたしと彼らも、信頼でつながっているんです。
* 有機農業は、化学農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術を使用しない農業。自然農法はそれに加えて、牛フン堆肥などオーガニックの堆肥も使用しないで、その環境独自の土と生態系のちからを生かして育成する農法。
生態系農業について、詳しくはこのページも見てみてくださいね
本当に現実的なの?
「とてもいいとは思うけど、本当にできるの?十分な食料を生産できるの?」
そう思う方もいるかもしれませんね。でも、生態系農業には、未来があります。
私は、50、100年以内に、すべての生産者が、生態系農業に切り替えると思っています。これから、もっと多くの科学者や医者が、オーガニックのほうが健康や環境にいいと発信していくでしょうし、気候変動のまっただなかにいるいま、生態系農業が干ばつや洪水などに対応できる解決策でもあるからです。
生態系農業はすでに、科学的に証拠はそろっているし、世界中で、政府や企業が政策として推し進め始めています。
例えば、フランスでは、2015年から生態系農業を進めるために数多くの政策を実施して、農家が生態系農業に移行できるようにサポートしています。ブラジルやデンマークも農家の生態系農業への転向を支援しはじめています。
アメリカでは、20年間でファーマーズマーケットは2,000から8,000まで増えました。
コペンハーゲンでは、公的機関で出る食事の88%はすでにオーガニック。
国連食糧農業機関(FAO)も、レポートを発表して、生態系農業は土壌を守り、将来の食の安全を守るために必要だと発言しています。
スーパーが消費者と生産者をつなぐ
多くの人が野菜やくだものを購入するスーパーマーケットは、このような新しいトレンドに答えていく方法を考える必要があるでしょう。
フランスでは、ローカルのオーガニック生産者が、直接商品を販売できる、100%オーガニックのスーパーが誕生しています。
さらにスーパーの中に、レストランやキッチンが併設されていて、消費者はそこで食べることもできます。まるごと食を体験できる、統合的な場所です。
スーパーという、お店だからこそできる形で、環境の保全に貢献しているグッドケースです。
多くの人がお買い物をするスーパーという場で、生産者の顔が見える、本当の意味での安全・安心の野菜やくだものを買うことができるように、オーガニックの取り扱いを増やしてくれるように、あなたもスーパーにお願いしましょう。
グリーンピース・ジャパンのチームが今、スーパーや生協に働きかけを行っています。あなたの力も貸してください。
「有機を増やして!」いますぐ署名で伝える >
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