農薬に頼らない自然と共存する農業を応援するために、生産者と消費者をつなぐ機会をつくりたい。そのための一歩として、台風10号が接近中の8月28日、東京都三鷹市の吉田農園で「都会でできるオーガニックな暮らし 家族で楽しむ収穫体験」を開催しました。
当日ご参加くださったのはお子様連れを含めた20名の皆さま。
少し涼しい薄曇りの下、400年続く畑で、家族三代で有機農業に取り組む吉田さんの引率のもとで夏野菜を収穫したり、養蜂家の井上治子さんと食と農業担当の石原謙治とのトークセッションでミツバチや農業について話しあったり、みんなで手づくりした生パスタを吉田さんにお料理していただいて食べたり、もりだくさんのイベントを心ゆくまで楽しんでいただきました。
今日はグリーンピースとしては珍しいこの農業体験のイベントについて、参加された方々もお伝えしながらレポートします。
当日は井上さんが、外から観察できるようにした巣箱をお持ちくださいました。ミツバチそのものは見たことがあっても、1,000匹単位のミツバチが活発に動き回る巣箱に子どもたちはみんな興味津々。中にいる女王蜂を探したり、箱を触って微かに伝わるハチたちの体温を感じたり、これも井上さんが持ってきてくださったハチミツを試食したり、貴重な機会を楽しんでいただきました。
お客様の前でのトークセッションは初めてだったという井上さんの印象に残られたのは、参加者の皆さんがとても熱心にお話を聞いてくださり、「ミツバチが好き」とおっしゃって巣箱も一生懸命観察してくださったこと。
日本ではどちらかといえば舌触りの柔らかなハチミツが好まれる傾向があるそうですが、今回参加された方のご家族には「凍って結晶化したハチミツが好き」という方もおられたのが新鮮だったとか。
同じ生産者の立場として、有機農業への移行のために何年も費やされた吉田農園さんのお話には、何かを成し遂げるのはやはり大変なものだと、とても共感されたそうです。
井上さんは今後は自分で木を植えて、無農薬で育ててハチミツを生産できる環境づくりを目指しておられるそうです。
かつて坑道の安全対策に連れられていたカナリアのように、農薬のあるところでミツバチは生きられない。ミツバチのいないところに人は住むべきじゃないんだ、とおっしゃった言葉が、とても胸に響きました。
いつもグリーンピースの活動にご協力いただいていて、今回も小学校低学年のお子さんを連れてきてくださった参加者の方は、「いままでのイベントの中でいちばん楽しかった」とおっしゃってくださいました。
ミツバチの現状や農薬問題については自分では知っているつもりだったけど、ミツバチの寿命がたった1か月しかないことや、農薬の影響で80箱もの巣箱(ひと箱に数千匹のミツバチが暮らしている)が一度にだめになってしまったなどという養蜂家の方の声を直接聞けたことが印象深かったそうです。
また、吉田農園さんが有機農業を始めるにあたって土壌改良に10年近くもの時間がかかり、その間に家族がバラバラになるほどの危機があったといったお話には、とても重いものを感じられたとのことでした。
一方で、パスタをいっしょにつくって食べたことで参加者同士の会話も弾み、収穫体験で持ち帰った夏野菜を夕食に料理してご自宅でもおいしく召し上がられ、これからも自分なりに活動していく意欲をあらたにされたようです。
スタッフとしては、トークセッションが難しくてお子さんにわかるかな?というところが心配だったのですが、「農薬でミツバチ死んじゃうんだね」と訊ねたところ、「農薬で酔っぱらっちゃって、おうちに帰れなくなるんだよ」と、しっかり聞いて理解していて驚いたとのこと。
今回のイベントはお申込の受付を始めて数時間で定員になってしまいましたが、参加してくださった皆さまが心から楽しんでくださったことが、スタッフとして何よりもうれしく思いました。
農業を変えるためにもっともたいせつな一歩は、まず生産者と消費者がつながること。井上さんと吉田さん─地球にやさしい農業を目指している方々の言葉のひとつひとつが、参加してくださった方々の心に種をまき、その種が、社会を動かす大きな力に育っていくことを願っています。
グリーンピースでは、生産者と消費者をつなぐことで、食と農業の未来をまもる活動をこれからも続けていきます。
このような活動はすべて、願いをともにする皆さまのご寄付にのみささえられています。温かいご支援に心より感謝申し上げます。
子どもたちに、未来の世代に、安心して食べられるおいしい食べ物のある世界を残すために、ご寄付でのサポートをお願いします。
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写真 (C) Yoda Kengo / Greenpeace
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