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みなさんこんにちは、食と農業担当の関根です。

いま、ミツバチに有害な新たなネオニコ系農薬が解禁されそうになっています。なぜ、害があるとわかっているのに、つぎつぎと解禁されていくのでしょうか。

その理由のひとつは、ミツバチへの毒性は、農薬が承認されるまで「秘密」にされているから...

 

ミツバチへの毒性は非公開

農薬メーカーが、農薬を承認(登録)してもらうためには、毒性や効果について、動物実験や残留試験などのたくさんのデータを農林水産省に提出します。

農薬の残留基準値を決めるとき、人への毒性についてどんなデータに基づいたかはいちおう公開されています。[注1]

でも、ミツバチへの毒性のデータは、最後にすべての検討が終わって、農薬が承認されるまで公開されません。

つまり、養蜂家さんたちも、わたしたちも、農薬が使われるようになるまでミツバチなどへの毒性を知ることができないのです。

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 グリーンピースでは、いま日本で解禁されようとしているスルホキサフロルについて、メーカーのダウ・ケミカル日本株式会社(アメリカに本社を置くダウ・ケミカルの日本法人)が農林水産省に提出した書類の公開を求め、その情報を入手しました[注2]。

それによると...

 たとえば、半数致死量(LD50)[注3]でみると、スルホキサフロルの毒性は他のネオニコ系農薬とくらべて、ハチに毒性の強いものと弱いものの間くらいのようです。これは有効成分だけで行った試験のデータです。 

でも、ミツバチへの影響を考慮して使用範囲を限定したアメリカではここにはない毒性もみています。たとえば...

[ミツバチに関する抜粋をみるには写真をクリック]

アメリカの環境保護庁が検討した毒性データのひとつは、よく使われる最終製品での試験データ。有効成分だけの試験データと比べて3倍も強く現れていました[注4]。

(最終製品は、有効成分に加えて、農薬を浸透しやすくしたり、くっつきやすくしたり、と有効成分の働きを助ける化学物質が加えられていて、トータルでの毒性が高くなることがあると言われています。)

 

ミツバチより環境より企業秘密が優先

こうした情報は農林水産省にも正式に提出されているのでしょうか?
そしてその情報を農林水産省はどう判断しているのでしょうか?

農林水産省に情報を請求したところ、そういう文書が「存在しているか否かを答えるだけで、予め競合製品の導入等を進めることが可能になる等(中略)当該資料を提出した者(編注:ダウ・ケミカル日本株式会社のこと)の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがある」として、もっているかどうかさえ公表されませんでした。

ミツバチや養蜂家よりも、そしてミツバチによってもたらされる食の恵みよりも、農薬メーカーの権益が優先されているのです。


 

農薬の使用は、食の安全だけでなく、環境や生態系、そしてミツバチのように農や食と深くつながる生物にも影響を与えるものです。その毒性の情報を最後まで秘密にしておくことはフェアではありません。農薬を使うかどうかを決めるプロセスと同時に公開し、それにたいする市民を意見をきくべきです。

グリーンピースでも引き続き、情報の公開をもとめていきます。

 

世界ではミツバチの恵み生態系をまもるために、ネオニコ系農薬を規制することは大きな流れになりつつあります。EUでは、部分的な使用規制のかかっていたネオニコ3種を全面使用禁止する見通しであることが報じられています。日本でもみんなの声を力に、流れを変えていきましょう。

署名でNo ネオニコの意思を伝えよう

パブコメ募集は終わりましたが、引き続き責任ある省庁へ私たちの意見を届ける署名を実施中です。市民団体で協力して、緊急オンライン署名を立ち上げました。こちらのバナー↓をクリックして、署名にもぜひ参加してください。

あなたの署名と意見で、一緒にネオニコの解禁を止めてください!

食の恵みを支えてくれるミツバチ、そして子どもたちの未来をまもりましょう。

 

注1:評価の根拠にした研究の実施機関や年はは公開されていますが、その論文は「未公開」とされているものが多い
注2:ダウ・ケミカル日本株式会社の提出した「農薬抄録」。数百ページにわたる書類ですが、そのうちミツバチに関する部分の抜粋はここをクリック

注3:動物実験(この場合はミツバチですが)で経口などで薬物を与えた動物の半数が死亡する量のこと。数字が小さいほど毒性が強い。
注4:https://www.regulations.gov/document?D=EPA-HQ-OPP-2010-0889-0409

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