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みなさま、はじめまして。

5月からグリーンピース・ジャパンのエネルギーチームの一員となりました石川せりです。

環境問題について調べてみたはいいものの、あまりにも複雑で、巨大な壁が見えてきて、知れば知るほど「私にできることなんてあるのかな?」という絶望的な気持ちに・・・。そんな経験、ありませんか?

私が環境保護を志すようになったきっかけは、東日本大震災とその後の東京電力の福島原発事故がきっかけでした。1年後に岩手と福島へ行き、更地となってしまった土地に立ち、からっぽの牛舎や避難所などを訪れ、かつての住民の方々にお話を聞きました。終わることのない痛みを抱え声をあげる人々、コミュニティが解体され一家が離散せざるを得ない状況。そんな現状を目の当たりにし、私の生活が自然環境や人、そして動物たちを犠牲にして成り立っていたという事実を知り、ショックを受けました。

今まで通りには暮らせないと強く思いました。太陽光パネルなんてすぐ設置できないし、そもそも自分の生活をしていくので手一杯。でも、そんな絶望を感じているあなたに共有したいことがあります。それは、「今日からできること」は実はたくさんあるということです。

今日から何ができるんだろう?

水をつい出しっぱなしにしない

 

そんなの当たり前!と思いましたか? でも、顔を洗う時、手を洗う時、うがいをする時、歯を磨く時、お風呂の時、洗い物の時など、つい水を出しっぱなしにしちゃっていませんか? 

実は、地球上にある水の約97%は海水、残りの3%は淡水です。そのなかでも私たちが使用できる水というのは0.01%程度*1しかないって知っていましたか?

 IPCC*2が2013年に発表した第5次報告では、アジア地域の主に大河川流域で、気候変動によって利用できる淡水が減少し、「2050年代までに10億人以上の人々に悪影響を与える可能性がある」と報告されました。これには人口増加による影響もありますが、私たちの住むアジア地域でもいまから約30年間に、水ストレスとなる(日常生活の水利用に不便を感じる)可能性がでてきたということです。

 それでも水資源の減少は遠い地域の話? いいえ違います。なぜなら日本に輸入されている食料は、外国の水資源なくしては食べられないから。日本が外国から輸入した製品や食料がつくられる過程で必要となった水、「バーチャルウォーター」*3 は、2005年時点で800億㎥。その大半は食料の生産に必要な水でした。

さらに、先進国の中でも最大級の水使用国である日本1人あたりの1日の水使用量は世界平均の約2倍となる約186ℓ*4。持続可能な生活のためには、地球にあるわずかな資源を無駄なく必要な分だけ使うほうがいいですよね。こまめな節水だけでなく、水圧を弱め、全体的に使う量を減らす、国産の食料を選ぶ、というのもできることの1つです。 

タオルペーパーを無駄遣いしない

よくトイレに設置されているタオルペーパー。ついいきおいで何枚もとって手を拭いてしまった経験ありませんか? 手を拭くにはペーパー1枚だけ十分だとうったえ、実演して見せたジョー・スミス氏のTEDトークがおもしろいです!

 

ここで彼は、アメリカ国内では年間590万トンものタオルペーパーが消費されていると話し、これをみんなが使用量を1日1枚減らすだけで、25万9100トンも節約できると教えてくれています。さてどうやって? 答えはとてもシンプルでした。

手洗い後、「よく振る(Shake)」。そしてタオルペーパーを「折りたたむ(Fold)」。

ビデオはアメリカの話でしたが、日本のトイレにもタオルペーパーがよく設置されています。楽しくできちゃうこのShake & Fold、ぜひ実践してみてください!(ハンカチを持ち歩く習慣に変えられたらさらにGOOD)

電気をLEDに変える

エネルギー効率性、環境に有害な物質が使われていないという点でも、環境に優しいLED電球を使ってみてはいかがでしょうか? 切れた電球から徐々に変えていけば、無理がなくできます。白熱電球より少し値段は高いですが、約10年間交換不要*5 なので白熱電球の数十倍長持ちだし、電気代も白熱電球の10分の1程度*6(住宅用電球の場合)で済むので経済的にも断然お得!

さらに、今年の7月10日より、東京都が「家庭におけるLED省エネムーブメント促進事業」を開始しました。これは、白熱球2個以上を都内の地域家電店等へ持っていくと、LED電球1個と無料で交換してくれるという取り組みだそうです(残念ながら都民の方々に限ります。詳細はリンクをご確認ください)。

日常用品をエコフレンドリー製品に変える  

毎日使うもの、たとえばハンドソープ、食器洗剤やシャンプーなどを界面活性剤の含有量が少ない製品に変えるのも今日からできることの1つです。たとえば、歯磨き粉を選ぶならマイクロビーズを含んでいない製品を積極的に!(理由はこちらのブログから)

また、旅行先でオーガニック素材の手作りせっけんを買えば、旅先の記憶を思い起こしながら手を洗えるので豊かな時間になると同時に、環境にも優しくなれます。

他にも、いまあるものを長く使うのも大切ですよね。たとえば、生活にほぼ欠かせないツールとなったスマートフォン。どれが地球に優しいIT製品か、グリーンピースが調べて「修理しやすい製品ガイド」を作成しました(詳しくはこちらへ)。長く使えれば、貴金属類の採掘量を減らすだけではなく、生産に必要なエネルギー量も減らすことにつながります。

知ってみる

映画

「もののけ姫」

この映画は環境問題を直接に描いているわけではありませんが、映画が描く自然の美しさ、動物と自然の共生、そしてそれを犠牲にして発展してきた人間の姿と自分を重ね合わせて毎回心が痛くなります。これまでの無理な発展を反省し、最後は自然にゆるされるというエンディングはまさに自然と人間の関係性を描写していると思います。  

「不都合な真実 (An Inconvenient Truth)」

環境問題、とくに気候変動問題に精力的に活動する元米副大統領のアル・ゴア氏の活動を追ったドキュメンタリー。ゴア氏の講演映像などをもとに、NASAへ出向いたり、地球の平均気温が上昇していることを科学的に、かつ分かりやすく説明してくれます。 

「日本と再生」

原発訴訟弁護団で有名な河合弘之弁護士監督作。相棒として環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也さんも同行したヨーロッパ・日本の自然エネルギーをめぐる様子がおさめられています。笑いもまじえながら、複雑にからみあうエネルギー産業を飯田さんが解説してくれています。この映画を見ると、自然エネルギーへの転換は経済原理に基づいた現実的な選択なんだとポジティブになれます。

『地球温暖化は解決できるのか? ~パリ協定から未来へ~』小西雅子(2016年, 岩波書店)

岩波ジュニア新書なだけに、パリ協定がいかにして発効を迎えたかという経緯や世界規模で起きているエネルギー政策の変化、読者が「いまできること」などをやさしい文体で丁寧に解いてくれています。この本自体は入門編のかたちをとっているので、もっと詳しく知りたい人のために、関連する参考文献を提示してくれているのも親切でした。地球の危機的な現実を伝えつつも、これからの未来について、希望を残してくれる本です。

『1秒の世界』山本良一(責任編集)/Think the earthプロジェクト(2003年, ダイヤモンド社)

生命の営みから環境変化、経済と社会の現実まで、世界で起きている事象が1秒のあいだにどれだけ起こっているのかを数値化し紹介した本です。たとえば、1秒間に252トン(大型トラック63台分)もの化石燃料が使用されていることや、グリーンランドの氷河が1秒間に溶ける量は1,620㎥(琵琶湖容積の約1.9倍相当)、といった事実を教えてくれました。1ページずつ異なる事実を紹介しているので、気が向いた時や関心のある部分だけ読むといったこともできます。物事を1秒の単位で考えていくと、世界で起きていることをより身近に、そして具体的に知れる一冊です。 

もうすでにご紹介した映画や本は読んでいる!という方は、ぜひ地域で上映会や読書会をするなど、まわりの方と共有してみませんか? そこで感じたことや得た知識を少しずつでも行動に変えていくことも大切です。

次のステップはこちら!

  • 電力会社をクリーンな会社へ乗り換える

グリーンピースが作成した電力会社乗り換えガイドの「iSwitchガイド」や、パワーシフトのウェブサイトもご参考にしてください。お住いの地域別に、私たちが調べた各電力会社の電源構成を公開しています(2016年時点の結果です)。

  • メガバンクから原発や石炭事業に投資していない銀行へ主口座を変更する

近年、石炭や原子力事業への投資から手を引く「ダイベストメント」という投資の新しい動きが話題になっています。国際環境NGO350.orgの調査によれば、日本の民間銀行の多くが化石燃料や原子力事業に投資をしていることがわかりました。

  • 寄付を通じて環境保護活動をする

「実際に活動ができないので、寄付で応援します」という声をよくいただきます。ご寄付も、環境保護活動のために必要なアクションの1つです。世界にいる300万人のグリーンピースサポーターの一員として、あなたにできる環境保護活動を一緒しませんか? 

グリーンピースへのご支援はこちらより簡単にしていただけます。


 いかがでしたでしょうか? こうして書き出してみると、できることがたくさんあると思いませんか? そして、習慣となってしまっている日々の小さな「つい」を変えるだけで、環境に優しい生活、つまり持続可能な生活に意外とかんたんに近づくことができるということも。 

本日お伝えした「今日からできること」リストを下にまとめてみました。

今日からできることチェックリスト✅ 

□水をつい出しっぱなしにしない

 こまめな節水、水圧を弱め全体的に使う量を減らす、国産の食料を選ぶ

□タオルペーパー1枚で手を拭く

 ジョー・スミス氏のTEDトークはこちら

□電球をLEDに変える

 東京都のLED切り替え促進事業はこちら

□シャンプー、ハンドソープ、食器洗剤などの日常品をエコフレンドリーにする

□ショッピングバッグを持ち歩く=「ビニール袋、要りません」と言う

□マイボトルを持ち歩く

□スマホ、パソコン、タブレットの「修理しやすい製品ガイド」をみて見る

□映画を見る

 「もののけ姫」「不都合な真実」 「日本と再生」

□本を読む

 『地球温暖化は解決できるのか? ~パリ協定から未来へ~』小西雅子

 『1秒の世界』 山本良一(責任編集)/Think the earthプロジェクト

  ➡️見たり、読んだりした情報をまわりと共有する。行動に変える。

物質的な豊かさを求めてきた一人一人の生活態度が環境破壊を進めてきてしまったからこそ、その私たち一人一人が責任を持って、できる範囲、そしてできるところから、小さなエコ行動をしていくことが大切だと思います。

私も日々できることから、心豊かでカラフルな持続可能な生活を実践していきたいと思います。ここまで読んでくださったみなさんと一緒に実践していけたら嬉しいです。

毎日、何回も、1人でだってできるアクション、夏休みを利用して、習慣化できるよう心がけてみてはいかがでしょうか? チェックリスト、ぜひご活用ください!

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*1 地球上で使える水の量:http://www.unesco.org/new/en/venice/special-themes/h2ooooh-initiative/h2ooooh-initiative-drops-of-water/

*2 IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Chang

*3 バーチャルウォーター:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h22/html/hj10010401.html

*4 水の使用量:http://www.toto.co.jp/greenchallenge/value/q02.htm

*5 LED寿命電気代:http://www.led.or.jp/led/led_life.htm 

*6 LED電気代:http://www.led.or.jp/led/led_cost.htm