こんにちは。食と農業担当の関根です。

ヨーロッパからビッグニュースです!

ネオニコチノイド系農薬と同様にミツバチへの毒性が強いフィプロニルが、つい先週の9月30日から、ヨーロッパ連合(EU)に加盟している国々の全農地で使用禁止となりました*。

 

この夏、ヨーロッパ各国で食用の玉子から相次いで検出され、国際的なスキャンダルも引き起こしていたのもこの農薬、フィプロニルです。

日本でもニュースを見たかたは多いのではないでしょうか*1。

 

 

ミツバチに毒性の強い農薬が1つ禁止に

フィプロニルは、ヨーロッパでは種子をコーティングするなど作物に広く使われていました。しかしネオニコチノイド系農薬と同様、少量でもミツバチの行動や学習能力を低下させたり、ウィルスへの抵抗力を弱めたりする、といった作用があります。このことから、EUは2013年にフィプロニルの農業への使用を一部制限していました。そして、今年9月30日をもってEUではフィプロニルの農薬としての承認が失効し、農産物への使用が全面禁止となりました。

 

EUではネオニコ系農薬も全面禁止が提案されている

最近の研究によると、ネオニコチノイド系農薬は、野生のハチやチョウなどの花粉を運ぶ生き物の生存を脅かし、土壌に長く残留し、また広く水環境を汚染することによって、生態系にも悪影響を及ぼすことが、明らかになってきました

EUでは2013年末からネオニコ系農薬の使用を一部制限していましたが、危険性を警告する科学的な根拠が増えていくのを背景に、欧州委員会は3種類のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用を全面的に禁止(温室内を除く)する提案を出しました。この提案は、今月にも欧州委員会で話し合われる見込みです。

 

[写真:フランスのオーガニック100%のスーパーマーケット。オーガニックやネオニコフリーが進む背景には消費者の選択がある]

日本では、お米にも使われるフィプロニル

日本では、フィプロニルは、稲の苗を育てるときの育苗箱や、キャベツ、はくさい、ブロッコリーなどの菜類、その他トウモロコシやてんさいなどの農作物に使用できることになっています

しかし国立環境研究所による研究報告では、田んぼで育つトンボにもフィプロニルが悪影響を与えることなどが報告されています*5

 

ネオニコチノイド系農薬全般についても、規制の厳しくなるヨーロッパとは逆に、日本では使用範囲の拡大や残留基準値の引き上げなど、使用が増える傾向にあります。

トンボやカエルなどさまざまな生き物の生息地として大切な役割を担っている田んぼ。生態系と共存したお米作りにとりくむ農家も増えています*6。

あなたの選択がかなえる、ミツバチやからだに優しい食と農

危険な農薬を禁止にしていくことは重要です。そして同時に、オルタナティブとして「農薬に頼らない農業」を応援していくことも不可欠です。

日本では2人に1人の農家さんが、“条件”が整えば有機農業にしたい、と答えています。その大事な条件の1つは販売先。あなたがよくお買い物をするスーパーマーケットが、オーガニックのお米や野菜を扱う方針をもてば、有機農業にシフトしたい、と思う農家を応援することにつながります。そうして消費者や農家が一緒に力を合わせれば、日本で規制をつくっていく大きな力にもなります。

あなたもこのバナーをクリックしてぜひスーパーに声を届けてください!

「有機のコーナー全ての店舗に!」いますぐ署名で伝える>>

EUの農薬登録のデータベースのフィプロニルのページ(英文)。真ん中あたりに、Expiration of approval 30/9/2017 (承認の失効日2017年9月30日)とあります。

*1 2017年9月5日 ロイターニュース「殺虫剤フィプロニルが混入した卵、欧米など世界40カ国で発見

*2 グリーンピースレポート「消えるハチ」2014年 p40

*3 グリーンピースレポート「ネオニコチノイド系農薬の環境リスク-2013年以降明らかになった証拠のレビュー」2017年6月

*4  2017年3月27日 The Guardian記事 Europe poised for total ban on bee-harming pesticides

*5 日本経済新聞「農薬がトンボに悪影響 国立環境研、水田で実験 」(2016/3/22)

*6 ブログ 土の本来の力で (2017/9/5)

 

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