こんにちは、グリーンピース・ジャパンのインターン、寺倉と高橋です。

自然エネルギーへの関心と取り組みが、全国に大きく広がっていますね。

グリーンピースでは、自然エネルギーの現場を訪ねて、昨年末に長野県飯田市にお邪魔しました。
自然エネルギーの現場を実際に訪ね、取り組みのしくみや成果、課題を直接うかがうことが目的です。

訪れたのは飯田市の

今回ご報告するのは、小規模分散型の太陽光発電に取り組む「おひさま進歩エネルギー」さんについてです。

私たちのレポート「自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 長野編」、どうぞご覧ください。


【写真: みつば保育園(飯田市)。園児のお昼寝中もパネルは発電を続ける】


【インターン高橋のレポート】――――――

長野県飯田市で、最初に私たちを迎えてくれたのは「おひさま進歩エネルギー株式会社」の原亮弘社長でした。

この会社は、「エネルギーの地産地消で持続可能な循環型社会を目指すこと」を理念に設立された「NPO法人南信州おひさま進歩」を母体として原社長の手によって設立されました。

2004年より着実に設置数を増やしてきた同社の「おひさま発電所」は、253ヶ所、設置容量合計1604kWにのぼります(2012年8月現在)。


おひさま進歩エネルギーが行っている事業は主に2つ。

  1. 省エネルギー改修事業の実施によるエネルギーコストの削減
  2. 自然エネルギーによる環境負荷のかからないエネルギーの創出

その中でも今回、私が特に興味を惹かれた事業が2)の「創エネ」事業の一環として行われている「おひさま0円システム」でした。

そのシステムは・・・

  • 個人住宅の屋根に初期投資ゼロ円で太陽光パネルを設置
  • 発電される電力をその家庭で消費
  • 余剰電力は電力会社に売る
  • その家庭は設置費用の代わりに月々19800円を9年間おひさま進歩に支払う*
  • その後、太陽光パネルは設置家庭のものとなる

というものです。
(*太陽光パネルを使うので電力会社から電気を買わずに節約できた費用+余剰電力を売電したトータル収入で、相殺に。)

【写真: 美しい山並みを見渡せる飯田市公民館の屋上に合計約8.7kwの太陽光パネルが並ぶ。パネルを拭いたりする必要はなく、ほとんどメンテナンス不要だという】


さらに、この計画に携わっているのは、おひさま進歩エネルギーだけではなく、

  • 飯田市:財政支援、情報伝達支援
  • 地域金融機関:出資や融資
  • 市民の方々:出資、屋根貸し
  • 地域の設置関連事業者:パネルの設置
  • 中部電力:余剰電力の買い取り

のように、まさに地域の方々が密接に関わり合い、太陽光発電を普及させることで地域を活性化するという試みなのです。

  

【インターン寺倉のレポート】――――――

「自然エネルギーは地域のもの」「市民にできることは何か?」という考えのもと、おひさま進歩エネルギー(株)の原社長は2004年に地産地消のエネルギーを目指すNPOを設立。

保育園などの屋根を借りた太陽光発電の設置や、市民が再生可能エネルギーに出資できる仕組み「おひさまファンド」の設立などを手がけ、飯田市が再生可能エネルギー先進都市となった立役者とも言えるお方です。
太陽光パネルが設置されている現場をご案内いただきながら、お話しをうかがいました。

 

【写真: NPOとして設置した「おひさま発電所」第一号。明星保育園の屋根を借りる形で、市民の寄付により設置された】

 

【写真: 発電中であることを子供たちにも分かりやすく表示。難しい印象のある「電気」が「屋根で作れる」という「見える化」は園児のみならず保護者や訪問者の感心も高めている】

 

なんでも答えてくれそうな原さんに素朴な疑問をぶつけてみました。

Q: 太陽光パネルの耐用年数は?いずれゴミになってしまうのでは?

A: 現在、30年前の太陽光パネルが今でも発電を続けています。多少の発電効率は下がりますけれど。
なので、30年は使えるという表現をしていますが、発電するセルの部分は磁石と同じような素材なので、もっと長く持つと思います。
直流の電気を100Vの交流に変えるパワーコンディショナーの部分の耐用年数は5−10年で交換が必要です。

 

Q: 自治体が協力的でいいなあという印象を持っているのですが、市は最初から積極的だったのですか?
自治体にとってのメリットとは何でしょう?

 A: 市が率先したというよりも、市民のNPOによる活動があって、それが広がりをみせて行政が応援してくれるようになった、という経緯ですね。
行政頼みではなく、市民やNPOが始めの一歩を踏み出すことが大事です。
始めたから、次が生まれるのです。 

飯田市は大きくはない地方都市なので、せっかく企業の誘致に力をいれても、また出て行かれてしまう、という状況がありました。
しかし、地産地消エネルギーの普及が市にとっても良い効果をもたらすことに気づいて、応援してくれるようになったともいえるかもしれません。
飯田市は「環境権」として地域住民が地域の環境を使う権利を条例で認めており、権利の保証や基金の設置などにおいて協力してくれています。

 【写真: 柔らかい物腰で素朴な疑問にも丁寧に答えてくださる原さん】


Q:原さんが始めの一歩を踏み出したきっかけは何ですか?

 A: いわゆる普通の会社員をしていたのですが、テレビでリオの環境会議を観た時に、このまま今のエネルギーの使い方を続けたら、あと100年で人間は地球には住めなくなるな、と感じたんです。
それ以降、エネルギーについて感心を持って勉強し、市の環境アドバイザー制度というのに応募しました。自分たちにできることをやっていこうよ、という動きの中で、飲食店の方々が処理に困っていた廃食用油を精製して燃料にするプロジェクトなどを行いました。

Q: 自分の住む地域でも地産地消のエネルギーを実現させ、成功させるにはどうしたらよいでしょうか?
アドバイスをお願いします
 

A:合意形成が大事です。
みんなでやる、という意識がないとうまくいきません。
エネルギーの種別によりますが、小水力や風力などは特に、地域にいる多数のステークホルダーの利害関係の調整をしながら、協力して進めていかないとうまくいきません。

 

半日ほど飯田市内を回って、実際に現場を見て感じたのは、エネルギー源である太陽光が屋根の上に燦々と降り注いでいる、ということ!

自分の家は日当りが良くない、資金がないなど、太陽光発電をしてみたくても自分には無理、と考える方が少なくないと思いますが、他人様の屋根であっても、太陽のあたる屋根がある限り、電気を作ることは可能なのです。
屋根の貸し手と発電設備の出資者とを結びつけるNPOが媒介として存在すれば、どこの町でも発電事業は可能だなと感じました。

また、私が驚いたのは、飯田市内のいたるところに太陽光パネルを設置した民家があったこと!
おひさまプロジェクトとは関係なく、独自に設置されているお宅も多いそうです。
きっとご近所同士で情報交換などをしながら、「良さそうだから、うちにも設置してみよう」といった形で増えていったのでしょう。
エネルギーが作れることの「見える化」はとても大事なことだと感じました。 

そして何よりも、原さんの行動力に感動しました。
原さんは自治体の事業者とのネットワークをつくり広げる活動もされており、鹿児島、兵庫、名古屋、長崎など、全国で同じような志を持った方々によるプロジェクトのアドバイザーとしても活躍されています。

原さんの「反対ではなく賛成で行きたい」という言葉も心に残りました。

原発”反対”運動も必要ではありますが、日本全国の各地域の市民の力で「再生可能エネルギー”賛成”運動」も盛り上げていきましょう!

-ーーー

【自然エネルギー現場紀行シリーズのブログはこちら】

自然エネルギー現場紀行 小水力 in 山梨編

自然エネルギー現場紀行 風力 in 静岡編 

自然エネルギー現場紀行 小水力発電機 in 長野編 

自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 長野編 

自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 鹿児島編