こんにちは、事務局長の佐藤潤一です。

 

 

「やんばるの森」に米軍ヘリコプター着陸場所を6か所建設中

沖縄県北部にひろがる「やんばるの森」をご存知ですか?この森は、「ヤンバルクイナ」という絶滅危惧にある鳥が生息する森としてテレビでもよく取りあげられます。しかし、この生物多様性の宝庫である「やんばるの森」が米軍のヘリコプター着陸地(ヘリパッド)建設のために破壊されようとしていることは残念ながら、まだあまり知られていません。

防衛省沖縄防衛局が許可しているヘリパッド建設計画によると、「やんばるの森」を切り開いて直径75メートルの米軍用ヘリパッドを6か所建設するとなっています。

生態系豊かな「やんばるの森」

那覇防衛施設局(当時)の「環境影響評価図書(2006年)」によれば、ヘリパッド建設予定地とその周辺で、4,158種にもおよぶ膨大な数の野生生物種が記録されています。そのうち12種の植物、11種の動物が地球上で沖縄島北部にのみ生育・生息する固有種・固有亜種であり、絶滅のおそれのある種が177種(環境省レッドリスト)、188種(沖縄県レッドリスト)も含まれています。また、天然記念物の生物は、国指定、県指定それぞれ8種が記録されています。

現在も工事が強行

沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設現場では、住民の反対にもかかわらず本日も強引に建設がすすめられています。2月21日には、沖縄県警の機動隊も現場に配備される事態です。

環境NGOの共同声明

本日2月23日、この米軍ヘリパッド建設の中止をもとめて、環境NGO(WWFジャパン、グリーンピース・ジャパン、日本自然保護協会、野鳥の会)が東京の国会議員会館で合同記者会見を開きました。以下が声明全文です。

 


2011年2月23日
生物多様性を破壊する
防衛省の米軍ヘリパッド建設工事強行に抗議し
計画の中止を強く要請します

WWFジャパン
グリーンピース・ジャパン
 (財)日本自然保護協会、
(財)日本野鳥の会

私たち環境保護団体は、防衛省が、沖縄県東村高江の生物多様性に富む「やんばるの森」において、米軍ヘリパッド建設工事を強行していることに対し、強く抗議するとともに、建設計画の中止を要請します。

防衛省沖縄防衛局は、東村高江において、建設中止を訴える地域住民を無視し、大勢の職員、作業員を動員して住民を威圧しながら、米ヘリパッド建設工事に着工しました。建設現場には、ダンプカーにより大量の土嚢が運び込まれ、パワーショベルが稼働し、樹木の伐採が行われています。
計画では、無障害物帯を含めて直径75メートルの巨大な米軍ヘリパッドが6か所建設され、そこで行われる米国海兵隊の軍事演習には大型の垂直離着陸機オスプレイを使用すると伝えられています。巨大ヘリパッドの建設とオスプレイを使う軍事演習は、地球上で沖縄島にしか生息しないノグチゲラ、ヤンバルクイナなど多くの固有種、固有亜種や、さまざまな野生生物にとって大きな脅威となり、生物多様性に富む「やんばるの森」の環境を大きく悪化させることになります。さらに、高江の集落を取り囲むように建設されることから、地域住民の生活に大きな危険と不安をもたらすことになります。

那覇防衛施設局(当時)の「環境影響評価図書(2006年)」によれば、ヘリパッド建設予定地とその周辺で、4,158種にもおよぶ膨大な数の野生生物種が記録されています。そのうち12種の植物、11種の動物が地球上で沖縄島北部にのみ生育・生息する固有種・固有亜種であり、絶滅のおそれのある種が177種(環境省レッドリスト)、188種(沖縄県レッドリスト)も含まれています。また、天然記念物の生物は、国指定、県指定それぞれ8種が記録されています。
これは「学術上あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生育地を含むこと」という旨の世界自然遺産の選定基準のひとつを十分に満たしており、地球規模で見て重要な自然環境、野生生物生息地であることを示しています。

一方、IUCN(国際自然保護連合)の世界自然保護会議(アンマン2000年、バンコク2004年)では、沖縄島「やんばるの森」にのみ生息するノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息場所の保全を日米両政府に勧告しています。日本政府には、生物多様性と絶滅のおそれのある種の保全計画を作成すること、自然遺産への指名を検討すること、保護区を設置すること、ヘリパッドを造らない選択(ゼロ・オプション)を含む環境アセスメントを実施すること、米国政府に対しては、米軍の環境管理基準をもとに野生生物保護の観点から日本政府と協議すること、日本政府の環境アセスメントに協力することを勧告しているのです。日米両政府は、両国ともに加盟している国際機関であるIUCNの勧告を遵守するべきです。

また、2010年10月に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」では、日本が議長国を務め、生物多様性のための戦略計画である「愛知ターゲット」が採択されました。愛知ターゲットでは、2020年までに「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことを、ミッション(使命)として掲げています。しかし、東村高江における米軍ヘリパッド建設は、このミッションに大きく反するものであり、地球の生物多様性を率先して保全する義務を負う議長国としての責任を放棄するものと言わざるを得ません。

 米軍ヘリパッドの建設工事を強行することは、固有種、固有亜種を含む多様な野生生物に悪影響をおよぼし、世界自然遺産の価値がある「やんばるの森」の豊かな生物多様性に大きな脅威を与えることになります。また、人口約160人、そのうち中学生以下が約20人の小さな集落である高江の住民を軍用機の爆音や墜落の危険にさらすことになります。

政府は、世界自然遺産の候補地となり得る「やんばるの森」の生物多様性保全と持続可能な利用を重視し、また、地域住民の安全で安心な生活を保障するために、高江における米軍ヘリパッド建設計画を中止するべきです。