2015/07/21 プレスリリース:グリーンピース放射線調査、福島県飯舘村で除染後も高い放射線量を測定 村の75%は高濃度に汚染された森林、政府に2017年3月の避難指示解除の見直しを求め

プレスリリース - 2015-07-21
国際環境 NGO グリーンピースは本日、福島県飯館村で 4 月から 7 月の間 3 回にわたって実施した放射線調査の結果を発表しました。その結果、村の面積の 75%が除染予定のない山林で占められている飯舘村では、除染は効果的に進んでおらず、同県田村市都路地区と川内村の除染済みの場所で 2014 年にグリーンピー スが放射線調査を実施した地点に比べて、高い線量を示す傾向にあることが分かりました。政府は 2017 年 3 月に「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を解除する方針を発表していますが、それまでに汚染状況が大幅に改善される見込みは低く、住民が安全に帰還できる環境にはありません。調査の結果を受けて、グリーンピースは同日、安倍晋三首相、宮沢洋一経済産業大臣、竹下亘復興大臣に避難指示解除の再考と被害者への正当な補償の継続を求める要請書を送付しました(注 1)。
今回の調査は、4 月 7 日と 9 日に飯館村の 11,757 カ所(地上 1 メートル)における空間線量を測定、また 6 月 29 日から 7 月 17 日にかけて同村小宮地区、飯樋地区など合計 49 カ所(同 1 メートル、0.5 メートル、0.1 メ ートル)において、森林、住宅周辺、農業用貯水ダム周辺、道路の空間線量を測定しました(注 2)。その結果、除染終了後はおおむね効果が維持されるとする環境省の説明に反し、除染後も高い数値を示す場所が多く存在し、小宮地区の個人宅では除染後の場所から毎時 2.5 マイクロシーベルト(地上 1 メートル)の放射線量 が測定されました。また、国の除染の基準値(毎時 0.23 マイクロシーベルト)を超える放射線量を測定した地点の割合を原発から 20 キロメートル圏内の都路地区及び川内村と比較すると、飯舘村は11,757 カ所の内 96%と他の2地区と比較して高く、都路地区は34%(5,031地点、2014年 10月 25日測定)、川内村は 59%(6,229 地点、2014 年 10 月 26 日測定)でした。
 
グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の関口守は「飯館村では住宅の周囲の除染は進んでいますが、 背後には除染の予定のない山林が広がっています。除染が済んでも放射線量が高く、住民が安全に暮らすことのできない場所が村内に数多く点在しているにもかかわらず、安倍政権は2017年3月に避難指示を解除する方針を決定しており、放射線量が高い土地に半ば強制的に人々を返そうとする現政権の政策は容認できません。2018 年 3 月には、東京電力福島第一原発事故による精神的損害賠償を打ち切る方針も出されています。政府は人々の声を聞くべきで、住民を危険にさらす避難指示解除は撤回すべきです」と述べました。

また、同日外国人記者クラブで行ったグリーンピース会見に同席した只野靖弁護士(東京共同法律事務所、 脱原発弁護団全国連絡会事務局長*)は、「飯舘村にはまだ戻れない・当面は避難を続けるしかないという村民の選択は尊重されるべきです。村民の意見も聞かず、一方的に避難指示を解除し、応急仮設住宅の供与を終了し、賠償金の支払いも打ち切るとすれば、村民の意思は踏みにじられ、帰還を強制する結果となりかねません。避難者の生活状況や避難者の意思を無視して強制的に帰還を促したとしても、村民一人一人の復興は到底実現できません」と訴えました。
2014 年 11 月 14 日、飯舘村の737 世帯合計 2,837 名を申立人として、原子力損害賠償紛争解決センターに『かえせ飯舘村』飯舘村民損害賠償等請求事件を提起。 

グリーンピース・ベルギー エネルギー担当、放射線防護アドバイザーのヤン・ヴァンダ・プッタは「チェルノブ イリ原発事故から約 30 年が経とうとしていますが、原発から 30 キロメートル圏内はいまだに立ち入り禁止区域のままです。安倍政権は年間被ばく線量を 20 ミリシーベルトまで容認する見解を示し、国際原子力機関 (IAEA)はこの方針を支持しています。IAEA と安倍政権は原発事故が起きたにもかかわらず、まるで“通常” に戻りつつあるかのように見せかけようとしていますが、それは大きな間違いです」と強く批判しました。

グリーンピースは、再稼働手続き中の原発立地自治体の知事と、安倍首相宛てに原発再稼働の停止を求める「とめよう再稼働」オンライン署名を 2013 年 11 月から実施し、7 月 20 日時点で 35,817 筆が集まっています。

注 1) 要請書
※訂正:7月21日発表時には「飯樋岩地区」となっていましたが、正しくは「飯樋地区」でした。お詫びして訂正いたします(8月11日)
--
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン