2016/12/13 グリーンピース新報告書、日本3メーカー製造の原発部品に強度不足の疑い ーー再稼動ではなく現物の検査を

プレスリリース - 2016-12-13
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、本日13日、強度不足の疑いがある原発の部品についての報告書『⽇本の原⼦炉に導⼊された⼀次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー:最終第二部及び三部』を発表しました(注1)。イギリスの原子力規制機関出身の原子力コンサルタントジョン・ラージ博士(注2)によるこの委託報告書は、日本鋳鍛鋼、日本製鋼所、JFEスチールの3社すべての部品で強度不足の可能性があることを指摘しています。

本報告書は、日本全国で原発を所有する電力会社から原子力規制委員会への提出報告書と、部品メーカー3社から規制委へ提供された資料、およびフランス原子力安全局(ASN)から直接入手したアレバ社の文書を分析し、1980年代から1990年代に、欠陥部品を含む機器が日本の原発にも取り付けられている可能性が高いと結論づけました。なお日本製鋼所は、原子炉圧力容器に炭素濃度の高い領域が残ることを自ら認めています(注3)。なお本報告書は、フランスの原子炉機器サプライチェーンについて解説し、日本の原子炉の安全性への示唆やどのような検査が必要かを分析した『⽇本の原⼦炉に導⼊された⼀次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー: 第⼀部 フランスの炭素異常と⽇本の原⼦⼒発電プラントの相互関係』の続編です。

ラージ博士は「規制委は、強度不足のおそれはないと結論づけています。しかし、その結論の根拠の一つとなっている部品メーカーから提供された文書が示す、強度不足を引き起こす炭素濃度の高い領域を製造過程で切り取るためのメーカーの予測式には信頼性がありません。フランスでは、現物の検査をして初めて欠陥部品を見つけることができました。つまり、輸出当時に示したデータは現物の強度を反映しておらず、過去の記録調査では全く不十分ということです」と述べています。

フランスでは原子炉12基に日本鋳鍛鋼製の部品を含む蒸気発生器が使用されており、その全てが停止や試験を命じられています。さらに、日本鋳鍛鋼は2基の実物大の蒸気発生器部品の試作品を破壊検査用に製造し、ASNの監督下で分析を行う予定です。日本鋳鍛鋼製の部品は1980年代から90年代の輸出当時にフランスの規制を合格して納品され、これまで使用されてきましたが、今年に入り、現物の検査で初めて強度不足が発覚しました。これは、輸出当時に示したデータが現物の強度を反映していなかったことを示唆しています。実際にアレバ社のクルゾ・フォルジュが規制当局に提出したデータは偽造されており、パリ検察は同社の犯罪に対する捜査を開始しています。またASNは、日本鋳鍛鋼製だけでなく日本製鋼所製の部品も調査対象としています。

現在日本に滞在中のグリーンピース・ドイツ核問題シニアスペシャリストのショーン・バーニーは「フランスでは18基の原発に現物での検査が命じられましたが、日本ではそのような検査はまだ行われていません。これでは、東電福島第一原発事故を引き起こした当時の不名誉な規制機関(原子力安全・保安院)となんら変わりがありません」と規制委の対応を批判しました。グリーンピース・ジャパンは、現在稼動している四国電力の伊方原発3号機と、九州電力川内原発1、2号機の一刻も早い停止と、すでに再稼働が認可されている原子炉の部材検査を優先しつつ、全ての原子炉での同検査を原子力規制委員会に求めています。

注1)『⽇本の原⼦炉に導⼊された⼀次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー:最終第二部及び三部』

注2) コンサルティング会社、ラージ・アンド・アソシエイツ主宰。1960年半ばから1990年代初頭まで英国原子力公社の研究に従事。IAEAや英・仏・独など各国政府ならびに米国の原子力規制委員会に対し専門的知見を提供している。

注3)日本製鋼所は、規制委に「炭素偏析は鋼塊Top側軸心に生じやすいことから、これを除去するために鍛造初期に押湯の部分的な切捨を実施している。また、回転成形にて生じる余肉によって炭素偏析領域を除去している。最終製品は、鋼塊復元イメージに示す通り、成分濃化部が無い領域に位置することから、C量0.26wt.%を超える偏析の残存はない」と報告している。
“BWR Reactor Pressure Vessel Material: Manufacturing processes and measures to prevent remnant carbon segregation October 17, 2016 JSW.”

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

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