2017/06/28 グリーンピース、スマホなど「修理しやすい製品ガイド」を発表 --もっとも修理が難しいのはアップルとサムスン

プレスリリース - 2017-06-28
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日6月28日、スマホなどIT製品の修理のしやすさを評価した「修理しやすい製品ガイド」(注1)を発表しました。

今回の調査で、スペアパーツ(予備部品)と修理マニュアルを一般向けに公開するなど修理しやすさの評価が比較的高いのは、フェアフォン、デル、HPの3社のみで、スマートフォン(以下、スマホ)の世界シェアが大きいアップル、サムスンのようなIT企業の製品は、もっとも修理や、アップグレード(部品の交換による性能の向上)がしにくいことが明らかになりました(注2)。この結果を受けてグリーンピースは同日、アップル、サムスン、LGの3社に対して「修理しやすくて長く使える、地球に優しい製品を作ってください」と求める国際署名を開始しました(注3)。

本ガイドはグリーンピース・東アジアが、オンライン上で無料の修理ガイドを提供する米国企業iFixitと連携し、44機種にのぼるベストセラーのIT製品(スマートフォン21機種、タブレット型端末14機種、ノートPC9機種)を評価したものです。対象は17社の製品で、(1)製品の修理に要する時間を考慮に入れたiFixitの「分解難易度スコア」、(2)機器のアップグレードのしやすさと部品交換のしやすさ、(3)スペアパーツと修理マニュアルが利用可能かどうか、の3つの観点から評価しています。

グリーンピース・USAのIT業界アナリストのギャリー・クックは、「今回評価した機種の中で、修理のしやすさが高評価となったのはごくわずかでした。一方、アップル、サムスンの製品は修理しにくい設計となっています。これが原因で製品寿命は短くなり、世界のe-ウェイスト(電子・電気機器廃棄物)の量は増え続けています。電子機器を修理しやすくすることは技術的に可能であり、IT企業は製品設計の優先事項とするべきです。最初の一歩として、デル、フェアフォン、HPなどの好事例に学び、修理マニュアルとスペアパーツを一般の人に利用可能とすることが求められます」と問題提起しました。

今回のガイドに協力したFixitの共同創業者 カイル・ウィーンズ氏は、「電子機器はその製造のために大量のエネルギーと、人々の努力、そして天然資源を必要とします。しかしながら、メーカーが巨額の収益を毎年稼ぐ一方で、消費者は数年使っただけでIT機器を廃棄しなければなりません。e-ウェイストは世界中で、非常に早いスピードで増加し続けています。電子機器をもっと持続可能なものとしていくべきです」と訴えました。


グリーンピースは、IT企業に簡単に修理やアップグレードができる製品を設計し、適切なアフターセールスを提供するよう呼びかけています。そのためには、容易に、そして手頃な費用で修理ができること、特に不具合の生じやすいバッテリーやディスプレイなどの部品について最低でも7年間スペアパーツが利用可能であること、修理の標準化や修理を推奨する法の整備をしていくことが必要としています。


「修理しやすい製品ガイド」の主な結論:

・修理しやすい製品は減少傾向:複雑な設計と、部品がはんだ付けや接着されていることにより、修理に時間がかかる。サムスンとLGのスマホ、アップルのノートPCはより修理しにくい設計となっている。

・交換不可能なバッテリー:評価した44機種のうち、約7割について、バッテリー交換が不可能か、もしくは難しくなっている。これは、バッテリーを端末内に固定するためにかなり強力な接着剤が使われているためである。サムスンのスマホ(ギャラクシーS8)、アップルのラティーナMacBookの製品は代表的な悪例で、バッテリーが完全に接着されている。

・修理に特殊な工具が必要:特許部品等の部品のために、修理に特殊な工具が必要となることも、修理しにくい原因の一つである。例えば、アップルのiPhone、ファーウェイのP9は、修理のために特殊な工具が必要である。

・修理マニュアルとスペアパーツが入手困難:修理方法に関する情報提供をしているメーカーはごくわずかである。17社のうち、3社のみ(デル、フェアフォン、HP)がすべてのスペアパーツと修理マニュアルを提供している。

グリーンピース・ジャパンのエネルギープロジェクトリーダーの高田久代は、「スマホの販売開始から10年がたち生産台数は年々増加し、世界全体で71億台に達しました(注4)。そのため、製造に必要な原料採掘やエネルギーが環境や社会に与える影響も年々深刻化しています。スマホをできる限り長く使用するとともに、使用後に部品を再利用したり、部品の素材のリサイクルによって、環境や社会への負荷を減らすことが可能です」と訴えました。

グリーンピースはIT企業に注目し、そのイノベーションや急成長するパワーを、エネルギーや資源の利用、廃棄物の取り扱い改善など、地球規模の環境問題や社会への負担を解決するために使ってほしいと働きかけを続けてきました。今回の「修理のしやすさガイド」も、その一貫の取り組みです。

注1)「修理しやすい製品ガイド」 
注2)ファクトシート「評価方法と結果について」 
注3)署名「修理しやすくて長く使える、地球に優しい製品を作ってください」 
注4)ガートナー『Worldwide smartphone market share reports』、IDC『Worldwide Quarterly Mobile Phone Tracker』より
*より詳しいレポート「How reparable is your mobile device?」

 

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