2018/09/06 共同ブリーフィングペーパー:グリーンピース、IFAW、WWF による第67回 IWC総会に向けて

プレスリリース - 2018-09-06

国際捕鯨委員会の67回目の総会(IWC67)が、2018年9月4日から14日に、ブラジルのフロリアノポリスで開催され、同総会の今後の方向性、構成、そしてガバナンスに対して重要な意味を持つ多くの議案についての討議がなされます。国際環境NGOグリーンピース、国際動物福祉基金 (IFAW) そしてWWF(世界自然保護基金)は、そこで提案されている幾つかの変更案に対して、以下、多大な懸念を抱いています。

「今後の方向性」 と「フロリアノポリス宣言」

第67回IWC総会において加盟国政府は、日本政府による「今後の方向性」への包括提案とブラジル政府による「フロリアノポリス宣言」という、IWC総会の将来のビジョンに対する2つの非常に対照的な提案への賛否を問われます。

日本政府による「今後の方向性」の提案は、その言葉とは裏腹に、IWCを商業捕鯨時代に引き戻し、現在のIWC内における分断状況を永続させようとするものです。このような提案は拒否されなければなりません。それとは対照的に、フロリアノポリス宣言は前向きなもので、1946年に設立されて以来のIWCの変化を理解し、資源保護団体に対する国際社会の期待に沿った未来を構築していこうとするものです。この提案は支持されるべきです。

IWCが1946年に設立されて以来、クジラに対する受け止め方とそれを取り巻く国際法、持続可能な利用の定義、研究方法、ならびに海洋環境自体がすっかりと様変わりしています。殺傷を極力避けた持続可能なクジラ利用は、今や世界で年間20億米ドル以上もの価値となっており、その収入は前者の利用によるものを遥かに上回っています。

日本の掲げる「今後の方向性」の提案は、これらの認識が全く反映されていません。過去のやり方に執着し、IWC委員会に対して「総会の目的をしっかり認識させる」ように働きかけ、捕鯨業者には商業捕鯨の捕獲枠設定の要件だけを解釈させようとするものです。これは、クジラの頭数を維持するというIWCの目的や、UNCLOS (海洋法に関する国際連合条約)のような直近の国際法の重要性を認識している、大多数のIWC加盟国とは対照的なものです。

UNCLOSの第65条[1] では、国際機関は海産哺乳動物の搾取を〝禁止、制限もしくは規制すること〟ができると定めています。日本の提案はさらに、「商業捕鯨の秩序ある発展」を推し進めることは全加盟国の共通の利益になると主張し、捕鯨国側からの数十年にわたる妨害行為の意義を認めるかのように、自分たちが作り出した問題の解決策としてその行為自体を提案しているといえます。日本の包括提案は以下のような内容です。

「IWCを異なった活動計画を進める2つの陣営に分け、捕獲枠を設定する側から加盟国を締め出し、新たに〝持続可能な捕鯨委員会〟を発足させ、持続可能な捕鯨に真剣に取り組む政府のみに門戸を開くように努める」 - これはIWC保護委員会とは極めて対照的なもので、そこでは全員に門戸を開いていますが、日本とその同盟国だけは発足当初から参加を拒んできています。

●先住民族による持続可能な捕鯨と商業捕鯨について、新たな持続可能な捕鯨委員会によって双方に同じ基準の捕鯨枠を与えることでその区別を曖昧にする」 - これはIWCのこれまでのプロセスから完全に脱却するものです。IWCでは、先住民族による持続可能な捕鯨を営んでいるコミュニティーでは、商業捕鯨とは異なった規制を必要としているという認識を保ってきています。 

●「設定された捕獲枠が実際にしっかりと遵守されるための効果的な規則を定めた管理体制への合意がなされるまでは、改定管理方式(RMP)のもとでの枠決めをしないように、委員会の指示から科学委員会のほうへと翻させていく」

●「海洋環境の変化等により、クジラが広範囲にわたる被害状況を把握することが難しいため、クジラをさらに絶滅の危機に陥らせており、海洋生態系におけるクジラの役割を無視してしまっている」

●「単純多数のみが必要な決議では、将来的な予定変更を委員会に委任できないという長年の決議事項があるにも関わらず、2020年の総会で捕獲制限を設定することを委員会に委託するつもりである」

このような理由から、票決に付することができません。

日本の「今後の方向性」への包括提案は、搾取を重点としていた過去のIWCに逆戻りさせようとするもので、IWC内での分断状況を永続させることにしかならないでしょう。 

それとは対照的に、フロリアノポリス宣言は、日本の「今後の方向性」の代替案となり、積極的かつ前向きなビジョンをIWCに示すものです。とりわけそれは生態系におけるクジラの役割と、沿岸国にとっての殺傷を極力避けた持続可能なクジラ利用の大切さを認識しています。

●そこでは、殺傷を極力避けたクジラ利用を含む、持続可能な利用という意味合いの変化や、 調査方法の変化、そして 新たに現れた脅威と海洋環境の変化が認識されているのです。

●そして、再び取り上げられた捕鯨業の中に、殺傷を極力避けた持続可能なクジラ利用を行っているコミュニティーでの社会経済的、文化的に良好な状態を脅かす事実を認識しており、IWCが殺傷性利用から持続可能なクジラの利用へ方向転換するように求めています。

●また、クジラが生態系維持や養分循環における役割を果たせるようにし、殺傷を極力避けた持続可能なクジラ利用から得られる最大限の利益を沿岸国のコミュニティーにもたらすために、 クジラの頭数を維持するように求めています。

●この宣言は先住民族の生存捕鯨を守るものです。

フロリアノポリス宣言は、ICRW(国際捕鯨取締条約)が1946年に施行されて以来、開発を考慮に入れており、クジラに対する現代の理解に基づいて、IWCのために未来への道筋を示しています。加盟国がこの宣言を支持し、その提言をしっかりと実施させていくように強く求めています。 

独立したガバナンス審査

フロリアノポリス宣言はIWCに対する前向きなビジョンを示していると同時に、ガバナンス改革(IWC/67/14)についての決議案では、他の多国間協定のベストプラクティス(最善慣行)に則して、IWCの仕事の進め方を現代に合ったものにする賢明な方法も提示しています。前回の総会(IWC66)において委員会は、その制度とガバナンスの取り決めに対する包括的な審査の実施に同意し、それを執り行う独立した審査委員会を設置しました。

審査委員会は、透明性、説明責任、信頼性、そして有効性の原則に鑑みて、IWCが多国間条約機構にとってのベストプラクティスに沿う機会を見出すように依頼されました。 審査の付託条項から明確に除外されている考慮事項は、会議の文章、スケジュール、鯨類の保全と管理の状況、加盟国によるスケジュールの遵守、委員会を「南極海における捕鯨事件」(オーストラリア対日本:ニュージーランド介入)に関する国際司法裁判所の判決に沿わせること等です。

概して、独立審査委員会の報告書は、現代の多国間協定に則してIWCのガバナンスと慣行を改善する改革に向けた一連の良識のある提案を示しています。そこに含まれている分野には、 委員会と補助機関、および補助機関同士の関係の一貫性をしっかり保つこと、委員会の活動の全領域に渡って公平な資金分配をさらに徹底させること、委員会の要求をより明確に示し、それらの要求に対してIWCの諸機関がどう対応しているかを追跡すること、財務手続きと予算編成の変更を通して透明性を増すこと等があります。

運用有効性作業部会が作成した決議草案では、委員会の補助機関、加盟国、そして他のステークホルダーから、ガバナンス改革についての考えや助言等を集め、付託条項も含めて、改革の実行計画を立てていくプロセスを提案しています。私たちは加盟国に対して、このプロセスを支持し、ガバナンス改革についての討議に日本の「今後の方向性」提案を盛り込むことを避けるように強く求めています。 


 

[1] UNCLOSの第65条では、「この部のいかなる規定も、沿岸国又は適当な場合には国際機関が海産哺乳動物の開発についてこの部に定めるよりも厳しく禁止し、制限し又は規制する権利又は権利を制限するものではない。いずれの国も、海産哺乳動物物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と定めています。

 

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