ウナギはいつまで食べられる?-スーパーマーケットの絶滅危惧種のウナギの調達方針は?

記事 - 2013-08-02
私たちがいつでもどこでも当たり前のようにウナギを買うことができる状態を作るために、全国展開するスーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店などは、これまで世界各地から乱暴で大規模な調達を続けてきました。その結果、広く報道されている通りウナギは自然界から急激に姿を消し、価格も高騰。日本のウナギ消費量の約30%を占めるウナギ専門店は相次ぐ閉店が話題となっています。

国内で広く流通し、日常的に目にするウナギ。
私たちがいつでもどこでも当たり前のようにウナギを買うことができる状態を作るために、全国展開するスーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店などは、これまで世界各地から乱暴で大規模な調達を続けてきました。

その結果、広く報道されている通りウナギは自然界から急激に姿を消し、価格も高騰。
日本のウナギ消費量の約30%を占めるウナギ専門店は相次ぐ閉店が話題となっていますが、その一方で消費者にとってメインの購入先である大手スーパーなどは、相変わらず薄利多売を続けています。
このままで大丈夫なのでしょうか?

2013年10月9日

ウナギ最新情報
スーパーマーケット大手各社一歩前進
西友、ユニー、ダイエーが新方針

西友の店舗前で消費者ボランティアと共にウナギの調達・販売方針の改善を求めるグリーンピーススタッフ

DNA検査によりグリーンピースが商品の種を調査

グリーンピースは、スーパーマーケット5社(イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友)のウナギの仕入れ・販売の実態を把握するために、下記の調査を行いました。

  • 各スーパーマーケットへ、ウナギの調達・販売について質問票を送り調査(2013年8月26日から9月27日)
  • 各スーパーマーケットの店舗でウナギ加工商品を購入し、第三者機関にDNA検査を依頼(2013年7月30日から9月11日)。
    上記2つを照らし合わせて、スーパーマーケットが原料のウナギの種をどの程度把握しているかを確認

その結果

  • 西友は2013年6月から10月1日まで、原料の種を特定しないままウナギ商品(即席きもすい)を販売していたことが判明。
  • 同社が、グリーンピースの質問票に「ジャポニカ種(ニホンウナギ)」と回答していたウナギのかば焼きが、DNA検査により、回答とは異なるアメリカウナギであったことが判明。

グリーンピースは2013年10月3日にこの調査結果を西友に伝え、同社からは下記の回答を受け取りました。

1. について
ウナギの即席きもすいは、9月中旬に種の特定が困難なことが判明したため、即日で販売中止を決定した。

2. について
ニホンウナギ以外の販売を検討し、アメリカウナギへ切り替えを行っていた最中に販売されていた商品で、グリーンピースの質問票に回答する際に、商品情報を十分に確認せずに回答してしまった。

グリーンピースと西友が共に検討

その後、グリーンピースと共に検討した結果、西友は、2013年10月7日に「ウナギの資源状態の悪化を深刻視している」として、種の特定ができて全流通経路をトレースバック(さかのぼって調査)できる魚介類を原料とした商品のみを取り扱う、トレーサビリティ体制(商品情報の追跡可能性)の強化を、グリーンピースに約束しました。

また、今回のスーパーマーケットの調査により、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危険性が最も高い種に指定され、ワシントン条約の対象種にもなっているヨーロッパウナギの調達でも、各スーパーマーケットの方針に変化があることが分かりました。

魚介類の資源回復に大きな一歩

具体的には、2013年7月の時点では西友のみが「ヨーロッパウナギを取扱わない」方針を明らかにしていましたが、今回の調査では、ダイエー、ユニーも、ヨーロッパウナギを調達しないと回答。
イオンはヨーロッパウナギはすでに取り扱っておらず、イトーヨーカドーは「今年のものは年度内に販売を終了し、来年度のものは未定」と回答しています。

国内の食卓に並ぶ魚介類の約70%を販売するスーパーマーケットの大手各社が、魚介類の調達方針やトレーサビリティ体制を強化したことは、大きな一歩です。

子供たちに魚を残すために

ウナギだけでなく、スーパーマーケットが絶滅危惧種や乱獲されている種の取扱いを中止し、子どもたちの世代にも魚を残せるような仕入れ・販売をしてくれるよう、みなさんも今すぐ、オンライン署名にご参加ください。

詳細レポート:「国内スーパーマーケット大手、相次いでウナギの調達方針を改善」(PDF) >>
第三者機関のDNA検査結果報告書(PDF) >>

 

ウナギを取り巻く3つの真実

1.ウナギ世界生産量の70%以上が日本で消費される

日本は世界の2%足らずの人口で、世界生産量の70%を超えるウナギを消費する、世界一大ウナギ消費国です。
中でも年を通じて特にその消費量が跳ね上がるのが、土用の丑の日。

その莫大な需要を満たそうとこれまで世界各地でウナギの乱獲が続けられてきた結果、現在、日本で消費されているウナギの実に99%以上が、絶滅危惧種に指定されています。

土用の丑の日は、日本の食文化の重要な位置付けにあると同時に、いまや絶滅危惧種を国を挙げて消費する日という側面を持ち、漁業及びウナギ食の持続可能性を脅かしてしまっています。

2.日本で消費されるウナギの99%以上が絶滅危惧種

日本で売られているウナギの99%以上を占める「ニホンウナギ」と「ヨーロッパウナギ」は、共に絶滅危惧種に指定されています。

ニホンウナギ

農林水産省によると稚魚(シラスウナギ)の池入れ量(採捕量と輸入量の合計)は2009年の28.9トンから2013年では12.6トンとなっており、その量は激減。

環境省は2013年2月1日に同種を「近い将来に野生での絶滅の危険性が高い」として絶滅危惧種に指定しており、同年、国際自然保護連合(IUCN)も絶滅危惧種に指定することを検討しています。

ヨーロッパウナギ

1990年代に中国などを経由して日本へ輸出される販路が定着すると、輸出量の激増に伴って資源状態が激減。
国際海洋探査委員会(ICES)によると、ヨーロッパ12カ国にある19の河川で漁獲されたウナギの稚魚(シラスウナギ)の量は、1980年から2005年までに、平均で95%から99%も減少しています。

2007年に開催された第14回ワシントン条約締約国会議で国際取引の規制が決まり、2008年には国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)で「近い将来の絶滅の危険が極めて高い種」に指定。
2009年に実際に国際取引が規制されることとなりました。

ニホンウナギやヨーロッパウナギだけじゃない!

悲劇は続きます。
国内のウナギ流通業界はいま、ニホンウナギやヨーロッパウナギの激減を受けて、アメリカ、オーストラリア、タスマニア、マダガスカル、フィリピン、インドネシアなど世界各地で、代替となるウナギを探しています。

既にこれらの国からのウナギ輸入は少しずつ始まっていますが、問題なのは、これらのウナギのほとんどが持続可能性を担保する資源管理や漁業規制が行われていないこと。

特定の種を獲り尽くしたら次の種を乱獲する焼畑的な漁業・流通・消費を今後も続けていけば、代替ウナギもすぐに次々と、ニホンウナギやヨーロッパウナギと同じ道を辿ってしまいます。

3.薄利多売を続ける国内ウナギ流通

私たち消費者が魚介類を買う時に、その情報を知る唯一の手がかりはパッケージのラベルですが、果たしてそのラベルには、私たちが持続可能なウナギを選択購入できるだけの情報が記載されているのでしょうか。
薄利多売型のビジネスモデルによりウナギは晴れの日のご馳走から安価で手軽に消費できる食材へと姿を変えましたが、これにより肥大した需要を補うための乱獲が進んでいます。

輸入/国産

スーパーマーケットなどで売られているウナギ商品には原産地が表示されています。
日本で消費されるウナギ量の約55%は輸入品で、スーパーマーケットなどで見かける商品には多くの場合「中国産」「台湾産」などと表示されています。

一方で国内の地名が表示されたものは「国産」ウナギとして扱われますが、この地名は単に、ウナギが養殖の過程で一番長い間生息した場所を指すもので、生息地や漁獲地を示すものではありません。
つまり、海外から稚魚を輸入して国内で最も長い期間育てたら、そのウナギは「国産」として扱われ、国内の養殖池のある地名がパックに記載されます。

パックに記載されている産地情報からは、絶滅危惧種ウナギや乱獲されているウナギかどうかを知ることはできません。

養殖/天然

日本で消費されているウナギの99%は「養殖」もの。
なのでパックに「天然」と明記されていない限り、その商品は「養殖」ウナギと思って間違いないでしょう。

「養殖」は一見乱獲対策として捉えられがちですが、そこには大きな落とし穴が。
紛らわしいことに「養殖」ウナギは、天然の稚魚(シラスウナギ)を自然界から獲りいけすで成長させたものを指します(卵から孵す完全養殖はまだ実験段階で、商業ベースになっていません)。

稚魚の乱獲は、ニホンウナギやヨーロッパウナギが絶滅危惧種になった主因の一つ。
ウナギの「養殖」は、ウナギが成長し産卵する前の段階で大量に自然界から獲ってしまうため、むしろ資源状態の悪化に大きな直接的影響を与えているのです。
残念ながら「養殖ウナギなら食べても大丈夫」と言うわけではありません。

ウナギの種類

そもそも食用ウナギには何種類もありますが、スーパーマーケットなどで売られているウナギ商品は全て「ウナギ」として販売されており、消費者は選択購入することができません。

絶滅のおそれが高いとして原産国からの輸出が原則禁止されているヨーロッパウナギも、環境省が今年2月に絶滅危惧種に指定したニホンウナギも、その資源状態はおろか種さえも知らないままに消費してしまっているのです。

水産庁は今年5月に業界に対してニホンウナギを「ウナギ」ではなく「ニホンウナギ」と表示して販売するよう推奨し始めましたが、未だに国内のスーパーマーケットトップ5(イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友)は対応していません。

現在の流通システムや水産庁の示すガイドラインでは、持続可能性が確保されたものを選んで買うことは不可能です。

絶滅危惧種を取り扱うスーパーマーケットの調達方針は?

絶滅危惧種及び乱獲されている魚介類の薄利多売を問題視するグリーンピースは、小売及び飲食業界にとってウナギ商品の年内最大の商機である土用の丑の日を前に、国内大手スーパーマーケット5社(イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友)にアンケート調査を実施し、絶滅危惧種及び乱獲されているウナギの「取扱いの有無」、「取扱量」、「取扱いに関する考え」、「調達方針」について質問しました。

各社とも絶滅危惧種や乱獲されているウナギの資源状態の回復に向けた積極的かつ効果的な取り組みを行っておらず、持続可能性を優先した調達方針を策定していない実態が明らかとなり、自然界のウナギ資源や食文化の持続性よりも短期的利益を優先している姿勢が浮き彫りとなりました。

絶滅危惧種及び乱獲されているウナギの
「取扱いの有無」、「取扱量」、「取扱いに関する考え」、「調達方針」について

2013年8月2日現在

スーパーマーケット名 ウナギの
調達方針
グリーンピースのコメント
イオン
ダイエー
トレーサビリティの実施の徹底 トレーサビリティの実施の徹底はもちろん資源管理に欠かせない流通業界の取り組みの一つですが、絶滅危惧種を取り扱うにあたりこれだけでは足りません。
国内最大手として他社に先駆け、絶滅危惧種、乱獲されている種、持続可能性が確保されていない魚介類を取り扱わないとする調達方針を策定・実施することが求められます。
イトーヨーカドー
国の資源管理に基づいた対応 日本で消費されてきたウナギの99%が絶滅危惧種に指定されるまでになったのは、これまで日本政府が資源管理を怠ってきた結果であり、「国の資源管理に基づいた対応」では、ウナギ漁業及び消費の持続可能性を担保することは極めて非現実的。
これはウナギに限らず多くの魚介類についても言えることで、政府が管理する日本周辺海域の漁業資源のうち実に80%もが、資源水準が「低位」或いは「中位」にあるのです。
「国の資源管理に基づいた対応」では、ウナギも他の魚もすぐに獲ることも売ることも食べることもできなくなってしまいます。
ユニー
養殖ウナギの取扱い そもそも日本で流通されているウナギの99%が「養殖」のものです。紛らわしいことに「養殖」ウナギは、天然の稚魚(シラスウナギ)を自然界から獲りいけすで成長させたものを指します。
つまりウナギの「養殖」は、ウナギが成長し産卵する前の段階で大量に自然界から獲ってしまうため、資源状態の悪化に大きな直接的影響を与えているのです。
「養殖ウナギの取扱い」は、持続可能性を確保するための対策として的外れです。
西友
ワシントン条約の尊守 トレーサビリティの実施の徹底はもちろん資源管理に欠かせない流通業界の取り組みの一つですが、絶滅危惧種を取り扱うにあたりこれだけでは足りません。
国内最大手として他社に先駆け、絶滅危惧種、乱獲されている種、持続可能性が確保されていない魚介類を取り扱わないとする調達方針を策定・実施することが求められます。

「消費者の声」が、流通を変える

世界有数の魚介類消費国である日本で、スーパーマーケットは家庭で消費される魚介類のおよそ70%を販売する、漁業や消費の持続可能性の確保に大きな影響力を持つチャネルです。

政府や国際機関による資源管理が十分に機能していない中、グリーンピースは消費者に魚介類商品を直接提供するスーパーマーケットに対して、豊かな生態系と恵みを次の世代の海と食卓に確実に残すため、絶滅危惧種や乱獲されている種の取扱いを中止し、持続可能性が確保されている魚介類を積極的に取扱う、魚介類の調達方針の策定・実施を求めています。

統計資料出典

  • 日本養鰻漁協同組合連合会 「鰻輸入量及び国内養殖生産量」「国産鰻の安全性と品質について」
  • Food and Agriculture Organization of the United Nations'Species Fact Sheets Anguilla anguilla (Linnaeus, 1758)'
  • 財務省「貿易統計」
  • 総務省「家計調査報告(家計収支編)」
  • The IUCN Red List of Threatened Species Anguilla anguilla
  • 水産庁 「ウナギに関する情報」
  • 環境省報道発表資料 第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類)
  • Kyodo News International, June 22, 2013. IUCN considering designating Japanese eel as endangered species
  • 水産庁 「平成24年度魚種別系群別資源評価(52魚種84系群)」
  • International Scientific Committee for Tuna and Tuna-like Species in the North Pacific Ocean Pacific Bluefin Tuna Stock Assessment Summary
  • Food and Agriculture Organization of the United Nations『世界漁業・養殖業白書2012年(要約版)』国 際農林業協働協
  • 国際環境NGOグリーンピース・ジャパン「お魚スーパーマーケットランキング2」
  • 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンオンライン署名「一週間、魚食べずに過ごせる?」

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