台湾最大のコンビニチェーンであるセブンイレブンは、QRコードで管理された返却式リユースカップの仕組みの実証実験を行なっている。

せっかくの資源を使い捨てることは、気候への影響、水の使用、天然資源の採取、廃棄物、海洋汚染など、環境にとって良くないことだらけです。いくら使い捨てのプラスチックをなくしたとしても、その分紙資源や生物由来の使い捨て素材が多く出回るようになってしまっては、こうした問題を根本的に解決に向かわせることはできません

「脱使い捨て」が新しい

長年に渡って問題となってきた使い捨てそのものを見直す動きが、近年プラスチック問題への取り組みが進む中で、新しい動きを見せています。世界中で生まれるリユースビジネス*。リユースに関する数々の調査。いま「脱使い捨て」を可能にするリユースビジネスや社会全体での取り組みに世界の注目が集まってきています。日本ではまだあまり取り上げられないリユースの可能性について、最新の報告を交えてお伝えしたいと思います。

一方通行の使い捨てモデル

グリーンピース・マレーシアによる現地調査。日本などの先進国は自国で処理しきれないプラスチックごみを「リサイクル名目」のもと、マレーシアなどの途上国に輸出している。しかし、こうして輸出されるプラスチックには多くの「汚れたプラスチック」が含まれ、現地の環境汚染や健康被害を引き起こしている。

街中のカフェやスーパー、コンビニで見かける商品の多くには「使い捨て容器包装」が使われています。飲み物のカップやペットボトル、お菓子の袋やお弁当容器など、あらゆるものが一度きりの利用で捨てられます。プラスチックでない素材のものも増えてきましたが、いくら「環境に優しい素材を使用しています」と言われても、資源を使い捨てるものは本当にグリーンと言えるでしょうか。世界の200近くの環境団体は今年、「使い捨てモデルからの脱却」を訴えました*。なぜなら、プラスチックであれ紙であれ、すでに環境に甚大な影響を与えていて、このままでは使い捨てが原因の廃棄物が大幅に増え続け、その影響もさらに大きくなってしまうからです。

リユースが本当の解決策

こうした使い捨て容器包装はリユースを導入することにより大幅に減らすことができます。リサイクルや他素材への移行よりも最優先で行わなければいけないことです。これまで「リユース」と言うと、マイバックやマイボトルを持ち歩くなど、消費者個人の努力に頼ってきましたが、企業がビジネスモデルをリユースに移行していくことが求められています

グリーンピースの活動
世界にはすでにたくさんのリユースビジネスが生まれています。グリーンピース・ジャパンでも、日本でリユースを広めるための活動を続けてきていますが、その中でも今年の2月から大手コーヒーチェンのスターバックスに対して、プラスチックや紙の使い捨てカップを増やすのではなく、店内でのマグカップ使用の徹底や、新しいリユースの仕組み導入を求める取り組みを行ってきました。リユースを日本で広めたい方にはぜひ賛同して頂きたい活動です。
他にも、地球・人間環境フォーラム(GEF)と協力し「リユース革命! 容器包装で始まる、サーキュラー・イノベーション」という大規模シンポジウムもオンラインで開催しています。イベントの模様はGEFが発行する「グローバルネット」の7月・8月号誌面からも読むことができます(イベント動画はこちらから視聴申し込みができます)。

リユースが実現する真にサーキュラーな社会

日本企業では、まだまだリユースビジネスへの関心は低いですが、リユースの推進で影響力を持つ米国のNGO団体Upstreamが、最近画期的な報告書を発表しました*リユースは環境だけでなく社会全体にとって様々な良い影響を与えるというものです。これまでもリユースに多様な利点があることは報告されてきましたが、今回の報告書は、米国の飲食業界がリユースに切り替わった場合と仮定し、より具体的な分析を行っています。米国の事例ですが、日本でも参考になるところが多いはずです。

こんなことが可能になる:店内用飲食とテイクアウト・デリバリーが主にリユースになった場合

Upstream報告書の”Tommorow’s new reuse economy for food sevice”からグリーンピースが翻訳

雇用が生まれる
リユースが拡大することで、約20万人の雇用が生まれる(リユース容器の回収、洗浄、配送業など)。

事業コストの削減
使い捨て容器包装の調達(店内飲食用)がなくなることで、事業者にとって50億ドルの節約となる。

廃棄物管理コストの削減
ごみが減ることで、事業者・自治体の廃棄物コストが51億ドル減少。

そしてもちろん、環境にポジティブインパクトをもたらします。使い捨て容器包装が大幅に減ることが様々な環境負荷を大きく減らすことになるのです。

  • 気候への影響
  • 水の消費量
  • 天然資源の採取量
  • ごみの流出 (海や街中など)を大幅に減らす

今回の調査は飲食業界のみにフォーカスしたものですが、もちろん使い捨て容器包装はその他にもあらゆるところで使われています。コンビニ、スーパー、消費財メーカーなど、大量に容器包装を排出する業界がリユースに切り替わった場合の社会へのポジティブな影響はさらに大きくなります。

「リユース革命」を実現するために

出てしまったごみをどうやって処理するかよりも、ごみそのものを減らすリユースのシステムを構築することが、環境にとっても私たちのコミュニティーにとっても、より良い社会を作ることに繋がる。こうしたビジョンを描き、大きなリユース目標を打ち出した上で、そこに向かって企業、・自治体、・市民が協力して取り組みを進めることができたら素敵だと思いませんか?

イギリスのスーパーマーケットのウェイトローズは「Unpacked」という試みを実施し、量り売り売り場などを設けている。これにより11週間でプラスチック容器を83%減らすことに成功している*

グリーンピースはこれを「リユース革命」と呼んでいます。そのために、まずはリユース分野における先進的なリーダー企業を生み出す活動を行っています。上述のスターバックスに対する取り組みもその一つです。カフェ最大手のスターバックスが販売する飲料の97%は使い捨てカップで販売されています。使い捨てから脱却し、100%リユースへの方向性に舵を切ってもらうためには、私たち市民の声が必要です。リユース社会実現のためには、個人の生活の中でできるアクションは限られており、企業により早く、より大きく動いてもらう必要があります。ぜひ署名を通じてあなたの想いを教えてください。