
毎年節分が近づくと、コンビニやスーパーによる恵方巻きの広告が目に入るようになります。
「恵方」とは、神様のいる縁起のいい方向とされ、2023年の恵方は南南東といわれています。2月3日の節分に、その年の恵方を向いて食べる太巻きは「恵方巻き」と呼ばれるようになり、恵方巻きを食べる習慣は多くの人が知るようになりました。
一方で、恵方巻きの売れ残りが大きな問題となっています。2022年には、139万本もの恵方巻きが食品ロスになったという見積もりも。CO2排出や水の浪費に繋がり、地球環境へのインパクトも大きい食品ロスをなくすために、私たちにできることを考えましょう。
▼この記事を読むとわかること > 139万本の恵方巻きが食品ロスに > 恵方巻きのロスは環境問題にも > 予約では解決しきれない > 日本の食品ロスは年間600万トン > 食品ロスを避けるために私たちにできること > 本当に必要なものを選ぶために |
139万本の恵方巻きが食品ロスに
2022年に恵方巻きの売れ残りについて調査した食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんは、全国のコンビニ・スーパーで調査対象と同様の売れ残りが発生したと仮定すると、全国で139万6,443本もの恵方巻きが売れ残った可能性があると分析しました*1。
2016年に恵方巻きの売れ残りが大きな話題になってから、2019年には農林水産省が需要に見合った販売を行うように業界団体に通知した*2ことも手伝って、恵方巻きの食品ロス問題は多くの人が知るようになりましたが、それでも140万本もの恵方巻きが食品ロスになってしまった可能性があるのです。
恵方巻きのロスは環境問題にも
井出さんは、「経済面」「環境面」「社会面」からこのような問題が考えられると指摘します*1。
- [経済面] 売れ残りによる経済損失は10億円以上
- [環境面] 737トンのCO2排出・25mプール309個分の水の浪費
- [社会面] ロスにならなければ約140万人が恵方巻きを食べられた
さらに、売れ残って廃棄される恵方巻きの処理には、売り手の企業が処理コストを負担するだけではなく、市民の税金が使われている場合がほとんどだといいます。例えば東京都世田谷区では、事業系一般廃棄物1kgあたり59円が投じられています。

予約では解決しきれない
大手コンビニのオーナーは、Business Insiderによる2020年の取材でこのようにコメントしています*3。
「節分の当日に(恵方巻きを)買いに来るお客さんがいる以上、店頭に置かない選択肢はない。どれだけ売れるのかも読みにくく、本音で言えば恵方巻きは扱いたくない商材」
2020年におこなわれた意識調査では、半分の人が恵方巻きは「当日買う」と回答し、予約する習慣が浸透していないことがわかりました。
販売日が2月3日の一日だけに限られるうえ、ナマモノで日持ちがしない恵方巻きを大量販売している限り、食品ロスは避けられないでしょう。
日本の食品ロスは年間600万トン
近年の日本の食品ロスは、年間600万トンに及びます。これは、1年間に東京都民全員が食べる量に匹敵します*4。
世界では10人に1人の8億1,000万人が飢餓に苦しんでいる*5にもかかわらず、食べ物の30%は捨てられています*6。飢餓の原因は、食糧が足りていないことではなく、公正に分配されていないことなのです。

さらにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、温暖化を進めるCO2排出の約10%は食品ロスに由来します*7。つまり食品ロスを出し続ければ出し続けるほど、気候危機は深刻化してしまいます。
世界の200人近いの科学者や専門家が検証し、地球温暖化を「逆転」させる解決策を提示している「ドローダウンー地球温暖化を逆転させる100の方法」というレポートでは、食品ロスをなくすことは、気候変動対策として実現の可能性と費用対効果が高い方法の3番目に位置付けられています。
日本政府は、2030年までにサプライチェーン全体で食品ロスを半減する(2000年比)という⽬標*8を掲げていますが、目標の2030年まであと7年に迫る今、効果のある削減策を政府が主導していくことが求められます。
食品ロスを避けるために私たちにできること
食品を買う側にいる私たちには、何ができるのでしょうか? 恵方巻きを例に考えてみましょう。
・寿司専門店で買う
井出さんによると、寿司専門店では、コンビニやスーパーと比べて恵方巻きを完売させている店舗の率が高く、ロスが少ないといいます*1。廃棄を前提に深夜になっても大量に売っている店ではなく、需要にあった量を売り切るつもりで販売しているお店を選んで買うのもいいでしょう。
・自分で作る
時間がある人は、家で作ってみましょう。好きな材料を選んで作ることができますし、野菜を使ったプラントベースの恵方巻きもいいですね。

・食べなくてもいい
季節を楽しむのは素敵な日本の文化ですが、イベントだから、みんなが食べているからといって、食べなければいけないわけではありません。
本当に必要なものを選ぶために
節分に太巻きを食べる風習はもともと関西のもので、1980年代に大手コンビニが販売し始めたことがきっかけで、全国的に広がったと言われます*9。
節分の「恵方巻き商戦」は今や、クリスマスのケーキやバレンタインのチョコレート、ハロウィンのお菓子などと同様に、高い経済的利益を狙ったマーケティング戦略となっています。
広告やSNSの情報があふれる社会のなかで、自分にとって必要なものを選び取るのはますます難しくなってきています。友人や同僚との会話で、恵方巻きなど身近な例を使って食品ロスについて話してみるなど、対話の機会を作ることで、食品ロスを減らすアクションの輪を広げていきましょう。
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